王
親愛なるグウェンドリン
本日はお日柄もよく。私の心は春に咲く花のように陽気だよ。
ああ、君の心は、雨の中で鳴く蛙のように惨めであることを願っているよ。
さて、君。
私と君は長い間素敵な贈り物をし合ってきたね。私が忘れられないのは、そう。私が最高級の金の絹に包んだ毒入りピーナッツを送ったところ、君が、猛毒の染み込んだみすぼらしい箱に入った毒蛇を送りつけてきたことだよ。あれには恐れ入ったね。私が底にびっしりと針がはえた靴を贈ったことなんて、なんて些細でかわいらしいことだっただろうね。
そうそう、君。
君が一丁の銃と刺客を送りつけてきて、「貴方が生まれたこの素晴らしい日に、真っ赤なバラを咲かせてあげます」なんていう濃厚な愛の言葉を受け取った時もあったね。あの時は、君のあまりの想いの深さに、思わず美しい紐と一緒に「君には赤い首輪が似合うと思うのだ」などという青臭い手紙を送ってしまったね。いやはや、私も若かった。
あれだよ、君。
私があまりにも君に逢いにいかないばかりに、我慢できなくなった君が、後ろに人を引き連れて私の城にやってきたこともあったね。白く細い腕で剣を掲げた君は、公衆の面前ならばさすがの私も求婚すると思ったのだろうね。本当にすまなかった。ああ、本当に。今頃になって悔いているよ。転げた拍子に君のやわらかな肌に触れて、あまつさえドレスを豪快に破いてしまったことを。こんな私を許しておくれ。ちなみに、決してにやついてなどいなかったよ。大臣が変なことを吹き込んだようだが、真に受けないでくれたまえ。
ところで、君。
私と君は、生涯の良き友であったね。
ああ、でも君。
実は私は、結構、割とまあまあ、君のことが嫌いだったのだよ。
だから、君。
神のお導きのもと、天国で逢ったその時は、我が国の華々しい繁栄と、君の国がおちぶれ行く様について、楽しく語り合おうではないか。
まあ、君が天国に行けるとは思わないけれどね。
そうそうところで、西の森にいる狼が最近暴れていて困っているんだ。北の羊飼いの手伝いをしてくれたならば嬉しいよ。
君が生まれた良き日の半月と3日前に。
アイザック
Dear Gwendolen




