表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三宝夢行録  作者: 徐三宝
13/30

第十三章:束の間の静けさ

睨み合う黄衣の修道者。

三宝は戦わずして退く──賢い選択か、それとも…?

第十三章:束の間の静けさ


三宝サンバオ小藍シャオランがロビーの席に落ち着いて間もなく——

またしても、三人の大柄な男たちが瑞斯特旅館ずいすとりょかんへと入ってきた。


彼らはずかずかと大股で歩きながら、ロビーにいる客たちを品定めするように見回し、

最後に、その視線を三宝に向けた。


三人は黄衣をまとい、体格は屈強、歩くたびに床が微かに鳴るほどの重量感を漂わせている。

中でも、八の字髭をたくわえた男はひときわ目を引いた。

陰険な目つきに、嘲るような笑み。

ただそこに立っているだけで、不快な空気が漂った。


「おう、小娘、こんな夜更けに茶なんて洒落てるじゃねぇか。」

八の字髭がにじり寄り、三宝にからかうように声をかける。


三宝は無言で茶碗に目を落とし、悠然と香りを楽しんでいた。

隣にいた小藍は、明らかに不快そうに男を睨みつける。


だが、八の字髭は意に介さず、さらに三宝へと近づき、

彼女が抱えていた三花宝サンファバオに手を伸ばそうとした。


三宝は眉をひそめた。

湧き上がる不快感を抑え、静かに立ち上がる。


「その手、引っ込めなさい。」


冷たい声で告げた。


男は引く気配もなく、さらににやついた。


「なんだよ、猫くらい触らせろよ。

そんなかわいい猫連れて、どこのお嬢様だぁ?」


三宝は冷ややかな目で彼を一瞥した。


「あなたに名乗る義理はないわ。」


そして、彼女はさっさと踵を返し、旅館の奥へと歩き出した。

小藍もぴたりと後に続く。


背後から、男たちの嘲笑が聞こえた。


「へぇ、ずいぶん照れ屋なこった!」


小藍が悔しそうに低く言った。


「お嬢様、あんな奴ら、ひとこと言ってやりましょうか?」


三宝は首を横に振った。


「いいわ。あいつら、修道者だわ。しかも……」


彼女は目を細め、静かに言った。


「特にあの八の字髭、四級の修道者クラスよ。」


小藍は舌を巻いた。


「四級!それって、小規模の宗門なら供奉にしてもおかしくないくらい……」


三宝は何も答えず、そのまま部屋へと向かった。


客室の扉を開けた瞬間——

三宝は思わず感嘆した。


部屋は端正で気品に満ち、

花模様の彫刻を施した木製ベッドには、きめ細かな絹の寝具。

燭台には柔らかな灯りがともり、壁には山水画が優雅に飾られている。


青磁の茶器が並ぶ小さな卓、

そして、なんと——


独立した浴室と水洗トイレまで備わっていた!


青銅で磨かれた便器、

白玉からくり抜かれた湯船、

湯気がほのかに立ち上り、花びらが浮かぶ湯面。


(すごい……さすがは大都会屈指の旅館。)


三宝は心の中で感嘆した。


玉玉ユウユウが手早く荷物を整理し、

小藍が三宝の着替えを手伝う。

白玉の湯船に身を沈めると、

昨夜の血戦で蓄積した疲労が、じんわりと溶けていく。


至福のひととき——


疲労困憊した主従三人は、

そのまま深い眠りへと落ちた。


***


夢の中。


三宝は、再び昨夜の森へと足を踏み入れていた。


だが、今回は違った。


彼女は孤独ではなかった。

——いや、正確には、一人だったが、怯えてはいなかった。


その身から水藍色の光が溢れ、

天地と一体化するかのような、圧倒的な気配を放っていた。


三宝が指を軽く弾くと、空中にいくつもの巨大な水球が現れる。

水球は猛然と回転し、

土壁を突き破りながら、敵を次々に打ち倒していく。


山賊たちは、なす術もなく地に倒れた。


やがて、山賊の頭目が三宝の前にひざまずいた。


「お嬢様、命ばかりは……!」


彼は震える手で、土霊珠を差し出した。


三宝はそれを一瞥し、無言で受け取ると、冷たく告げた。


「二度と目の前に現れるな。」


山賊たちは、赦されたとばかりに蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。

誰もが必死に、命からがら逃げ出していく。


三宝は、静かに彼らの背を見送り、

やがてふっと微笑んだ。


——そして。


「お嬢様、すごい!かっこいい!」


玉玉と小藍が、マントの裾をひるがえして走り寄り、

満面の笑みで三宝を称えた。


どこからか、三花宝もぴょんぴょんと跳ねながら駆け寄り、

彼女の足元にじゃれつく。

小さな手で三宝の脚をぺちぺち叩き、

まるで勝利を祝福しているかのようだった。


三宝は土霊珠を手に、胸を張って笑った。


「ちっぽけな山賊風情が、この私に手を出そうなんて——

身の程知らずもいいところよ!」


かつての、最も輝かしかった日々を思い出しながら——

三宝は、心の底から笑った。


力だけでなく、引くこともまた勇気。

ご覧いただき、ありがとうございます!中国から心を込めて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ