点と点をつなぐ
江学勤教授は、現実をうまく説明するから秘密結社などに興味を持ったというが、それは、そういった説明が「点と点をつなぐ」(connect the dots)からだ。
逆に言うなら、通俗的な常識や学説が「点と点をつないでいない」つまり矛盾があると彼は判断したわけである。
これは、膨大な知識が極めて優れた解像度で保持されていないと不可能な知的認知だ。
彼は、学部時代にイェール大学で精読(close reading)の訓練を受けている。イェール大学はその訓練について世界的に名高い。そしてそのまま彼は、極めて大量の活字を消費しつづけながら人生を生きてきた。
したがって、「点と点をつなぐ」とは言っても、点は莫大にある。証拠(evidence)やデータポイント(data point)が大量にあるうえ、それぞれの推論で前提たりうる証拠それぞれも、一定の言説(narrative)であって、尤もらしさを疑うことができるため、蓋然性が多層化されている。
彼は、事実(fact)と真実(truth)は異なると言って後者を好み、自分の言説は思索的(speculative)であって証拠(evidence)はないと言う。また、近代社会が科学(science)を重視することは悪いことであり、歴史的な人類は神話的な意味づけのなかで生きてきたという。しかしその言い方は乱暴だろう。彼の思想は、蓋然的な推論が高度なだけであり、実際には証拠に基づいている。圧倒的な技術で圧倒的に情報がゆがめられる時代にあって、得られる限定的な情報から高度に推論して事実性を看破しているのだ。例えば、箱にしまったリンゴがなお実在している「証拠」はないのであり、すべての証拠は実は推論であるため、それらは程度問題だ。




