第10話 エロラノベは読んではいけない
「最高だ!」
なぜこんなことを叫んでいるのか、時は少々遡る。
俺はベッドの上で横になりながら悶々としていた。
この前の柏木さんとのホテルの一件。
柏木さんの生脚の感触。
顔が触れ合いそう距離。
密着した時のおっぱい。
それらを思い出して、俺の性欲は行き場を失っていた。
というのも、今までのように性癖をつぶやくだけでは発散されないくらい溜まっているのだ。
だから俺はネットで色々と調べた。
そして見つけたのだ。
男性向け陵辱系ラノベ。
元の世界でいうと、女の子が男を征服して調教するような展開だから、この世界では誰に需要があるのか分からないものだ。
しかし、そんなニッチな小説もやはり書く人がいた。
A〇とかは使い物にならないが、これならあるいは、と思って読んでみたのだが、
『わたひま、まけまひたああああああっ♡ わたひはメスブタでふうううううう♡ どうかごひゅじんさまの〇ン〇をくだしゃいいいいい♡』
といった内容で控えめに言って最高だった。
この世界の男には恐らく存在しないという陵辱願望。
ただ、俺は前世の記憶を持っている上に、そういう願望はなくもない。
そして冒頭に戻る。
「最高だ!」
やばっ、鼻血出そう。
16年ぶりのえっちぃ本に、俺はすこぶる興奮していた。
作中のヒロインは強気でプライドの高い美少女たち。
そして、主人公は彼女たちを分からせて快楽堕ちにしてやったというシンプルな内容だ。
シンプルゆえに余計なことを考えずに楽しむができたというわけ。
だから俺は調子に乗って、
『メスガキを調教して性〇〇にしたいな』
と、裏垢につぶやいたのだった。
学校に着いていつものように靴を履き替えようと下駄箱を開けたら、背筋がゾッとした。
俺の上履きの上にあるのは間違いなく手紙だ。
トラウマが蘇る。
もはや開けなくても内容が分かるというもの。
しかし、開けずにはいられないのも男の性だ。
もしかしたら、ほんとにラブレターかも、
『《《綾人くん》》へ
放課後屋上で待ってます。
《《琥珀》》♡』
と思った自分を殴ってやりたい。
「はぁ……」
今回はなにをされるのやら。
俺はこれから起きることを想像しながら重い足取りで教室に入っていった。
放課後、俺は屋上に向かった。
理由は柏木さんの場合と一緒。
小野寺さんに、俺の裏垢の存在をバラされたくないからだ。
ドアを開けると、屋上のフェンスにもたれかかるようにして、小野寺さんが立っていた。
夕焼けが差し込んで、彼女の髪の輪郭が淡く光っている。
俺は思わず息を飲んだ。
やはり、性格はともかく、見た目だけ見れば小野寺さんは柏木さんに匹敵するくらいの美少女だ。
そんな美少女の《《ナニ》》を俺は見てしまったわけで……。
「きゃはははっ、ほんとに来てやんの! まじありえないんだけど、キモ、〇ね!」
よく分からないが、小野寺さんの開口一番がこれだ。
「……は?」
状況が分からなさすぎて、気が付けば疑問を漏らしていた。
「あのね、あのね、《《あたし》》優しいから教えてあげるけど、あんたは騙されてんだよぉ〜だ! あれはほんとはラブレターじゃなかったんだよぉ〜」
「ほ……」
今更何を言ってるのこの子。
そんなこと最初から知っているのだけど。
「残念でした♡」
ただ、よく分からないが、腹は立ってきた。
「……もう帰る」
振り返って歩きだそうとした瞬間、急に袖を掴まれた気がした。
小野寺さんだ。
「お願い! いかないで! 《《わたし》》分かったの……あなたなしでは生きていけないって分かったの」
相変わらず何言ってるのか分からず、俺は立ち尽くしていた。
そして、軽く手を振りほどこうとした瞬間、
「きゃあああああっ! 痛いよ! 痛いよ! 乱暴しないでお願い! わたしに何してもいいから」
なにしてもいい?
この言葉が頭に引っかかった。
いつもやられっぱなしの俺だが、こんなこと言われたら……。
俺は地面に崩れ落ちるように倒れ込んだ小野寺さんの手を引いて、そして彼女を立たせた。
「じゃ、帰るね。また明日、小野寺さん」
とは言いつつ、度胸がないのだ。
「これだからずるいんだよね……」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもありましぇんんんん! ごひゅうじんちゃまあああ! どうかもうお叱りにならないでくだちゃいいあい!」
この茶番いつ続くのやら。
にしてもあの静かな小野寺さんにしては声が出てるな。
ここは少し乗ってやろうか。
「はははは、許して欲しかったら、今すぐ服を脱いで土下座するんだな!」
我ながら名演技だ。
いかにも悪人っぽい。
これなら小野寺さんも気が済んで、いつも通りに戻るだろうと、この時の俺は思っていた。
「わたひま、まけまひたああああああっ♡ わたひはメスブタでふうううううう♡ どうかごひゅじんさまの〇ン〇をくだしゃいいいいい♡」
全裸の土下座である。
見事な土下座であった。
ブラウスやスカートはもちろんのこと、ブラとパンツも脱いで、小野寺さんが俺の前で土下座していた。
呼吸を忘れるくらい俺は小野寺さんのその姿に興奮していた。
上から覗ける白い背中。
そして太ももに潰されてぐにゅっとなっている横乳。
わけが分からない。
わけが分からないが、俺は今征服感に満たされていた。
しかし次の瞬間――
「満足しました? ご主人様♡」
小野寺さんはそっと頭を上げて、この前俺に見せてくれた、あのゾッとするような笑顔を浮かべていたのだった。
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