時代劇の衣装着てみた。でござる!
思ったより長くなってしまった。
自主研修で京都太秦映画村を訪れていた芽吹たち。
定番の顔出しパネルでは、白馬に乗った『暴れたい将軍』や、侍とお姫様などのパネルで写真撮影をしたり、カラクリだらけの忍者屋敷を体験したり、武士と忍びのチャンバラ寸劇を観たり。居合い切りの殺陣を習ってみたり。
そして今、芽吹たちは町娘姿のスタッフさんに誘われるまま、着物を着せられていた。
「ねぇ、これってどんな人の服なんですか?」
芽吹は自分が着せられた着物の格好を鏡で見て、スタッフさんに聞いてみた。すると、聞かれた女性スタッフさんは少し驚いてから、すぐに納得した感じでクスリと笑いながら言った。
「その服装の方は、時代劇では有名で大層立派で偉い方なんですよ!」
「ほえ〜。そうなんだ。すごいんだ。じゃあ今僕偉い人の役なんだこれ」
そんか芽吹の反応に、周りのスタッフさん達はクスクスと笑っていた。
「俺ら侍じゃねぇの。なにこれ?」
「江戸時代の旅人的なのがたしかこんな格好だったよな」
藤田と府川は髷をいじりながらお互いの格好を見る。
「いや俺なんて両手に団子持たされたんだけど。なんで?」
出島は何故か食いしん坊。
「これ、男の着物だよね。あとこの風車は何だ?意味が分からない」
城内さん。
城内要さんはジェンダーレスである。外見はどちらかといえば男子っぽい人である。
「ねぇー、これ大丈夫!?私だけ今からお風呂入るみたいな感じになってるんだけどぉ!?」
吉澤さんは大きなバスタオル1枚だけ巻かれ、片手に桶一つ。
「ブゥーッ!?」
「エロっ!?」
「ぐぁはっ……!」
「男子こっち見んな!」
男子3名卒倒。
「大丈夫ですよ。下はちゃんと水着ですから」
というスタッフのおねえさん。
「おふっ!」
「なんで芽吹ちゃんが股間押さえてんのよ!?」
秋人サイド。
「おぉ、すげぇ〜!」
「これが、本能寺……」
秋人の班は今、『本能寺』に来ている。……のだが。
「本能寺ってさぁ……」
「思ってたより……」
「意外とぉ〜……」
「「なんもねえええええええ!!」」
みんな声高らかに落胆した。
京都のビル街の一画にある、一見どこにでもありそうな小ぢんまりとした敷地の寺。それが現在の本能寺の姿だった。
改めて声量を下げるが、ブツブツと落胆の愚痴は収まらない。
「研修のクエストの証明。写真と、お寺の関係者にインタビューだけでもしておこう。何か為になる話とか聞けるかもしれないしさ」
秋人は班メンバーをなんとか奮い立たせようとした。
自主研修での課題。
各スポットにちゃんと辿り着いたという証明の現場写真(自分達も映ったもの)。その場所で誰か関係者にインタビューをして、後で記事として提出すること。ネットから抜粋した情報資料や画像は禁止。出来る限り個性のある記事で。
というのが自主研修のクエストである。
本能寺での取材があまりにネタ薄だった秋人たちは、急遽、京都駅を取材してみることに。ついで昼食。
店主のおばあちゃんが直々に作ってくれるお好み焼き屋で。
「芽吹の班は今頃どうしてんだろ?試しにLINEしてみるか」
秋人はLINEアプリを開いて先に写真を撮ることに。
「お、なに秋人、写真撮るの?」
「あぁ。芽吹に送っみようと思って」
「じゃあ私も撮って!」
「みんなで撮ろう!」
秋人は班メンバーとお好み焼きと店主のおばあちゃんも入った写真を芽吹に送った。
【本能寺何も無さすぎて終了】
【急遽、京都駅追加取材】
【その前に昼めし】
芽吹サイド。
ピロリロリン!
「秋人からLINEきた」
LINEを見た芽吹は、
「秋人たちもうお昼ご飯食べてる!」
「マジで?」
「まだ11時半だぞ?」
「なんか、本能寺何も無かったんだって。そんで急遽、京都駅取材するみたい」
「何もなかったか……。また確かに。その当時に大炎上でほぼ焼失したんだもんな」
「俺らも写真撮って秋人に送ってやろうぜ!」
「そういえば私たちまだ研修の課題終わってないじゃん!?インタビューとかしないと!」
「お好み焼きいいなぁ〜……」
「芽吹ちゃんヨダレ!」
吉澤さんや出島くんに促され、課題ついでに写真を撮る芽吹たち。秋人に送った写真は、時代劇のコスプレの写真を送った。町娘姿のスタッフのおねえさんも一緒に。
秋人サイド。
「お、芽吹から返信来た」
「なんて?」
【太秦映画村。忍忍!】
【時代劇の衣装着てみた。でござる!】
【僕偉いお爺さんのコスプレ!フォッホッホ!】
LINEの内容を覗き見たメンバーの女子が一言。
「……芽吹ちゃん、なかなか独特な構文で送ってくるね」
「だろ。カワイイだろ?」
「うわっ、リア充のデレいらん!」
「カワイイとなんでも許せる。芽吹ちゃんは正義!」
「てかこれ、『水戸黄門』のコスプレだよな?すげぇ〜。てか芽吹ちゃんが黄門様かよ。可愛すぎるだろ」
一瞬、秋人も他のメンバーも頭に?マークを浮かべた。『水戸黄門』を知らない世代だった。
「えっ、『水戸黄門』知らねぇの。『暴れちゃう将軍』も。『鬼平犯科帳』は。『八丁堀の八人』は、『遠山の銭形』は……、えええええ!?」
彼、松平慶喜。祖父母の影響で時代劇には詳しいらしかった。
「俺が太秦行きゃあ良かったぁ〜」
悔やむ慶喜君だった。
「芽吹ちゃんが徳川家の水戸のお爺さん……。可愛すぎでしょこれ」
後にこの写真は、卒業アルバムで集合写真よりも一面を飾ることになるのだった。
続く……
次回こそ、夕夏と八乙女さんの回にします。




