ごっ……5000円!?高っ!?
ハルが元男だったという過去がバレて、学校のみんなから白い目で見られるようになってしまった。男子からも女子からも。
そんなハルの彼氏は俺だ。だから俺もホモだゲイだと責められるようになった。あの出島でさえも、ハルと俺のことを腫れ物のように避けるようになった。夕夏と八乙女さんの態度もどこか気不味そうに見えた。そんな中でも俺だけは、小さい頃からハルを一番知っている俺だけは、何があっても絶対あいつの味方で、絶対ずっとあいつの側に居てやらないといけない。俺があいつの側に、隣に居たいんだ。あいつのことが、ハルのことが好きだから。
みんなが俺とハルを避けて遠目で見てくる中で、ハルは俺を見てただ微笑んでいた。俺はハルの肩を抱いて言った。
「俺らのことを誰が何と言おうが関係ねぇ。ハルはハルだ!性別も関係ねぇ!何があっても俺はお前のことが大好きだ!」
恥ずかしさを振り切って秋人は叫んだ。すると、芽吹の肩くらいまでだった髪が突然背中あたりまで伸びた。それはまるで『あの花』に出て来ためんまのように。
「ハ、ハル……?ハルだよな?」
「……は……すよ」
「……?」
少し俯いているハルが何か言ったが、はっきり聴こえなかった。
「こんな僕のことを好きって言ってくれる秋人は、かっけぇんすよ」
「ハル……」
「そんな優しい秋人は、かっけぇんすよ」
満面の笑顔に涙を浮かべたハル。
「秋人は、かっけぇんすよ!」
「…………」
「あのぉ〜……秋人……さん?えっと……なんか、ゴメンね……?」
「…………」
気絶から目が覚めた秋人は、手で顔を覆い隠して、後悔と羞恥と嬉しさがごちゃ混ぜになった感情に、発狂しそうになるのに耐えていた。
お昼に芽吹と買い物に行った『ドン・キコーケン』で、実は秋人は芽吹に内緒でウィッグを買っていた。芽吹に着けてもらって可愛い姿を見てみたいと思ったのだ。蒸しパンを作る前に部屋に適当に置いたことをそのまま忘れ、それを芽吹がなんとなく見つけて被ってしまい、そこへ秋人が来て、そのウィッグを着けた芽吹の可愛すぎる姿を見て卒倒してしまったのだった。
「ハル……?」
「な、なに?」
「なんで、それを被ろうと思った?」
「え?」
「お前……それ着けた自分を見て、どう思った……?」
「え……、あぁ……えっとね……」
恥ずかしいのか言いづらそうに頬を掻く芽吹。
「わ、笑わないでよ?」
「ああ。笑わない」
「なんていうかねぇ……、めんまみたいだなぁって……」
「そ、そう……だよな。他には?」
「ほ、他に!?」
さらに質問が来るとは思ってなかったのか驚いてまた更に顔を赤くする芽吹。
「だから、めんまみたいで……か、か……可愛いなぁ……って」
芽吹は言いながら真っ赤になってゆく顔を隠すようにちっちゃくて縮こまってしまい、最後の方の言葉はほぼ聴こえなかった。
「クゥゥゥ〜……!」
極限まで恥ずかしがる芽吹のそんな姿が可愛い過ぎて、悶絶を堪える気持ちが声に漏れてしまう秋人だった。
「ハルっ!」
「ふぇっ、ふぇい!?」
「もう一回、一回だけ。そのウィッグ着けて見てくれねぇか!?」
「えぇ!?」
必死に頼み込んでくる秋人の押しに負け、恥ずかしいのを我慢して再びウィッグを被るった芽吹。
さっきは不意打ちで見てしまい、気絶してしまった秋人だったが、今度は食い入る様にガン見。
「もう取っていい?」
「ちょっと待った!写真撮っていいか?」
「えぇ、なんで!?嫌だよ!ダメダメダメ!」
「頼む!頼む頼む頼む!」
「恥ずかしいから嫌だ!」
「一生のお願い。今回だけ。一枚だけ!」
「……ホントに?」
「マジで!」
土下座のように拝み倒される形で、またしても押しに負けた芽吹。
「ホントに絶対一枚だけだからな」
「分かってる。じゃあ撮るぞ?」
「……」
恥ずかしさを必死で堪えてベッドに上でちょこんと正座をする芽吹。その姿をスマホの画面に写し……、
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!
まさかの連写だった。
「ちょっ……秋人ぉ!?一枚だけって言ったじゃん!?」
しおらしく正座していたところから、まさかの連写に怒って秋人に襲いかかるところまでしっかり撮られたのだった。
その後、部屋で2人でスパゲッティを食べるのだが、怒った芽吹にガン無視されながら、スパゲッティをただ静かに咀嚼するだけの秋人だった。
「ごめん……。マジでごめんハル。頼むから無視しないでくれ」
「……」
「あまりにもマジで可愛かったんだよぉ〜!許してくれよぉ〜!」
「可愛いとか言うなぁ!褒めすぎ!そして何で泣くの!?」
泣きながら褒めながら懇願してくる秋人に困惑する芽吹だった。
「なんで秋人はこんなの買ったんだろ?いくらしたんだろ?」
まだ付いていたウィッグの値札を見る。
「ごっ……5000円!?高っ!?」
続く……




