表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽炎  作者: あーや
2/5

回想

きっかけは、母校の文化祭だった。


大学の勉強に忙殺され、気がつけば数年ぶりの母校だった。かつて馬鹿騒ぎをした同級生や、恩師たちと数多く会うことができ、童心がよみがえった。


でも。

密かに一番会いたいと思っていた男はいなかった。保健室にいるのは見知らぬ女性になっていて。思わず先程まで会っていた親戚の体育教師に聞いた。


「彼は…霧は、去年辞めたよ」

「え?転勤、とかじゃなくてか?」

「そうだよ。仕事自体辞める、という話だったね」

「どうして?」

「すまない、私も詳しいことは知らないんだ。私よりも、花子の方が知っているんじゃないかな」


だからその足で校長室に行った。


「ああ、深夜か…お前は知らなかったな」

「…?」

「あいつな、失明したんだよ」

「……え」

「ここで養護教諭始めた頃からもう左目は見えてなかったんだと。右目もいつかダメになるって分かってたらしい。…お前が卒業する頃にはもう相当ヤバイ状態だったみたいだな」

「…………」

「私にそれを話したとき、あいつちょっと泣いてた気がする。教え子みんなに会いたい、最後に一目見ておきたい…って。だからあいつ、ギリギリまでここにいたよ」


彼女はそのときを思い出したのか、目を細めてどこか遠くを見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ