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三宝夢行録  作者: 徐三宝
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第一章:運命の歯車が動き出す

目を覚ますと、そこは知らない世界だった──。

名前も性別も奪われた彼女が、異世界での一歩を踏み出す。


Xu Sanbaoシュー・サンホウ、三十代、都市で働く平凡なサラリーマン。


毎朝六時半に起きて、顔を洗い、服を着替え、家の猫に餌をやってから、バッグを持って家を出る。満員の地下鉄に揺られながら一時間、ようやく会社に着き、九時ぴったりに出勤打刻。グレーの仕切りに囲まれたデスクに座り、パソコンを開いて資料や報告書を処理する。


昼は数人の同僚とコンビニ弁当を食べ、会話の内容はいつも「住宅ローン」か「子供の話」。時々こう聞かれることもある——

「老Xu、もういい年だろう。そろそろ身を固めたらどうだ?」


彼はいつもただ苦笑いするだけで、何も答えない。


夜の退勤時は、混雑するピークを避けてから会社を出るのが習慣だった。ひとりで馴染みのコンビニに立ち寄り、割引されたパンや弁当を夕食に買う。猫のために小袋の猫用おやつをいくつか選ぶこともある。


そんな繰り返される機械のような日常の中で、唯一彼の心をほっこりさせる瞬間——

それは、疲れ切った体を引きずって帰宅したとき、三毛猫のSanhuabaoサンファバオが足元に絡みつきながら「ニャー」と鳴いておやつをねだる場面だった。


変わりたいと思わなかったわけじゃない。ただ、もう疲れすぎていたのだ。

仕事に情熱はなく、生活に期待もない。かつての少年の鋭さは、現実にすっかり削られてしまっていた。


その日、上司に残業を命じられた。彼は夜十時半まで働き、終わるや否や椅子から飛び上がるように立ち上がり、重たい体を引きずってオフィスビルを飛び出し、地下鉄の駅へと駆けた。


駅のホームに着いたとき、ちょうど終電が行ってしまったところだった。


「なんてツイてない……」

彼はがっくりと長椅子に腰を下ろし、タクシーを呼ぶか、シェア自転車で帰るか思案していた。


そのとき——


キーン、と甲高い警笛音が鳴り、一両の列車がホームに静かに滑り込んできた。


「ラッキー!今日の終電、遅れてたのか!今来たばかりじゃん!」

彼はちょっと得したような気分になり、「今日はSanhuabaoにごちそうだな」と笑った。


車内に入ると、意外なことに乗客はちらほらいた。だが奇妙なことに、皆まるで眠っているように目を閉じ、静かにうなだれていた。車内は、得も言われぬ不気味な静けさに包まれていた。


「みんな残業明けで疲れてるんだな……」

そう自分に言い聞かせて恐怖心を振り払い、彼も席に腰掛け、まもなくまどろんでしまった。


どれほど経っただろうか。

冷たい車内アナウンスの声が、彼の耳元に響いた。


「次は、終点——」


「え?終点?……しまった、乗り過ごした!」

列車が停車してドアが開くと、彼は慌てて外へ飛び出した。出口を探してホームを見回す。


——その時、違和感に気づいた。


ホームはがらんとしていて、誰ひとりいなかった。乗客どころか、本来終電時に構内を巡回しているはずの職員の姿もない。


彼の背筋に、ひやりとした冷気が走った。


振り返ると、発車し始めた列車は音もなく滑っていき、窓の向こうは誰も乗っていなかった。


身震いしながらも平静を装い、彼は薄暗い案内板を頼りに出口へと向かった。


改札の前に立ち、いつものようにスマホでQRコードをかざす。


「ピッ——」


改札は開かなかった。代わりに、眩しい閃光が彼の前に閃き、

何かが突如として彼に襲いかかってきた——


その瞬間、Xu Sanbaoの運命を司る歯車が、静かに、しかし確実に動き始めた。


転生から物語が始まります。

ここまで読んでくださってありがとうございます。作者は中国から来ました!

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