第7話 軽々しく修羅場って言ってすみませんでした!
「なにしてるの?」
声の方を向くと、柏木さんがいつの間にか立っていた。
いつもの余裕な笑顔を浮かべるわけではなく、無表情に目を細めていた。
それは俺を軽蔑している目だ。
なぜなら、小野寺さんが《《ナニ》》してるのを俺が凝視しているところを見ていたからだろう。
「ち、違う、これは、そ、その……」
「なにが違うのかしら」
急いで小野寺さんの方を見て助けを求める。
しかし、小野寺さんはただニヤニヤと笑っているだけ。
その手はまだ股間と胸をまさぐっていた。
「《《あそこ》》で待ってたのに……」
待ってたって?
つまり柏木さんはあの空き教室で俺を待っていたってこと?
まさか……小野寺さんのように俺に見せつけるために?
脳がフリーズする。
罪悪感がこつこつと湧き上がってくる。
柏木さんはゆっくりと俺に歩み寄る。
一歩、一歩。
焦るほどじゃないのに、逃げられない距離の詰め方だった。
「見てたよね?」
「そ、それは……」
否定できない。
言葉が喉に引っかかる。
その沈黙だけで、十分すぎる答えになってしまっていた。
「ふーん」
柏木さんは一瞬だけ目を細める。
その視線が、まっすぐ俺を貫く。
笑っていない。
でも怒鳴るわけでもない。
ただ静かに、逃げ場を塞いでくる。
「《《藤宮くん》》ってさ」
すっと手が伸びてくる。
俺の顎に触れて、軽く上を向かされる。
「琥珀のほうが、好きなんだ?」
「っ……!」
そんなわけじゃないと否定したいのに、なぜか言葉が出なかった。
俺は柏木さんに言い訳する理由がない。
ないはずなのに、なぜか胸が苦しい。
「いいよ、別に」
柏木さんの声が低い。
「否定しなくても」
そのまま、ぐっと距離が近づく。
息がかかるくらいの位置に。
「ちゃんと分かってるから」
ぞくっとした。
冷たい声に、背筋が冷える。
「ね?」
そう言って、柏木さんはちらっと横を見る。
そこには――
相変わらず楽しそうに笑っている小野寺さん。
目が合うと、にやっと口元を歪めた。
まるでこの展開を待っていたと言わんばかりに。
「琥珀……」
「なぁに〜?」
「貴女がこんな人間だとは思わなかったわ」
「あはは、それはこよりが鈍感だからだよ♡」
「……」
「だってこよりのアカウントは《《藤宮くん》》のつぶやきばかりだもん。それで辿ったら《《綾人くん》》の裏垢を見つけたわけ」
「……」
「想像以上に楽しかったよ♡ んぁっ……!」
「―――ッ!!」
小野寺さんはパンツ越しにくぱぁとあそこを広げる。
布地越しにその形がはっきりと見て取れた。
「やめて……」
柏木さんの声はますます低くなった。
「なんでぇ?」
胸を指で掴む小野寺さん。
「私のものなのに……私が今日見せたかったのに……」
「早い者勝ちってやつだよ♡」
「……」
「悔しかったら、こよりもやれば?」
小野寺さんをよそに、柏木さんは俺を睨みつけた。
そして、ゆっくりと自分の股間に手を伸ばす。
「ちゃんと見ててね、綾人くん」
指でぷにっとした部分を押す。
次第に小さな突起が見えた。
「な、なにをしてるの!? 柏木さん!」
「うぅ……ひゃっ……これも全部綾人くんのせいよ」
なにがどうなってるのか分からない。
ただ、あのクラス一可愛い柏木さんが俺の前で《《ナニ》》している事実に驚いた。
「ねぇ」
指を止めて俺を見つめる柏木さん。
「私の方がいいでしょう?」
なんで柏木さんは小野寺さんと張り合っているの?
俺はお前たちのただの性欲の発散道具でしかないのに。
いや、だからこそか。
自分のおもちゃを他人に奪われたくない気持ちは俺にもよく分かる。
それはそうと、俺はいまやばい状況になってないか。
前世で言うと、裏アカ女子に二人の男がフル〇ンで迫ってるようなもんだ。
とてもじゃないが、犯罪の匂いしかしない。
しかし前世の記憶を持っている俺にとって、この状況は美味しい。
美味しいはずなのに、俺はなぜか柏木さんに申し訳ない気持ちを覚えてしまった。
「あぁん……」
再び指を動かす柏木さん。
今度は人差し指と中指で突起を挟む。
目が離せない。
まるでブラックホールに吸い込まれたかのように、俺は柏木さんの股間に釘付けになっていた。
「ねえねえ、綾人くん♡」
この時、ふと小野寺さんが俺の顔を自分の方に振り向かせた。
「わたしのほうを見て♡」
ゆっくりブラウスのボタンを外していく小野寺さん。
黒の下着が露わになる。
レースの装飾に可愛いリボン。
こくりと喉を鳴らす。
一体どうなっているのだ。
なぜ俺は美少女二人に迫られているのだ?
理解が追いつかない。
「―――ッ!!」
ふたたび柏木さんのほうを見ると、彼女の手は股間から離れていた。
というか、動きが止まっていた。
「そこまでするの……琥珀」
「だってぇ、綾人くんをわたしのものにしたいんだもん」
「……わたしのものなのに」
なぜか険悪な空気になった二人。
おもちゃの取り合いをする子供みたい。
ただ、子供の喧嘩よりはるかに静かだ。
「あ、あの、二人とも落ち着いて……」
「っ……」
まただ。
またあの軽蔑の眼差し。
柏木さんの俺を睨みつける目が冷たい。
「ねぇ、綾人くん、明日私と《《デート》》しましょう」
急に柏木さんがそう提案してきた。
逆らえない。
裏垢のことをクラスのみんなにバラされたくない。
だからこの時俺は首を縦に振った。
しかし――
翌日、あんなことになるなんて、俺は予想できなかった。
【作者からのお願い】
この小説を読んで「面白い!」、「続きが気になる!」
と少しでも思って頂けたら、下の『★★★★★』を押して応援してくれると嬉しいです!




