第十四章:白衣の公子
夜襲の闇に現れたのは、白衣の剣士──
裂かれた屋根と共に、戦いの幕が上がる!
第十四章:白衣の公子
三宝は、何度も自分の足を引っ掻く三花宝を抱き上げた。
「どうしたの、小さな子?」
そう尋ねた瞬間——
「早く目を覚まして!事件だよ!」
——見知らぬ声が、脳裏に響いた。
(えっ!?)
三宝は驚きつつ問いかける。
「……誰?」
だが、声は答えず、ただひたすら急かした。
「早く!奴らが来た!」
胸騒ぎを覚えた三宝は、ハッと目を開けた。
目に映ったのは、変わらぬ浴室の光景だった。
三花宝が湯船の縁に立ち、必死に彼女の肩を引っ掻いていた。
(さっきの……夢!?)
——森で山賊を一掃して、大笑いしていたあの痛快な夢。
三宝は顔を赤らめ、少し恥ずかしくなる。
自分で思い出しても、中二病っぽい笑い声を上げていた記憶がこみ上げてきた。
頭を振り、意識を切り替える。
「小藍、着替えを持ってきて!」
声を張ったが——応答はない。
「……?」
三宝は再び呼んだが、やはり返事はなかった。
不審に思い、浴槽から上がってバスタオルを巻きつけたまま部屋へと出た。
だが、小藍の姿はどこにもない。
さらに、呉玉玉の姿も見当たらない。
(……おかしい。)
そのとき、鼻先にかすかな異臭が漂った。
——部屋中に、白く霞んだ靄が広がっていた。
(この霧、普通じゃない!)
三宝は瞬時に危機を察知した。
手印を結び、呪文を唱える。
湯船の水が宙に浮かび上がり、
泡のような水球となって彼女を包み込む。
これで、霧との接触を断つことができた。
だが、疑念は深まる。
(さっきの声……誰?「奴ら」って誰のこと?)
その刹那——
「バン!」
扉が乱暴に開かれ、
黒衣に身を包んだ集団がなだれ込んできた。
彼らは全身を覆い、目元だけを露出している。
リーダーらしき男が、低く嘲るように告げた。
「お前が秣陵徐家の三宝小姐だな?
大人しくついて来い。」
三宝は鋭く睨み返した。
「あなたたち、何者?」
黒衣の男はくぐもった声で笑った。
「知る必要はない。ただ——
素直に従うか、無駄な抵抗をするか、好きに選べ。」
「それとも、」
彼はいやらしく目を細めた。
「今のお前はタオル一枚だ。術もろくに使えまい?」
仲間たちも下品な笑い声を上げた。
三宝は顔を赤らめながら、激しい怒りと不安を押し殺した。
——家では数年修行してきたとはいえ、
徐家は小貴族にすぎず、資源も功法も限られていた。
五品以下の異能者は、
呪文と手印なしでは、ろくに術が使えない。
今の彼女にとって、これはあまりにも不利な状況だった。
(……全部、計算ずくか!)
三宝は必死に冷静を装い、冷笑した。
「そのボスなら、森で私が倒したけど?」
黒衣の男たちは一瞬たじろいだが、リーダーは薄笑いを浮かべた。
「李老大か。あんな間抜けは問題じゃない。
——俺たちは違うぜ?」
また、卑猥な笑い声が響く。
(三宝:この連中、あの山賊たちの仲間……!)
胸の奥に、疑念が湧き上がる。
(小藍と玉玉……どちらか裏切った?)
だが、玉玉も戦っていた。
それに、あの時、本気で山賊を倒していたはず……。
——混乱する思考を、男の声が遮った。
「さあ、どうする?」
黒衣の集団がじりじりと包囲を狭める。
三宝は後ろ壁に追い詰められ、
絶望的な状況の中、最後の一手に賭けるべく、
手印を結ぼうとしたそのとき——
「ガラガラッ!」
天井が破れ、
眩い白衣の公子が、まるで飛燕のように舞い降りた!
三宝は思わず目を見開き、
その姿に心を奪われた。
(か、かっこいい……!)
白衣の公子は、余裕の笑みを浮かべると、
冷然と告げた。
「お前らごときに、俺の名を知る資格などない。」
手首を返し、錦袋から抜き出された白銀の剣——
凝雪剣が、
月光を浴びて凛然と輝いた。
剣を軽く振ると、空気が唸りを上げた。
「……空間法器!?凝雪剣!?
まさか……海城王家の大公子か!」
黒衣のリーダーが叫ぶ。
(三宝:えっ……また中二病発動?)
一気にイメージが崩れた三宝は、心の中でずっこけた。
黒衣たちの頭領はなおも言い訳を続けようとしたが、
白衣の公子はさえぎった。
「帰るだと?甘いな。」
冷笑を浮かべた彼は、剣を構え直した。
「この地に俺が現れた以上——
お前たちに残された道は一つだ。」
「死ぬことだ。」
低く、冷たい宣告だった。
彼はくるりと三宝に向き直り、
温かみを帯びた微笑みを浮かべた。
「安心しろ、お嬢様。
本座がいる限り、誰一人、お前に触れさせはしない。」
(三宝:うわあああああ恥ずかしいぃぃぃ!)
足の指が地面にめり込みそうな衝動を必死でこらえながら、
三宝は、
なんとか平静を装って頷いた。
周囲の黒衣たちはすでに包囲陣を取り、
空気はぴたりと凍りついていた。
——嵐の前の、静寂。
突然の戦闘ってテンション上がりますよね。
中国人作者の拙作、読んでくれてありがとう!




