第四章:私は高階水属性(こうかいすいぞくせい)
天賦の才能が、ついに開花する──。
試練の時、少女はその力を知る。
第四章:私は高階水属性
秋風が吹き、稲穂が色づき始めたころ。
朝の光が窓枠を通して室内に差し込み、部屋全体を柔らかな金色に染め上げていた。
徐三宝は、大広間の中央に立ち、
目の前でふわりと宙に浮かぶ青い水晶を静かに見つめていた。
今日は、彼女の十歳の誕生日から三日目。
そして——
徐家が手配した、彼女の霊根鑑定の日でもあった。
「お嬢様、手を置いてください。」
年配の修士が穏やかな声で促す。
周囲には家族の長老たちがずらりと並び、固唾を呑んで見守っていた。
三宝は知っていた。
——この瞬間が、彼女にとってこの世界で迎える最初の大きな節目だと。
この世界では、霊根を持つか否かが、
修仙の道を歩めるかどうかを決定づける。
彼女はすでに、この世界に存在する三つの修行体系を知っていた。
修道者、異能者、武道家——。
修道者は最も古い流派であり、
霊根を持ち、天地の霊気を吸収し、鍛体・開穴・結丹を経て、
やがて仙人となる道を目指す者たち。
異能者は五行(木・火・土・金・水)あるいは光・闇・精神の八系統の異能を持ち、
それを鍛えながら同様に修道の道を歩む者たち。
武道家は、異能も強力な霊根も持たないが、
肉体を極限まで鍛え、拳に雷鳴を宿し、ついには仙道に至る者たち。
いずれの道も、最初の一歩は「霊根の有無」で決まる。
霊根がなければ、
修行は叶わず、
ただの凡人として一生を終えるしかないのだ。
三宝の心は張り裂けそうだった。
せっかく異世界に転生したのに、ここで終わったら、どうすればいいんだ……。
緊張を押し隠しながら、
彼女はそっと右手を水晶に乗せた。
冷たい感触が掌に伝わり、
次の瞬間、水晶がまばゆく光りだした。
淡い青光がまず浮かび、
それを包むように緑色の光環が現れる。
さらに、中心部にかすかな金色がきらめいた。
周囲から、驚きの息を呑む音が上がった。
「高階水属性だ!」
鑑定を担当していた修士は、思わず席を立った。
その表情には、明らかな敬意と驚きが浮かんでいる。
「お嬢様は高階水属性!
ルディ王国のみならず、この世界でも指折りの逸材です!」
彼の声は興奮で震えていた。
三宝は呆然とした。
自分はせいぜい普通の資質かと思っていたのに、
まさか「世界有数の逸材」だと評価されるとは——。
その時、
式典に参加していた一人のふくよかな修士が歩み出た。
「徐家当主殿、ぜひともこの子を、わたくしの弟子に——」
彼は両手を合わせ、深々と礼をした。
しかし、すぐに別の修士が口を挟んだ。
「無礼だぞ、趙兄。
ただの見学者の立場で弟子入りを求めるとは。
それに、そなたは三品後期で数年も足踏みしている身。
この逸材を預かる資格があるとでも?」
場は一気に緊張し、怒声が飛び交った。
けれど、三宝はそれどころではなかった。
彼女はまだ、自分が高階水属性を持つという事実に心を奪われていたのだ。
結局、徐家当主である徐承毅は騒ぎを収め、
三宝を連れて静かな場所へと移動した。
そこは霊石の結界で守られた、秘密の楼閣。
普段は家主と一部の者しか立ち入れない場所だ。
そこには、すでに長い髭をたくわえた老修士が待っていた。
三宝はここで初めて、
この世界の正式な修行体系について学ぶことになる。
「この世界には、修道者、異能者、武道家の三流派が共存している。」
老修士は静かに語り始めた。
「どれが優れているというわけではない。
それぞれ異なる道を歩むだけだ。」
「修道者は霊根を基盤とし、天地の霊気を引き入れ、心身と法術を鍛える。
異能者は生まれ持った力を高め、五行あるいは八系の術を極める。
武道家は肉体を極限まで鍛え上げ、山のような体と雷鳴のごとき拳を作り上げる。」
「修道者の修行段階は九段階に分かれ、
それぞれ前期・中期・後期・頂点と細かく区分される。
修為が高まれば、体内の霊力はますます安定し、術も強力となる。」
「そして霊根——
これは修道への扉を開く鍵だ。
霊根が純粋であればあるほど、
霊気の吸収は速く、修行も飛躍する。」
「単一属性が最上、二属性も可。
三属性ならば平凡、四属性以上は雑多となり、大成は難しい。」
三宝は真剣に耳を傾け、
ひとつひとつ、心に刻み込んだ。
彼女は、
必ずこの世界で道を切り拓くと心に決めていた。
教えに従い、
三宝は静かに呼吸を整え、気を巡らせる。
たった一度の試みで、
胸と腹のあたりに、微細な霊気の流れを感じ取った。
体中に、心地よい清涼感が広がる。
「……これが、修行。」
剣も飛び交わなければ、
豪快な術もない。
ただ、内から湧き上がる清らかさと、透き通った感覚だけ。
彼女はそっと目を開けた。
窓の外では、
朝風に揺れる稲葉。
陽光が青石にきらめく。
すべてが、
これまでとは違って見えた。
水系異能ってロマンがありますよね。
本章もご覧いただき、本当にありがとうございます。中国から心を込めて書いています!