第2話 黒タイツと生足は矛盾していない
「いい匂いだったなぁ……」
夕食を済ましたあと、俺は部屋に戻りベッドにダイブしていた。
最初に思い出されたのはもちろん、あの柔らかな感触だった。
柏木さんの太ももの間、というか股間はぷにとしていて気持ちが良かった。
なにより、その中から、柏木さんのパンツから発せられた匂いは、目が眩んでしまうほど脳を揺さぶった。
フェロモンと言うべきか、オスにはメスのあの香りに対抗する手段は持たないのだ。
そう思うと、ごくりと喉が鳴った。
もしまた裏垢に性癖を書いてしまったら、柏木さんはなにをするのだろう、 そんな好奇心にも似た興味がドクドクと湧き上がってきていた。
「いやいやいやいや」
よく考えてみろ!
これが前世なら、悪い男の人たちが裏アカ女子を特定して、それをネタに色んな要求を飲ませてるようなものだ。
普通に怖い。
それが今の俺の状況だ。
柏木さんとはあんまり会話とかもしたことないし、つまり、彼女は俺の体目当て!?
前世の記憶があるから、それも悪くないと一瞬思ったのだが、やはり自分の体は大事にしないといけない。
俺は別にこの貞操逆転世界を利用してヤリ〇ンになりたいわけじゃないから、そういうのは論外だ。
「でもな、続き書けって言われちゃったしなぁ……」
もし背いてしまったら……いや、考えるだけでも怖い。
バラされるのも嫌だし、なにより変態って思われるのも辛い。
この世界なら変態とまではいかないにしても、痴女、いや痴男だと思われてしまう可能性がある。
そんなレッテルを貼られたまま登校するとか絶対やだ。
つまり、俺が柏木さんの命令に従うのが一番賢明な判断になるな……。
『黒タイツで蒸れ蒸れになった生足で踏まれたい』
というわけで意を決して、俺はつぶやきをポストした。
感想だけなら、問題はないか。
そう思った次の瞬間、携帯の通知音が鳴った。
『あなたのつぶやきに返信が付きました』
おそるおそる通知をタップしてみると、
『ふーん、踏んであげるね♡』
という柏木さんのコメントがすぐについたのだった。
それからどきどきしながら続きを待っていると、いつの間にか俺は眠りについていた。
「ねえ、柏木さん……やはりやらないとだめ?」
「何を言ってるの、綾人くん。これはあなた自分で書いたんじゃない」
6限目まではなにもなかったから、俺はもしかしてこのまま解放されるのではと甘い期待を抱いていた。
しかしチャイムが鳴った瞬間、柏木さんはそそくさ教室を出ていった。
方角は、やはりあの空き教室……。
さすがに俺でも察しはついた。
行かないとバラされる。
だから、俺は少し遅れて教室を出て昨日の空き教室のほうに、あまり人の注目を集めずに移動して、ドアを開いてすぐ中に入った。
そこには窓際に両手を置いて足を組んでいる柏木さんの姿があった。
柏木さんは、俺が入ってきたことに気づくと、ちらりとこちらを見て口元を緩めた。
「来たんだ、綾人くん。えらいえらい」
「来たくなかったけどね……」
俺はドアの近くで立ち止まったまま、警戒するように彼女を見つめる。
柏木さんは窓際に腰掛けたまま、組んでいた足をゆっくりほどいた。
その動きだけで、心臓がやけにうるさくなる。
「昨日のつぶやき、見たよ」
「うぅ……」
「黒タイツで蒸れ蒸れになった生足で踏まれたい、だっけ?」
「忘れて! お願いだから!」
俺は思わず顔を覆った。
どうして自分はあんなことを書いてしまったんだ。
いや、書けって言われたからなんだけど。
そんな俺を見て、柏木さんはくすくす笑った。
「でもさぁ」
そう言いながら、彼女は窓際から離れてこっちにゆっくりと近づいてきた。
「綾人くん、自分で書いたんでしょ?」
「そ、それはそうだけど……」
「だったら」
柏木さんは一歩、またこちらに近づいてくる。
黒いタイツに包まれた脚が、ゆっくりと動く。
そして俺の目の前で止まった。
「ちゃんと責任取らないとね?」
「責任って何の……」
言い終わる前に、柏木さんはにやっと笑った。
「ほら」
とん、と。
柏木さんは足のつま先で俺の胸を軽く押す。
その脚の角度で、彼女のパンツは俺の視界にふわっと溶け込んだ。
タイツに包まれている太ももが微かに光っていて、思わず息を飲む。
「そんなに見てると穴、空くよ?」
「ご、ごめん……」
「触ってみる?」
「……うん」
おそるおそる柏木さんの脚に手を這わせる。
この瞬間なんとも言えないような安心感を覚えた。
「あら、上手ね。でも、そこじゃないよね」
柏木さんは俺の手を引いて、下の方に持っていく。
「綾人くんが一番好きなのは《《足》》、なんでしょ?」
なにもかも見透かされたようで、俺は少し自暴自棄気味になり、柏木さんの足を強く掴んだ。
この時、自分でも分かるように心臓がバクバクしていた。
「あっ……んっ、んぁ……すこし乱暴だけど……気持ちいいわ……そろそろ続きいいかしら?」
「続きって……?」
「舐めて?」
「えっ?」
「だから舐めてって言ったの、できるでしょ?」
有無を言わさずといった感じで、柏木さんはただ言葉を繰り返すだけ。
そうなったら俺にできることなんてひとつしかなくて――
「あ、ちょっとくすぐったいわね」
俺は一心不乱に柏木さんの足をタイツ越しに舐めていた。
「ストップ……やればできるじゃない。ご褒美よ、そこに座って」
柏木さんに指さされた床に座り込んで彼女の次の指示を待つ。
すると、柏木さんは椅子に深く腰掛けて、俺のヨダレが付いてるタイツを脱ぎ出した。
俺の視線は彼女の下着に釘付けになったまま、動かせそうになかった。
「ほら、頭下げて」
言われた通りに頭を下げる。
次の瞬間柔らかいような硬いような、そんな感触が頭上にかかった。
「黒タイツの生足って、これが正解、でしょ?」
悔しいが、俺の性癖を完璧に理解している柏木さんに頭を上げることができなかったのだった。
そして、次の日、俺の裏垢のフォロワーが一人増えることになるなんて――
この時の俺には想像もできなかった。
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