寿命
「〈 デ・ラヴァェール 〉この世界には竜が居る。
『竜』一般的には竜聖、竜魔と呼ばれ。その存在は、人間なんかがとても太刀打ち出来ない偉大な生物だ。
その寿命はだいたい千年から一万年だろうと云われている。
まぁ、実際には誰も確かめたものがいないだろうから、本当の処はわからないんだけど。
それで、人間の寿命の方だけど。地球人としては日本人の平均寿命は、長寿にあたるんだよね?
八十年くらいだったかなぁ? 確か。
それでもこの世界では短い方だな、ココの平均寿命は百年前後だからね、一般的には。
魔術師なんかだと普通その倍くらいは生きるし、・・・・・・長い存在だと三百年以上という事例もあるし。
ああっ。ちなみに、俺の先祖の一人なんか少なくても五百年以上は生きているはずだし。だいたい俺も君らの倍くらいは軽く生きるんじゃないかな?
――少なくてもね」
春日の話は次の一言で締めくくられた。
「だから、狙われている」
いや。倍って、だからって、言われてもねえ。
「特別、なのか?」
やっぱり冷静な俊の声。
何だかこう、後ろから蹴り入れたい! 気分だなっ。
でも、実際に行動に移すわけにもいかない。
仕方がないので、頭の中でのみ。綺麗な回し蹴りをスコっと入れてみる。
(ああっ。少しすっきり)
「そうとも言えるし、違うとも言える」
その間も、もちろん話は続いていた。
う ~ ん。
「別に遺伝って、わけじゃないはずなんだけどね。
まあ、俺の場合は先祖が先祖だし、絶対に違うとは、言い切れないんだけど」
応えに困ったような春日に、俊が更に質問を投げかける。
「さっき 〈器〉 って、言ったよな。どういう意味だ?」
「竜に好まれる存在」
溜息とともに春日が口にしたのは、それだけだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
広場には大勢の人々がいた。
しかし誰も気づかなかった。
突如現れた人影に、
「何としても手に入れなければならぬ」
目深く、薄汚れたモスグリーンのフードを被ったその人影が呟く。
ざわめきの中、暗く重い響きの音。
まるで呪いのように、恨みのこもった陰逸とした声だった。
その人影はそのまま人々のざわめきに紛れ、消えていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ディル。彼らにもこちら側の言葉が分かるよう、して欲しい」
「ギリガン様」
困ったような表情をしたディル小父さまが、春日を見つめていた。
それはティータイムの後だった。
「これから何日かこちら側に滞在してもらうのだから、些少の便宜を計らうのが当然のこと。そうだろう」
微笑む春日に小父さまは、一つ深く息を吐き答えた。
「確かに、仰せのとおり。解りました」
ほよー?
と、成り行きを見ていたあたしたちに向かい。小父さまは片手を揚げた。
リンーっ。




