捨てるゴミあれば拾うゴミあり
初投稿です。結構見直しとかしたんですけど。なんか意味がおかしかったりするところがあると思うので温かい目で見ていただけると幸いです。
目を開けると頭上から嫌な音がした。何かと思い見上げてみると俺のスマホがぐんぶる音を立てて振動していた。これはアラームである、用心深い俺が寝坊しないようにと設定していたのだ。まだ少し寝ていたいがこいつがなってしまったからには仕方ない。俺は眠い目をこすりながらのっそりと布団からずり起き、きしむ床を一歩一歩進んでいく。
「あー寒」冬が近づくと毎年毎年寒さがひどくなっている気がする。それはただ気がするというだけであって、俺が去年の寒さを覚えていないのが悪いのだ。
半袖から移行したばかりの長袖に腕をとおすと右手にゴミ袋をもち玄関を開ける。ドアノブがキーンと冷たくて驚くがその感情は一瞬で消えていった。外はもっと冷たい、というより寒いが正解だろうか。反射的に手を袖の中に隠すと多少はましになる。冬が近づいた早朝の外はまだ暗い。階段をおり自分が降りてきた部屋を見る。俺は築20年ほどのアパートに住んでいる。視線を地上に戻そうとした刹那この上ないほど綺麗な星空が俺の視界を彩った。綺麗だなと見惚れていると隣から眩しい光と「カシャッ」という音が俺の感覚を刺激した。音がした方に目をやると1人の女がカメラを持ってそこに立っていた。女である確証はないが長い髪が風に揺れていたのが見えたので多分女だろう。
俺は真の男女平等主義者なので女相手でも一切遠慮なくギロッと睨みつけこう言い放った
「盗撮ですか?」
そう言われた女は明らかに動揺した様子である。
(やっぱりか)
右手に持ったゴミ袋をぶん投げてやりたい気持ちを抑えながら
「さっき撮った写真みせてもらってもいいですか?」
「いっいや、あの」
女は何か言いたげな様子だが俺は怒りとも辟易ともとれない形容しがたい感情に身を任せ女の領域にズカズカと侵入していく。拳が届く距離まで近づくと
「写真、見せてください」と俺が言う。
そうしたら女はあろうことかカメラを隠して抵抗する姿勢をみせた。まったく最近の若者は潔さが足りないな。と15歳の俺は思う。
「いいから見せろって!!」俺は女から強引にカメラをとりあげ写真フォルダを見た。
おかしい、なにがおかしいのか、それは写真フォルダに俺の写真が一枚もないのだ。どうやらこの女はプロゲーマー顔負けの指の器用さをもっているらしい。
「俺を盗撮→俺に気づかれる→俺に近づかれる→俺にカメラを取り上げられる」
この1分にも満たない短い動作の間に写真を消すなんて大したものだ。
「なんで消したんですか」
と俺が聞くと予想もしていない返答が返ってきた
「消すもなにも最初から撮ってない…です…」
「いやいやいや、撮ってたじゃないですか」
「私が撮ったのはこの星空です。写真フォルダをよく見てください。」
俺は手元のカメラに視線を移し、写真フォルダをよーく見ると星空の写真が一枚あった。「いやっでも」と言い訳の言葉を述べようとした俺の脳に悪魔的かつ余計な記憶が流れ込んできた。俺の記憶が間違っていなければ「カシャッ」という音は一回しかならなかったし光も一度しか俺の目に映らなかった。そこから導き出される答えはただ一つ、俺の勘違いだったということだ。そう思うと焦りとかより先にこれまでの一連の出来事が俺の自意識過剰によって引き起こされたという事実から生まれた恥ずかしさが全ての感情を抜き去り脳内を支配した。こういう時どうすればいいかわからなくてとりあえず「ごめん」と謝ってみた。ごめんといっても許して欲しいとか俺に優しくしてとかそんな自己中心的な意味ではなくて、ただ単に自分の無礼をできるだけはやく謝りたかっただけだ。殴られることも覚悟の上で頭を下げると。
「全然…いいよ。」と女は言った。
「怒らないんですか?」と俺が聞くと
「うん…わかってくれたならそれでいいから。」
その言葉を聞いた瞬間俺の目の前に立つ女性が大地のように硬い意志と海のように大きな優しさを併せ持つ天使かそれ以上の存在に見えた。すると車が一台、俺たちのほうに向かってきたのが見えたので両端の歩道に1人ずつ立ち車が通り過ぎるのを待った。走る車のヘッドライトが俺たちを少しの間照らした。その時みえた彼女を形容するのにぴったりな言葉を俺は知っている。そう、「美人」である。キリッとした目とながいまつげ、高い鼻と真っ赤な唇、それらの要素は俺を恋に落とすのに十分すぎるものだった。生まれてこのかた感じたことのない衝撃を胸にとどめながら彼女にもう一度謝り俺は暗い道を後にして、自分の住む部屋に戻った。まだ冷たいドアノブに手をかけぐっと引き寄せる。玄関を上がりかけたその時ため息に似た声が俺の口からもれ出す。
「めっちゃかわいかったなぁ」
部屋に入り学校の支度をしようとするとなんだか右手が重いことに気づく、すっと目をやるとゴミ袋がさがったままになっていた。完全に忘れていた。俺の脳のキャパはすべて彼女で埋まっていたから、まぁ仕方ないといえば仕方ないのだが、俺なにやってんだよと自問自答しながら玄関に走りドアノブに手をかけようとした時、脳に一つの考えが生まれた。無実の人を盗撮犯と決めつけて否定する彼女の言い分すら聞かず挙句カメラまでとりあげたのに詫びはごめんの一言だけ、それなのに彼女に惚れちゃうとか
「俺、ゴミじゃん」
最後まで見ていただきありがとうございました。これからも続きをじゃんじゃん書いていくので是非ご覧になってくだはい。