507【トリリー活用法】
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2話連続投稿します(2話目)
今話は、少し長めです。
ミゼス町に到着した。
もちろん、事前に地上に降りて、徒歩で門を潜った。
どこにも寄らずに、屋敷に向かう。
屋敷は変わらずにあった。
門の内側には、大黒猫キャスパリーグのトリリーが日向ぼっこをしていた。
トリリーがこちらに気付いて、顔を向けてきた。
トリリーに唸る。彼も唸る。
内側に入って、トリリーのそばに。
玄関ドアが開いた。
開けたのは、執事のセバスさん。開いたドアから出てきたのは、シャインだった。
「お帰りなさい、サブさん!」
「ただいま」
駆け寄ってくるシャイン。以前に比べて、背が伸びたようだ。顔色もいい。まだ幼いが、これでも一児の母親だ。そして、トリリーの従魔契約者でもある。
中に入り、リビングのソファーに腰を下ろす。
メイドのヤルダさんが、お茶を淹れてくれる。
礼を言って、ひと口啜る。思わず、ホーッと息を吐き出す。
それから、その場にいないメイドのネイリンさんと赤子のベルを除いた三人に向く。
「ただいま」
“お帰りなさい”を異口同音に返してくれる。
「と言いながら、明日にはみんなのところへと旅立つ。ここへは様子見に寄っただけなんだ」
それはみんなわかっていたようだ。
「今夜は英気を養い、明日の早朝に出発するよ」
「では」とセバスさん。「食事の支度をネイリンに指示しましょう」
ヤルダさんが一礼して出ていく。
「シャイン、ベルは大丈夫だった?」
「はい」といい笑顔。「グズったりしますけど、みなさんのおかげで、元気に育っています」
「良かった。トリリーは? 毎日、あんな感じ?」
「そうですね。たまに、冒険者ギルドのギルマスさんが訪ねてきて遊んでくれています」
「ん? 遊んでくれてる?」
「はい。冒険者パーティーを連れてきて、訓練?をしているんです」
「トリリー相手に?」
「はい」
何してくれてるんだ、ドネリーは?
「トリリーは結構楽しんでいますよ。笑っていますから」
「まぁ、猫じゃらしにはなる、かな。別にケガはしていないんだろ?」
「はい。冒険者の方々は、それなりにケガしてましたけど」と苦笑い。「ポーションで治してました」
「まぁ、そっちの心配はしていないけどね」
「ギルマスさんからは、対価をいただいています」
「そこはきちんとしてたか。それなら文句を言うほどでもないな」
シャインが何かを思い出した。
「サブさん、ニワトリなんですけど」
「ん?」
ニワトリは、現代日本のそれとは異なり、魔獣だ。しかし、人に飼われるうちに、家畜化していた。それをアキタ村で購入できた。
「卵が孵って、増えているんですけど」
「ふむ。見てみるか」
腰を上げた。
「なんじゃ、こりゃ!」と叫んだのは許して欲しい。
ヒヨコどころか、成鳥になっているニワトリが十羽はいる。
「全部で、十二羽です。ニワトリ小屋だと狭くてケンカをはじめるので、小屋から出したんです。それで落ち着いてくれて。それでこれ以上増えたら困るので、産んだ卵は取るようにしていました」
「そうだね。逃げ出すことはなかった?」
「はい。トリリーがいるからか、あまり範囲を広げないみたいです」
「よかった。卵は?」
「一応、とってはありますけど」
「仕方ない。捨てよう」
「食べないんですか?」
「三日くらいなら、まだ大丈夫だけど、腐るからね」
「ですよね」と意気消沈するシャイン。
彼女の頭に手を置く。
「対処してくれてありがとう。さすがにこれ以上増えても手間が増えるだけだった」
それで笑みを見せてくれた。
とりあえず、その卵を見せてもらった。大きめのザルが三つに山盛りだった。
シャインが新しいザルを教えてくれたので、新しい卵を鑑定さんでひとつひとつチェックしてみる。七個は食べられる。ほかのザルとともに廃棄決定。アイテムボックスに収納しておく。
「これは食べられるよ」
「よかった」
よろこぶシャイン。
念のため、彼女に卵とザルをクリアさせておく。殻に雑菌が付いている可能性があるから、と説明。食中毒になることもある、とも。
「卵だけでなくて、ニワトリに触ったあともクリアすること。いいね?」
「はい。ベルを病気にさせたくないです」
「だね。あと、しばらくはベルに食べさせないようにね。離乳食としては向いていないから」
「わかりました」
卵は、その夜に、オレが教えながら、ネイリンさんに調理してもらう。横でシャインも見ている。
ひとり一個の卵料理。とはいえ、ベーコンエッグだ。そんなの、たいした料理でもない。
ふたりは、卵を割るのに、苦労する。こればかりは、練習しなければ、うまくなれない。
夕食。一緒に食べる。
「本当は、朝食の一品なんだけどね」
「これを朝に?」とセバスさん。
「それとパンかごはんね。あとスープかな。それからサラダが欲しいか。それだけあれば、充分だろう」
今夜はサラダは作らなかった。代わりに葉物炒めをベーコンエッグの下に敷いた。
ベーコンエッグを食べてもらうと、好評だった。塩分はベーコンから出るので、塩梅としては悪くない。
「朝に採れたら、食卓に載せていいから。余ったら、時間が経過しないマジックバッグに入れておけばいいから」
「わかりました」とシャインとネイリンさん。
新たに、マジックバッグを用意した。
余ったら、ここにパーティー全員が戻ったときに食べればいい。
本当は、生卵で卵掛けご飯にしたいんだけどねぇ。
翌朝。
オレは朝食を食べると、出発した。
とりあえず、冒険者ギルドに立ち寄る。
ギルマスのドネリーさんに会い、トリリーとの模擬戦について、話を聞く。
「アレだけの魔獣だ。相対するだけでも経験になるだろ」
「模擬戦は?」
「冒険者たちが本気で掛かっても、トリリーは遊び感覚でな。いい訓練になるんだ。本人も面白がってるそうだ」
「そうだろうな。それで金銭を渡しているって?」
「もちろんだ。高ランク魔獣との模擬戦ができる機会など、ほかではできんからな。それだけの価値があるんだ。ただし、A級以上の冒険者には許可していない」
「なぜ? まぁ、S級とかは困るが」
「そのくらいのランクの冒険者なら、外で魔獣相手をして欲しいからな。それにあの屋敷の運動場の中だけだと、どちらも手狭になるんだ」
「あぁ、そういうことか」
「そういうことだな」
模擬戦に関する話を終えると、冒険者ギルドをあとにした。
そのまま、門を潜る。
さぁ、ふたたび旅の空だ。
ここから先は、町に寄るだけにして、進んだ。とはいえ、途中の村々のようすも上空から確認して、あとで王都冒険者ギルドのギルマスに報告しないとな。麻薬事件でカラになった村々が、盗賊の住処になっていないとも限らないのだ。
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