表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
319/343

319【アダナン町に到着】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


2話連続投稿します(1話目)


ここから、貴族の護衛編になります。

 翌日。

 ふつうに起きたら、彼ら《守護獣の誇り》は全員起きていた。

 朝の挨拶をして聞くと、ぐっすりと眠れたそうだ。二度寝も考えたが、お風呂に入りたい、と言う。

 女性陣、男性陣という感じで入ってもらう。

 お風呂大臣のウーちゃんが、嬉々として世話を焼く。やはり、同好の士というのは、うれしいのだろう。

 朝食を摂り、お茶休憩。

「サブたちは、これからどうするんだ?」とベズーラ。

「王都に向かう予定だ」

「そうか。隠れ里の話、連絡はどうすればいい?」

「依頼したら手伝ってくれる、って話?」うなずくベズーラ。「なら、ミゼス町の冒険者ギルドに連絡してくれるか。そこが冬越しの場所なんだ」

「わかった。こちらはオオベ町だ。こちらも冒険者ギルドに頼む」

 オオベ町は、ミゼス町のとなりの町で、位置としては、王都側ではなく、こちら側だ。つまり、うまくすれば途中で拾える。


 それで、オレたちはテントを回収して、出発した。


 その日のうちに、アダナン町に到着した。ウーちゃん様々(さまさま)である。

 商業ギルドに立ち寄り、依頼受注書を提示して、目的の邸宅の場所を尋ねる。何も提示しないと、不審人物の(そし)りを受けるからな。

 どうやら、邸宅は、町の奥にあるらしい。広場とは、反対方向だ。


 その場所は、広大な敷地を高い塀が囲んでいた。門は、錬鉄製で蔦をデザインしたもの。そこから見える邸宅は、立派な二階建ての建物だった。

 門前に馬車を停車させる。

「何者だ!」と声を掛けられた。姿は見えない。

「護衛依頼を受けた冒険者です!」と大声で答える。

「待て!」


 五分ほどして、門扉が開けられた。ただし、人がひとり通れるだけ。

 そこから現れたのは、中肉中背の五十歳ほどの男性。見た感じ、庭師に見える。

「受注書を見せろ!」

 さっきの声だ。

 彼に、依頼受注書を見せる。

 しっかり見てから、返された。

「中に馬車を入れろ。入れたら、降りて、待て。勝手に動くな。いいか?」

「わかった」

 彼によって、門扉が開けられ、馬車を中に進める。

 彼の手による指示で停車し、そこに全員が降りる。言われたとおり、歩きまわったりしない。

 庭師と思われる彼が、近付く。

「リーダーは?」

「オレだ」と前に出る。

「これで全員か?」

「はい」

「途中で、仲間と合流はしないな?」

「はい」

「王都まで、まっすぐに向かうか?」

「途中、ミゼス町の我らの屋敷に寄りたい。しかし、護衛を優先する必要があるならば、まっすぐ向かいます」

「ふむ」と考え込む庭師。しばらくして、顔を上げる。「滞在はどのくらいか」

 ん? 貴族言葉?

「寄らなくても構いません。ですが、寄る場合は、手配に一日を予定しています」

「わかった。旅路では村や町に宿泊するつもりか」

 こいつ、明らかに貴族だ。鑑定さん、よろしく。

「失礼、ガイナルク伯爵様でいらっしゃいますね」

 疑問ではなく、確認言葉。

 みんなが驚いている。

 伯爵様は、怪訝な顔で、オレを見る。

「オレは、鑑定スキル持ちです」

 それでうなずいた。

「なるほど。中に入るといい。もてなしは期待せぬように」

 彼を先頭に、邸宅に入る。

 玄関ドアを開けると、執事がドアを開けようとしている姿にぶつかった。

「旦那様?」

「冒険者だ。例の件で、話す」

 執事は、脇に寄り、頭を垂れる。

 入る前に、伯爵様に尋ねる。

「失礼ですが、この邸宅には、何人がいらっしゃいますか?」

「なぜ聞くか」

 そこでラーナを示し、彼女の体質を説明する。それから御守りを渡す。

「これで彼女の結界に入れます」

 実際に伯爵様が試す。御守りを身に付けずに執事に預け、ラーナに近付き、結界に当たる。それから御守りを身に付け、近付く。今度はラーナに(さわ)れた。なるほど、とうなずく。

 それで人数は教えてくれなかったが、念のために三十個を執事に渡した。


 伯爵様に案内されて、リビングに。促されて、ソファーに座る。

 伯爵位なのに、室内は質素な感じがする。裕福そうには感じられない。貧乏というレベルではないが。

「ブレナン・ガイナルクである」と自己紹介。「国王陛下から紹介を受けた。ではあるが、容易く信用できぬ」

「もちろんです」

「あの馬車での移動になるか」

「はい。しかし、浮遊の魔導具にて、乗り心地は大変によくなっております。ですから、不快な旅にはならないかと」

「魔導具を使うか」と驚いている。

「快適な上に、移動時間も短縮されます」

「なるほど、それは助かる」

「我々は護衛依頼を受けておりますが、途中、妨害などがあると?」

「妨害はない。問題は」と上目遣いでオレを見る伯爵様。

「問題は?」

 そこでなぜか諦めた顔をする伯爵様。

「送って欲しいのは、うちの娘だ」

「お嬢様、ですか?」

 そんな顔をするようなことか?

「どこにも寄らずに、王都に行けるか?」

「できます」

 そこでため息ひとつ。

「会えば、わかるだろうことだ」と本当に諦めの声。「娘は……精神を病んでおる」

 ムムム、これは予想外だ。精神を病んでいる、って。判断に困るぞ。

「それで、まっすぐ王都へと?」

「うむ。村や町に寄らずに、願いたい」

 つまり、娘の状態をほかの貴族の誰にも知られたくない、ということか。

「なるほど。暴れますか?」

「いや、言動に難があるのだ。貴族としては恥ずかしいが、どうしようもない。せめて環境を変えてはどうかと医師に助言をもらったのだ」

 言動か。場合によっては、睡眠剤で、眠らせての旅もできるが……

「その言動は、意味をなしていらっしゃる?」

「なんとも言えぬ。娘としては、言葉の意味を説明しようとしているようなのだがな」

 ふむ、少なくとも、意思疎通を図ろうとしている、と。

「では、説明をすれば、態度を改めてもらえるでしょうか?」

「うむ」

「突然、暴れたりは?」

「それはない」と首を振る。「どうやら自分に対して癇癪(かんしゃく)を起こしているようだ。貴族令嬢としての礼節は身に付けておる」

「それはパーティーに出しても?」

「パーティーか」険しい顔をする。「難しいな。デビュタント・ボールも諦めた」

 デビュタント・ボールとは、貴族令嬢の成人式パーティーのことだ。いくつかの作品では、貴族家の令嬢が自宅で行なっているが、本来は王城やホテルなどに、令嬢たちを集めて、国王陛下などに拝謁し、ほかの貴族家に見てもらうことで、社交界デビューさせる。その場で、婿探し嫁探しもするとか。この国では、どうなのかは、知らないけども。


「ほかの貴族家に気付かれたくない、と?」

 うなずく伯爵様。

「わかりました。貴族令嬢として、あの馬車に乗ってもらえるでしょうか?」

「乗馬は習わせている。うちに馬車はあるが乗せたことはない。だから、初めての馬車となろう」

「なるほど」


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ