再会
改札を抜ける。
切符を買うなんていつぶりだろう。電車を乗り継ぎたどり着いたのは、ICカードが使えない田舎の小さな駅だ。しかし地元住民に取っては貴重な交通機関なようだ。
スマートフォンを操作する。
どうやら調べた時間通りに着けたようだ。次に呼び出すのは地図。目的地は程近い住宅街の中にある公園。歩いて5分もかからないだろう。
歩き出す。
すれ違う人の視線を感じる。こんな所に自分のような浮世離れした容姿の人間が現れたら誰だって驚く。真夏なのに全身黒であるとか、病的なほど白い肌であるとか。
日差しが強い。
身体が火照る。汗が出る。スマートフォンをいじり、メールを開く。数日前に届いた文面を見る。
『公園のベンチに座って待ってる。多分ブランコの横だ。』
公園にたどり着く。
さほど広くなく、入り口で全貌を見渡すことができた。ブランコの横。ベンチ。
心臓が跳ねる。
いた。
見間違えようがない。
かつての記憶にあった白い眼帯がない代わりにサングラスをかけているくらいで、他は記憶と何も変わっていない。
はやる気持ちを抑えて歩みより、隣に立った。どう声をかけようか迷って…かつてのあだ名で呼ぶことにした。
「おい、むっ」
顔が上がる。こちらを向く。
「…テオか?」
「ああ」
パッと笑顔が浮かぶ。それはそれは、とても嬉しそうに。
「そうか!やっぱりか!久しぶりだなぁ…元気だったか?」
こちらを向いているようで、向いていない顔。
その笑顔に、きりきりと、胸が痛む。
「話には聞いてたが……やっぱり…見えてないのか」
「……ああ」
かつての恩師は、穏やかに、苦笑いをして答えた。