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ミヅキちゃんてもしかしてもののけ姫だったの?

高校の修学旅行での鹿公園の思い出は、

集合写真の時、カメラマンさんの直ぐ後ろで、鹿の交尾が勃発。物凄い生々しい腰つきに、みんなカメラ目線どころではありませんでした。



 平和だった鹿公園内に、芽吹の悲鳴が響き渡る。


「ふにゃあああああああ!」


 興奮した数頭の鹿に追い掛けられ、逃げ回る芽吹。

 トイレから出てきてみれば芽吹が何故かいきなりそんな状況に陥っているとを知って、急いで夕夏や八乙女さんの所に走る秋人。


「おい、何だこれ。芽吹のやつ何したんだ!?」


 2人に聞くと、


「ウチら3人で鹿にせんべいあげてただけだったんだけどさぁ〜、芽吹ちゃんが試しにって……」


「せんべい食べたらこうなってしまった」


 興奮した様子で芽吹を追いかけ回す鹿に向かって、困り顔で指差す八乙女さん。


「は……?」


 意味不明な状況に間抜けな声がもれる秋人。しかし、それも一瞬だった。秋人はすぐにもしかしてと、何かに気付いた。


(まさか、もしかしてまたアレか……?)





 その頃、芽吹達からは少し離れた一軒のお団子屋さんの軒先で―――


「お主も食べぬか、お団子?」


 すると鹿は口の中に串が刺さらないように横から器用に団子に齧り付いた。


「しかしお主らも大変じゃのぉ。ただただ普通ぅ〜にこの街に暮らしておるだけじゃのに、どこにいてもなにをしてても人間の娯楽の的とは。疲れておらぬか?」


 ミヅキは軒先でくつろぐ1頭の鹿と雑談をしていた。


(産まれた瞬間からこれがワタシらの日常だから。ここがワタシたちの街。たまに嫌な人間もいるけど、山と違って天敵もいないし、病気をすりゃあ人間の医者が治してくれる。平和なもんさ)


「へぇ〜……」


 気だるげに語る鹿の話を聞きつつ、至って平和な目の前の景色を見渡す。


(あとは、ツガイのオスがもーちっとマトモなオスなら、これ以上文句も無いんだろうけどね〜)


 鹿がそう愚痴をこぼす。

 と、その時だった。


「あ……、これはまずいね」


(何事だい?)


 そう呟いたミヅキから不穏な空気を感じた鹿が問う。と同時に、少女の悲鳴がミヅキの耳に届く。

 声がした方を見ると、


「ふにゃあああああ!」


 案の定、春風芽吹がまたトラブっていた。

 数頭の鹿が興奮状態で芽吹を追い掛けているようだった。さっきの一瞬の雰囲気で、ミヅキは芽吹のフェロモンの異常を感知していた。よく見ればあの鹿たちはどうやらみんなオスの鹿らしい。それを知ってミヅキは微かにニヤついてしまった。


「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。遊ばせてもらうかね」






 芽吹は追いかけて来る鹿から必死で逃げていた。フェロモンの暴発は自分では分からない。ましてや、まさか動物のオスにも影響が出るなんて。

 自分の手から鹿せんべいを美味しそうに食べる鹿の様子に、芽吹はなんとなく鹿せんべいの味を知りたくなった。そして、一齧り……。


「まさか鹿せんべいで!?意味わかんねえーし!」


 芽吹と、暴走する鹿をとにかく追い掛ける秋人。


「芽吹ー!おーい、芽吹ー!」


「あっ、秋人ー、この鹿さんたち止めてー!」


 秋人に気づいた芽吹は、そう叫びながら急Uターン。秋人に向かってさらに猛ダッシュ。


「えっ、いや、ちょっ待ておい!こっち来んのかよ!?」


「この鹿さんたちどうしたら止まってるくれるのー!?」


「フェロモンだ芽吹。フェロモン!締めろ!」


「へ?しめろってなにをー!?」


「ケツだケツー!ケツー!ケツの穴をしめろー!」


「こんな全力で走っててそんなの無理だってばー!」


「いいからとにかくケツしめろってー!」


 全力で走り、大声で叫びながらそんな会話をする芽吹と秋人。その会話を近くで聞いていた。八乙女さんと夕夏。


「くっ……////秋人キサマぁー、芽吹ちゃんに向かって卑猥な言葉を連呼するなー!」


「美少女のケツくらい別にいいじゃん秋奈っち」


「っ……////よくない!」




「くぅ〜……うぬぬぬぬぅ~」


 全く止まりそうもない鹿から必死で逃げながらも、なんとかケツ穴を締める努力をする芽吹。


「やっぱり無理ー!」


「くそ!」


「ひぃぃぃぃ!もう走れないってばー。限界だよー!鹿さんお願い止まってー!」

 

 もう走れなくなった芽吹は秋人に勢いのままに抱きつき、それを支えきれずに芝生に倒れる秋人。芽吹は力一杯鹿たちに向かって叫ぶ。

 その時、芽吹たちの視界に入って来た者がいた。


(人間の小娘相手になに発情してんだこのボケーーーー!)


 メス鹿の背に乗り、他のメス鹿も引き連れて突撃して来たのは、なんとミヅキちゃんだった。


「ピギャウンッ!!」


 メス鹿のフル頭突きを食らって真横に吹き飛んだ先頭の1頭。そこから次々とメス鹿のタックルを食らって撃墜されるオス鹿たち。

 鹿の背中から降りて芽吹に急いで駆け寄るミヅキ。


「ミヅキちゃんだ!?」


 驚く芽吹の頬をそっと両手で包むミヅキ。鼻と鼻がくっつく距離で一瞬見つめ合うと、


「もう大丈夫。フェロモンは落ち着いたよ」


 芽吹だけに聴こえる声でそう呟く。


「……ほえ?」






 僕のフェロモン鹿騒動はなんとか無事収まった。

 その日の夜、

 ミヅキちゃんが背に乗って連れてきた鹿さんたちは、どうやら僕を追いかけてたオスの鹿さんたちの奥さんだったらしく、いわゆる旦那の浮気現場に突撃をかますという結果になったらしかった。気になるのは、なんでミヅキちゃんが奥さん鹿の背中に乗る流れになったのかと。僕は気になってあとから聞いてみた。


ミヅキちゃん曰く―――


「鹿との世間話をしていたら芽吹ちゃんの危機を察知したので、どうしたものかと。鹿のトラブルは鹿に聞け。という訳で、目の前の鹿に聞いてみたら、なんとたまたま、芽吹ちゃんを追いかけていた鹿の奥様だったようで。奥様が(あれは何事?)と聞いてきたので、私は浮気現場ですね。と答えたら、あのような結果に。以上です」


 おかげで僕も秋人も危機一髪で助かった訳で。


「海月さん?」


「はい。なんでしょう柊さん?」


「秋人でいい。てかお前さ……」


「はい?」


「鹿と世間話してたらってくだり、どうゆうこと?」


「……………」


 一瞬の間、真顔で見つめ合う秋人とミヅキちゃん。

 

「……え、皆さんは犬や猫と会話しないんですか?」


「いや、なんだ今の間は!?怖ぇーよ!?」


「秋人さん、日本の奈良の鹿と人間との長い歴史と関係、舐めちゃいけませんよ?あそこの鹿なら世間話くらい出来ますって」


「そう言われればまあ、確かに……。芽吹はどう思うよ?」


 少し考える間があって、やっと聞きたかった質問の言葉がまとまった芽吹。


「ミヅキちゃんてもしかして、もののけ姫だったの?」


「黙れ小僧!……なんつって」


 突然どこから出したか犬のお面を着けてユラリと秋人から疑惑の空気を流して、この話は何となく無くなった。

 何はともあれ、海月冬耶ミヅキのファインプレイのおかげで芽吹達は助かったということで一件落着。

 鹿公園での自由時間が終わり、夕陽ケ丘高校の生徒たちがバスに集合していた頃。鹿公園の一画で、鹿の夫婦の喧嘩が起きていたことは、人間達には知る由もなく。ただ一人、ミヅキだけが内心で鹿に謝罪の念を送っていた。特にオスの方に。






 宿泊先の旅館に戻った芽吹達。

 夕食のビュッフェを存分に楽しみ、部屋に戻ると今度は満腹感をおかずにくつろぎタイム。

 部屋割は決められた男女混合の班ではなく、好きな者同士の4人一組ならオッケーといことになり、今芽吹と一緒に部屋に戻って来たのは、芽吹の班の班長吉澤唯。夕夏、八乙女さん。4人とも座椅子にドサッと背中を預け、全力でくつろぐ。


「お茶あるけど、みんな飲む?」


 お茶っ葉の容器を見て吉澤さんが3人に問いかけた。


「そうだな。私も手伝おう」


 慣れた手つきで急須でお茶を淹れていく八乙女さんと吉澤さん。それを少し見惚れて眺める芽吹。



 お茶で一息……。


「ふぃぇ〜……。ビュッフェ美味しかったぁー!」


「芽吹ちゃんメッチャ食べてたねぇ〜。ワタシも流石にちょっと食べ過ぎちゃったかもぉ~」


「手毬寿司とナスの味噌汁は沁みた。美味かったぁ〜」


 目を瞑って沁み沁みと言う八乙女さん。


「私は最初に食べたマリネが美味しかったかな。タコとサーモンとトマトが入ったの」


 吉澤さんは芽吹たちとは離れた別の席で食べていたようだ。


「芽吹ちゃんは何が一番美味しかった?」


 吉澤さんに聞かれた芽吹。


「えー、一番かぁ〜……?どれも美味しかったんだけどなぁ〜。う〜ん……強いて言うならねぇ、……きのこたっぷりの炊き込みご飯と、ビーフシチューと……」


「分かるぅ〜。ビーフシチューの肉超ほろほろで美味しかったよね!」


 夕夏が共感の声を上げ、八乙女さんも静かに頷いていた。


「きのこの味噌汁も美味しかったし。きのこたっぷりのハンバーグに、きのことトマトのグラタン、山菜蕎麦、あ、あとプチオムライスも可愛かった。あとはあとは……」


 黙って聞いていれば永遠と出てくる美味しかったであろうメニューの数々。


「ちょっとちょっとちょっと、芽吹ちゃん?」


「ほえ?」


「君はいったいその小柄な体にどれだけの料理を食べたの?」


 吉澤さんが若干冷や汗顔で芽吹に問う。それに対して芽吹は、


「あっ、あとデザートはねぇ〜……」


「芽吹ちゃんストップストップ。ごめんもうやめて。聞いてるだけでお腹いっぱいになるから」


「いちごのタルトとフォンダンショコラとプリンでもう限界だったかな」


「もーいいってば!」


「アハハハハ!育ち盛りだもんね。あんなに美味しかったら食べちゃうよね」


「え、ねぇ……、私タメだけど?同じ年頃なんだけど?育ち盛りにも程があるよね?いくらなんでも食べ過ぎじゃない?」


「芽吹ちゃんの可愛さの秘訣はそこにある」


 と、八乙女さんは静かに言った。


「マジで……?私、食べた栄養ほとんど胸とお尻に集まっちゃうんだけど。どうしらいいの?」


 そう言って吉澤は自分の胸を軽く持ち上げた。すると、夕夏がプンとほっぺを膨らませて、


「ワタシにもキサマのその肉まん別けてもらおーかぁー。てかよこせぇー」


「わぁ、班長、夕夏の地雷踏んじゃったぁ〜」


「へ……?」


 芽吹の一言にきょとんとする吉澤さん。そんな吉澤さんに向って両手をワキワキと動かし始める夕夏。


「ちょっと、やだ。夕夏、顔と手つきがなんかキモいんだけど!?」


「ワタシにもそこの肉まん二つよこせぇー!」


「きゃあああああああ!?」


 芽吹達、修学旅行生が泊まった旅館のフロアは、若く姦しいオーラで満ち溢れていた。


「秋奈っちの胸もよこせぇー!」


「やめい!」


「じゃあ、芽吹ちゃんのお尻で我慢するわ」


「なんで僕だけお尻ぃ!?」






 続く……。



 





次回、八乙女さんに恋の予感!?

出島くんピンチ!かも……。


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