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旅立ち

『俺はお前が気に入った。俺に従え。口答えは許さない。』




「…………夢…か……」


目を覚ませば、そこは教室。窓際の一番後ろという特等席に午後の日差し、そんなものに勝てる人がいるならぜひ紹介して頂きたい。などと思っていると、授業を終えるチャイムが鳴る。


「マリア!マリア!!」


寝起きで呆けていると、名前を呼ばれている事に気付く。


「あ、あぁ……どうしたの?」

「どうしたの?って放課後、生徒会の集まりがあるでしょ?行かなくていいの?」


声を掛けてきた友人の言葉で現実に戻ってきた私は時計を見て愕然とした。


「えっ!?」


私が意識を飛ばしたのは確か5時間目の授業中だ。だが、今見た時間は、もう既にホームルームすら終わった時間だった。


「よく寝てたよね〜。それでも起こされないんだから、日頃の行いがいいんだか、そのずば抜けた容姿のおかげなんだか……羨ましい限りだわ。」


そう言って笑った友人は、私の親友でもあるサツキ。「早く行くよ!」と自身も生徒会の副会長である為、手を引き生徒会室まで連れて行ってくれた。


「私はこんな容姿で生まれたかった訳じゃないわ……。」

「え?なんか言った?」

「何でもないわよ!」


定位置の席に着けば、わざわざ立ち敬礼を思わせるような挨拶をされた。それに対してにこやかに返せば、皆、顔を赤らめ着席していた。


「会長、お茶をどうぞ。」

「ありがとう。」


お茶を用意してくれた子にお礼を言えば、その子もまた顔を赤らめ小走りで席についた。


「さぁ、今日の会議始めましょうか!」


そう言うと副会長進行の元、滞りなく会議は終わった。

生徒会室を出てサツキと廊下を歩く。次々とすれ違う生徒達が立ち止まり挨拶をしてくる。それに返せば誰もが顔を赤らめた。


「モテモテだよね〜。」

「生徒会長というだけでしょう。」

「またまた〜謙遜するね〜。マリアだったら引く手数多でしょ?ハーレムでしょ!」

「そんなことないわ。」


そう。本当にそんな事ないのだから謙遜でも何でもない。今、私が一番頭を悩ましている事だ。

自分で言うのも何だが、サツキいわく、私は容姿がパーフェクトらしい。誰もが見惚れる顔立ち、スタイルもいい。容姿端麗、才色兼備を絵に描いたような人間らしい。自分で言っててすごく恥ずかしい……。

何一つ苦労も悩みもないだろうと羨ましがられるが、寧ろこの容姿のおかげで私はしばらく悩まされている。



男が…………寄ってこない…………。



よって、私は未だに恋愛経験ゼロ……なのだ。

学園の噂は多々あるようだ。どっかの国の大富豪に見初められてる。毎日毎日、男を取っ替え引っ替え。家には何十人と男を侍らかしてる。などなど……もうただの悪口じゃないかと思うが、否定するのも面倒くさいので放っておいている。なんならそれさえも利用してやろうと思っていた。

男を取っ替え引っ替えしてるのであれば、誰でも相手してくれると思った男が来てくれるのではないかと期待するも、全く来ない!


「なんでなの!?」


当に着いていた自宅の部屋でつい叫んでしまった。


「私だって人並みの恋愛をしたい!でも誰も近寄ってこないから、こんなに窓口拡げてるのになんで誰も来てくれないの!?誰でもいいって言ってるのに!」


「君は高嶺の花なんだよ。」


制服から部屋着に着替えながら独り言を叫んでいると、窓から声がした。びっくりして周りを見渡すも人の気配はない。


「気のせいか……」


再び着替えようとすると更に声がする。


「ここだよ!」


声の方に振り向けば、窓に綺麗な黒猫が姿勢よく座っていた。

猫…………って喋るの?


「現実逃避しそうな顔してるけど、喋ってるのは僕だからね!君はその恵まれた容姿が嫌いなのかな?」


窓から部屋に入ってきた黒猫は、足元で私を見上げて口をパクパクさせていた。どう考えてもこの猫が喋ってる。


「ねぇ!まだ信じてないの!」

「無理でしょ……」

「もう!!」


黒猫は立ち尽くしている私の肩に乗り耳元でとんでもなくいい声で囁いた。



「男に慣れたいんだろ?」



「ひゃっ!な、な、な、何言ってるの!?猫なのに!!」

「やっと信じてくれたみたいだね。僕が君の悩みを解消してあげるよ!」


肩から飛び降りると、さっきの声はどこから出したんだと思う程、元の声に戻って微笑んでいた。

悩みを解消してくれると言った?猫が?

不審な顔をして猫を見ると、少し不貞腐れたようにしている。


「まだ疑ってる?まぁいいや。行けば信じてもらえると思うし。」

「行く?どこに?」

「別世界にだよ!そこで男に慣れるための旅をしてもらうんだ!」

「えっ!?なに……言ってるの?別世界って何?旅?」

「ゴチャゴチャうるさいなぁ……。大人しく僕に従ってればいいんだよ!僕はクオン。さぁ行くよ!!」


再び肩に乗ったクオンと名乗った猫が何をしたかは分からないが、気が付けば、見た事もない草原に立っていた…………。


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