509【模擬戦と依頼】
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2話連続投稿します(2話目)
今話は、少し長めです。
隊の半分が任された。
簡単に、メンツを把握する。
全員が武装している。とはいえ、模擬戦だから、鉄剣ではなく、木剣。それにバックラー(前腕に着ける小型の盾)。
一部が魔法杖を持つ魔法使い。使える魔法の種類を尋ねる。
剣を使う方も尋ねる。
なるほど、バランスは取れているようだ。
対する副軍団長の方は? あー、なるほど、そう来るか。
オレは、全員を集めて、円陣を組ませる。
「向こうの作戦は、おそらくこうだ」と説明。「それをこちらもやると思われている。力量に差がないのに、それをやっても勝てる要素はない。そこで」と作戦を伝える。「いいか?」
全員がうなずいた。
「よし、配置につけ!」
オウッ!と叫ぶと、すぐさま配置につく兵士たち。
布陣は向こうと同じだ。後方に魔法使いが陣取る。
中央の屋敷前で立つ領主様が、声を挙げる。
「双方、良いか!」
副軍団長が手を挙げた。それに倣い、オレも手を挙げた。
「よろしい! では……はじめ!」
まずは、どちらも動かない。相手の出方を見なければ、やりようがないからな。
ではこちらから。
「第一射、てぇ!」
オレの掛け声で、前の兵士がしゃがみ、魔法使いたちが遠距離魔法を放つ。もちろん、すでに詠唱済だ。
遠距離魔法が飛んでいく。ストーンアローを選択。とはいえ、数が少ない。
「第二射、用意!」
向こうからも飛んできた。こちらはストーンバレット。数が多い。
それを兵士たちが、バックラーで防ぐ。腰を低くしているので、よろけない。
対して向こうの中央は、ストーンアローが当たって、その威力で体勢を崩している。
「接近!」とオレの号令とともに兵士たちが動く。駆け足だが猛スピードではない。
こちらのようすを見て、向こうも兵士たちが動く。こちらは早い。
接敵前に号令。
「割れろ!」
ザッと左右に割れる兵士たち。中央には魔法使いたちが詠唱を終えて、兵士たちとともに走っていた。魔法杖を構えて。
「第二射、てぇ!」
魔法が放物線を描いて飛んでいく。魔法はウォーターアロー。それが相手側の後方へと向かう。
着弾すると、彼らの後方が騒ぐ。
「固まれ!」
左右に分かれていた兵士たちが戻ってくる。
「第三射、用意!」
戻ってきた兵士たちが、矢尻編隊に。
後方では魔法使いたちが次の詠唱。手元にその魔法が大きな姿を現す。
接敵間近。
「開けろ!」
先頭が左右に分かれて、隙間が生まれる。
「第三射、連打、てぇ!」
大きなストーンバレットが、敵中央に向かって放たれた。それはひとつだけ。
それがひとりの兵士のバックラーに当たるが、大質量をいなすことができずに、うしろに吹っ飛ぶ。
開いた場所にいた兵士にも、同じくらいのストーンバレットが襲いかかる。
それが何度か行なわれ、中央に道ができた。
「行け!」
開いた中央に、こちらの突撃隊が突っ込んでいく。
剣戟の音もなく、副軍団長の降参の声が聞こえてきた。
「そこまで!」と領主様の声が響いた。
兵士たちは、剣を下ろした。
敵側と味方側で、その感情は分かれた。
「まさか、あのような戦法を取られるとは」と悔しそうな副軍団長。
「説明してはもらえぬか」と領主様。オレに説明を求めてきた。
「副軍団長は、私の話したとおりの布陣でした。そのままでイケるのかを試したのではないかと」
「そのとおりです、閣下」
「そこで、まず後方支援を潰すことにしました。そこまでいかないとしても混乱しますから、魔法使いの詠唱も唱え直しになります」
「それで?」
「それからは中央突破を目論みました。あちらは横一列での攻撃です。一箇所に穴が開けば、そこから突撃。敵大将を捉えます」
「見事にやられました。面目次第もございません、閣下」と頭を垂れる。
「良い。サブ殿の術中にハマってしまっただけのこと。実戦では、こうならぬようにな」
「ハッ」
「術中と言われましたが、領主様」ふたりがこちらを見る。「敵対している相手の手の内を知れたとよろこび、それだけに対処していると、今のようなことになります。諜報戦もあるのでしょう?」
「あることはある」
「しかし、サブ殿」と副軍団長。「普段の我らは、魔獣狩りがほとんど。人相手は」
「もちろん、そうでしょう。ですが、魔獣相手でも、その魔獣に合わせた戦法で闘う方が良いというのはご理解いただけるかと思います」
うなずく副軍団長。
「魔獣の中には、群れを統率するキングやジェネラルがいます。無闇矢鱈に突っ込むのは、ゴブリンやオークのやることです。対人戦は、より賢い参謀もいることでしょう。それに対処するには、こちらも戦力の分配が必要です。適材適所ですね。そして、良いタイミングで指示を出す指令官、その指示を信じて適確に動ける兵士が必要です」
「確かに」
「兵士方は充分に作戦を理解し、指示に適確に動いてくれました。練度の高さがわかります」
ふたりが笑んでうなずく。自分たちが育てた兵士たちが褒められて、うれしくない上官はいない。
それで立ち話を終え、オレだけ館へと下男に案内される。領主様は鍛錬で汗をかいたのだから、さっぱりするのだろう。
小一時間後、応接室で待っていたオレは、領主様と対面していた。
「さきほどは、兵たちの前で、多くを言い過ぎました」と頭を下げる。
「良い。おかげで良い知見を得られた」
「そう言っていただけますと、安堵します」
「サブ殿の力量を見誤っておった。模擬戦を見て、指揮官の力量が隊を生かしも殺しもするのだと悟ったぞ」
「兵士方の練度が高かったおかげです。指示に従ってくれなければ、バラバラな行動となり、殲滅されていたことでしょう」
「うむ」お茶をひと口啜る領主様。「して、今回はどのような?」
おっ、やっと本題に入れるな。
「先日の村の件でご報告にまいりました。お聞き及びとは存じますが、村としての開拓も終わり、現在は周辺の探索を行なっております。冒険者ギルドの仮庁舎のおかげで、村としての機能は整いました」
「聞いておる。しかし、驚いていたところだ。ふつうならば、一年以上掛かる村の開拓を三ヶ月で」
「実は、家屋が仮組みなので、冬場は洞窟に移らざるを得ません」
「なんと。いや、雪に閉ざされるとなれば、ふつうの家屋でも潰れることもあるな」
「はい。そのための支度もさせてありますので、ご心配には及びません」
「手は打ってあるのだな。助かる。申し訳ないが、雪に閉ざされては、行軍もままならぬ。もちろん、閉ざされる前に、申し出てもらえれば、手配するが」
「無理を申すつもりはございません、領主様」
「すまぬな。冬場に領軍を派遣する範囲がどうしても限られてしまうのだ」
「お察しいたします」
領主様の空気が変わる。
「ところで、サブ殿」
「はい、領主様」
「旅はひとりか」
「はい。仲間のもとに向かっております」
「どちらへ」
「ダイナーク国国境へと」
「では、レイバク町も寄るか」
「途中ですので、はい」
「確認をして欲しいことがあってな」
「なんでしょう?」
「実は、盗賊退治に、領軍を向かわせたのだが」
「連絡がないのですか?」
「途中までは、定期的に連絡が来ていたのだがな。それがここのところ、連絡がないどころか、確認を両ギルドに依頼したが、姿が消えたのだ」
「ありゃ。それはご心配ですね。盗賊は?」
「領軍到着とともに、報がなくなった。領軍を恐れて隠れたとも考えられたが、盗賊のひとりが町で捕まり、そうではないと自供した。そやつも何が起こったのかは知らぬようだ」
「盗賊の人数は?」
「百には届かぬが、被害が大きいため、領軍を出した次第だ」
「なるほど。ところが、領軍も盗賊団も行方知れずと」
「うむ。原因がわかれば良いが、ようすだけでも知らせて欲しいのだ」
「かしこまりました」
本来ならば、直接の依頼は、のちのちの揉め事の原因になるが、領主様は正式な依頼として、書類を作成し、報酬とともに渡してくれた。“甥の仲間を信じる”と言って。
アダナン町を出て、旅路を進む。途中は、村々があるだけ。レイバク町は、となり町だ。時間は掛からない。
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