そやつをしょっ引けえええええ!
前書きなので、前もって言っておきます。
USJに行った経験は、高校の修学旅行で一回だけ。20年以上前になります。つまり、ハリポタとか、ニンテンドーワールドなるものはまだ無かったわけで。正直、当時の記憶はごくわずかで。つまり、アトラクションやら何やらはほぼ想像と願望で構成していきます。
細かいこと気にするな!
修学旅行4日目―――
今日は生徒も教師も待ちに待ったこの修学旅行のメイン中のメイン。ユニバーサルスタジオ・ジャパン。
生徒達は皆この日の為にネットを駆使してユニバ情報を調べ、限られた時間内で如何に効率良くアトラクションを満喫出来るかを練りに練って来ていた。どこを選んでも、まず列に並ぶだけで軽く一時間勝負。飲食物の入手とお土産どちらに時間を割くかという議論にもなったりしていた。
「まずはグッズの確保からだな」
「初っ端から荷物増やすとか無いわぁ!」
「いや、全部家に配送してもらうから大丈夫大丈夫!」
「食べ歩けるやつ買って、並びながら食べるとかいいんじゃない?」
「待て待て!激しく揺れる乗り物系はゲボるから下手に食わない方がいいって。炭酸飲料とかは特にヤバいから!」
「基本どれも長蛇の列だからやっぱり軽く食べ歩けるやつは必須だよね」
「やっぱりチュロスとかが一番定番的だよね〜」
「何から先に入ろっかなぁ?ド定番はまずハリー・ポッターだとしてぇ……」
「俺はまずターミネーター3D観てみてー!」
「おぅ!俺もターミネーター観てー!」
前日の夜だけにとどまらず、移動の電車の中でも、生徒たちはみんな興奮を抑えられない様子だった。
そして、ついに到着。
到着してまずみんなのテンションを上げたのは、遠くに見えるホグワーツ城だった。
「ホグワーツ城だ。スゲェ!」
「綺麗……!」
「リアルキャッソー……!」
「ハリポタエリア行けっかな?」
「私ハリポタエリア絶対行きたい!」
「芽吹ちゃん、一緒にハリポタのコスプレしない?杖買ってさ、ローブ着て「ウィンガーディアム・レビオーサ!」ってやるの!」
夕夏が杖を操る振りをしながら言ってきた。
「え……またコスプレ?」
夕夏に負けじとテンションが高かった芽吹だったが、コスプレと聞いて見るからにテンションが下がった芽吹。
「あれ、芽吹ちゃんちょっと嫌そう……?」
遠くにアトラクションが見えるという景観だけでもワクワクするが、入場ゲート前にもグッズショップやスナック類のお店が数店舗あったり、自由に写真撮影可能なセットも沢山あったりと、入場ゲート前なのにそこそこ楽しめる感じになっていた。
「おい見ろ。ターキーレッグ、フライドチキンとかって書いてるぞ。YouTubeで見たやつじゃね?食いてー!」
美味しそうな匂いに出島が堪らずその店に行こうとしたが、
「やめとけ出島。入場前からグルメトラップだ。あとでゲロ酔いするぞ」
と、有馬京弥に止められた。
「僕もターキーレッグってやつ食べてみたい!どれどれ?」
「ちょっと待て芽吹。京弥の話聞いてたか?初っ端から食いもんはやめとけって」
「え〜、だめぇ?秋人にも半分あげるよ?」
「くっ……!?」
「おねだり芽吹ちゃんマジでエンジェル!!」
芽吹本人は秋人に止められて普通に残念がっただけなのだが、その何気ない仕草の可愛さに出島は昇天。秋人は目と歯を食いしばってなんとか耐えた。
「芽吹ちゃんはたったあれだけの仕草でどうしてあれ程までに可愛いのだ?」
「秋奈っち、ターキーレッグっていくら?今直ぐ買って来て。芽吹ちゃんに餌付けしたい」
「餌付けって……」
芽吹たち仲良しグループで、餌に釣られるペットと、それを止める飼い主の構図が繰り返されていた。
グルメトラップに釣られることなく入場ゲートに向かい始める夕陽ヶ丘高校の生徒たち。芽吹たちもなんとか思いとどまり、群れに合流した。あと一人を除いて。
「すみませーん。レッグと言わず七面鳥まるっと一羽を下さいませんか?」
「は、はい……!?」
ロリのエルフのような美少女に突然そんなことを言われた店員さんはびっくり。
いつの間にか単独で店に入っていたミヅキちゃんだった。
「今度はお前かーい!!」
出島と夕夏は一本ずつ。芽吹と秋人は二人で一本のターキーレッグを分け合った。ミヅキちゃんも一本。さすがに一羽まるごとは無理だったようだ。
「秋人、結局お前まで食っているのか?」
「これ一本で1000円だぞ。この方がお得だろ。あとこうやって食えば芽吹と……間接キス出来るし?」
「にゃああああ。何でそういうこと平気で言うかな秋人は。食べづらくなったじゃん!」
八乙女さんに指摘され、言い訳ついでにちょっとのろける秋人。
「テメェ秋人貴様!さりげなく芽吹ちゃんの彼氏マウント取りやがって。芽吹ちゃんあとで俺とチュロスゲームして遊ぼうぜ!」
「何それ?」
「こいつチュロスでポッキーゲーム的なことをしたいらしい」
「さすが京弥。ご明察!」
「それは私が許さん」
「芽吹ちゃんでダメなら八乙女さん代わりに……」
「コ・ロ・ス・ゾ……」
「う……お……おぅ……」
八乙女さんの鬼の形相にあっさり怯む出島だった。
『ユニバーサル・スタジオ・ジャパン』『ニンテンドーワールド』と二つのタイトルで描かれた大きな門をくぐり、いろんなアトラクションを遠くに見ながら少し歩くと、『UNIVERSAL』と書かれた大きな地球儀。あのお馴染みのロゴが現れた。まずここで好奇心に負けた生徒たちが記念写真を撮りまくる。女子たちはTikTokなどで撮影に慣れているせいか思い思いにカワイイポーズで撮影をしてはしゃいでいた。それに負けじと男子もおバカなポーズで対抗。
「ほらほら、せっかくなんだから芽吹ちゃんも一緒に撮ろ!」
「え、えぇ……、僕はいいよ。恥ずかしいよぉ〜」
「何言ってんの。滅多に来れないんだからハッチャケないと!」
「高校の修学旅行なんて今しかないんだぜ。みんなで撮ろう!」
「みんなで芽吹ちゃんを囲め!集合写真撮るぞ!」
「先生カメラおねがーい!」
「仕方ねーなぁ」
大きな地球儀をバックに、芽吹を囲んでみんなが集まった。
「ほらそこ、画面に収まらないからもっと詰めろ!」
「ちょっと、くっつき過ぎ!ってかどこ触ってんのよ!」
「バカっ。触ってねぇーよ。仕方ねーだろ!」
「ドサクサに紛れて芽吹ちゃんにぎゅ〜っ!」
「ちょっ、ちょっと夕夏くっつき過ぎ!」
「私も芽吹ちゃんにドーン!」
「わっ!ちょっ……潰れちゃうよぉ!?」
と、言いつつも、芽吹の内心では、
ひゃあ〜……。上からも左右からもみんな胸当たってるよぉ〜!
保安検査と入場ゲートを通過すると、今度は更に様々なアトラクションエリアの建物と町並みが広がっていた。どこか80年代のアメリカをイメージしたような町並みの大通り。生徒たちのテンションもより一層高まった。
まず初めは生徒全員で見られる『ウォーターワールド』『ジュラシックワールド』『ターミネーター3D』だった。
修学旅行生特別券なるものがあり、生徒一人一人にチケットが配られ、この3つのアトラクションをみんなで見ることが出来た。『ウォーターワールド』では水しぶきで濡れる恐れがあるので、みんなにカッパが配られた。
ド派手な爆発と共に飛行機が飛び出して来て、勢い良く着水した時の水しぶきは大迫力だった。最前列の2列までの生徒は漏れなくびしょ濡れになっていた。カッパのおかげで私服まで濡れることは無かったようだが、水の冷たさと大迫力にみんな悲鳴を上げていた。
「あの映画、ケビン・コスナーが演じる主人公な。話の最後に半魚人だったことが分かるんだよ」
「ちげぇよ。半魚人じゃなくてミュータント。北極と南極の氷が溶けて海面上昇して陸地がほとんどなくなった未来の話。ミュータントは適応進化」
「へぇ〜。阿部くん映画詳しいんだね!」
「べ、別に大して詳しいって程では……。ウィキペディアとか見れば分かるし……」
「おっとぉ〜、阿部くんが照れてますよぉ〜!」
「う、うっさいな!」
この時を切っ掛けに吉岡さんと阿部くんのカップルが成立したとか?しないのか?
『ジュラシックワールド』では、映画劇中に登場する恐竜たちの博物館で、恐竜の標本模型やロボット、化石展示などがあり、中でもみんなが驚いたのは、体長約17メートルもある『モササウルス』の原寸大パネルだった。
「ほえ〜。でっかぁー!」
「17メートルとかデカすぎだろ!?」
「沖縄水族館のジンベイザメの水槽よりデッカイね!」
つい口をぽっかり開けて見てしまうのは芽吹だけは無かった。みんなそのデカさに圧倒されていた。
その後に見ることになったティラノサウルスの化石標本は、モササウルスのあまりのインパクトのせいでちょっと迫力に欠けてしまったことは皆敢えて口には出さなかった。
その次の『ターミネーター3D』では、映画本編よりも、案内人のトークパフォーマンスの方が面白かった。
「揃いも揃って同じ制服を着ている君たちはいったいどこから来た?」
案内人の高圧的な質問の先は、どうやら夕陽ヶ丘高校の生徒たちへだった。
「ネズミーランドから来ましたぁ!」
いきなりそう答えたのは出島だった。
「ほぉ……。そうか。あの夢も希望もない東の国の……。よし。連行しろ!そのガキはスパイだ!」
するとすぐに警備員が現れ、出島を羽交い締めにした。
ただのウケ狙いだったのにまさかの展開に。
「ええええええ!?」
会場がザワめいた。
「貴様、今この中に好きな女子がいるだろ?正直に答えろ!答えられたら釈放してやる」
案内人の突然の無茶振りに出島は、
「え……!?」
出島くんまさか……?普段カワイイ女子には手当たり次第ちょっかい出してるけど、まさか本命がいたの?誰?誰?
芽吹も普段、出島にちょっかいを出されている対象だということには芽吹自身は無自覚で、出島の反応に一人でワクワクしていた。
「お、俺が……好きなのは……、や、や、八乙女サンダー!」
その瞬間。
「そやつをしょっ引けえええええ!」
顔を真っ赤にした八乙女さんが叫んだ。
「正直に答えたのにぃ!?」
「早くそやつを連れてイケー!」
何故か八乙女さんの号令で出島はあっさりとその場から連行されて行った。
その後はみんな何事も無かったこのように『ターミネーター3D』を楽しんだ。
「出島くん、帰って来ないけど大丈夫なのかな……?」
「ハルは本当に優しいな」
「え、なんで?」
「あいつなら心配無いと思う」
「だって出島くんだしね!」
「私は気にしない」
出島の所在についてはあとでホグワーツ城のシャンデリアに吊るされた姿が目撃されるのだが、その話は今は置いておこう。
続く……
想像と願望のUSJ。それもイイじゃないか!




