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ぼ、僕も、男装出来るかな?

 甘味のいろり彩雲堂。イメージモデルは【和風喫茶鹿楓堂(ろくほうどう)】という漫画です。そこに男装コンセプトを足したコンカフェの設定です。綺麗な人が男装した姿は女子客はもちろん、男子から見ても魅力的だと思います。一度は行ってみたい。



 週末土曜日。

 園田さんの案内で再度秋葉原へ来た芽吹たち。園田さんオススメのもう1軒。【甘味のいろり彩雲堂】というお店があるらしい。


「今日はお誘いありがとうございます芽吹ちゃん。ボクの私生活に秋葉原に来るという選択肢がなかったので、今日はとても新鮮な気分です。すごい楽しみです!」


「良かった!僕もミヅキちゃんが秋葉原に抵抗無くて安心したよ。人混みとかも凄いし。あとほら、ミヅキちゃんて、その……すごい人の目を引くと思うから。嫌じゃないかなと思って」


「ハル、お前言いづらいこと意外とハッキリ言ったな」


「確かにね。ミヅキちゃんの見た目ほぼファンタジーだもんね」


「夕夏、お前も大概だろ」


「そんなに気にしないで下さい。大丈夫ですよ。芽吹ちゃんもなかなかですから?」


「ほえ……?」


 相変わらず自分の美少女ぶりにはまるっきり疎い芽吹だった。



 

 お店はいくつかの飲食店が入ったビルの4階にあり、エレベーターを降りると、少し廊下を歩いた奥にあった。

 【甘味のいろり彩雲堂】と描かれた看板と家紋が刺繍された暖簾(のれん)

 若干緊張しながらも暖簾を潜る。

 昭和レトロな感じのガラス戸の音。来店を知らせる控えめな鈴の音。それを聞いて小走りで芽吹たちを出迎えてくれたのは、着物に前掛けと襷掛(たすきが)けという、ザ・和装の店員さん。


「いらっしゃいませぇ!何名様でしょうか?」


「か……!カワイイー!」


 そしてなにより、芽吹と夕夏が思わず声を上げてしまったのは、その店員さんの見た目と雰囲気だった。メイクや男装はしていてもギリギリ小学生に見えなくもないほどの幼さと、少々舌っ足らずな口調が母性か何かをくすぐる見た目だった。


「男装のコンカフェスタッフって、こんなに偏差値高ぇのか?可愛いすぎだろ!?」


「俺、バイトしたいとは言ったけど……、ここ、男募集してないだろ?」


 可愛い店員さんに案内されてまた少し店の奥に進んだ所に客席の間があった。小ぢんまりとしてはいるが、全体に木にぬくもりと純和風をイメージした空間。4人分のカウンター席と2人分席のテーブルが3つと、畳座敷に4人分席が一つ。


「いらっしゃいませ~!」


 迎えてくれた店員さんは威勢がいい感じではなく、自然でゆったりとした挨拶。

 芽吹、秋人、夕夏、八乙女さん、ミヅキちゃん、園田さんの6人は、2人分席3つに。出島と有馬が畳座敷の席に座った。


「いらっしゃい。園田さんから話は聞いてたから。店長が貸し切りにしてくれたみたいだよ」


「ありがとうございます!」


「みんな可愛い子たちだね」


 接客に当たってくれたのは、ショートヘアでボーイッシュなイケメン店員さん。スラリとした長身に着物がまたよく似合っている。もちろん男装。


(れん)さん、今日店長来てるっすか?」


「今ちょっと用事で外出てるんだ。でもたぶん1時間もかからずに帰って来ると思うよ」


「なんて美しい男装の麗人!お蓮さんと呼んでもいいですか?フンスッフンスッ!」


「は、はぁ……?」


 鼻息を荒くした出島が蓮さんの前に膝混付いて手を握った。それに戸惑いとあきれ顔の蓮さん。


「是非LINEの交換を……!」


「やめんかボケっ!」


 即座に八乙女さんに止められた。


「今日は一応新人バイトの相談も含めて来たんすけど」


「そうか。新人さんの話ね。それは店長が来てからってことで、はい。これがメニュー。バイトするならまずはウチの魅力を知ってからだね。甘い物食べて気持ちを和ませてからにしよう」



 

 注文したメニューが運ばれて来た。

 芽吹が注文したのは3色どら焼き。粒状の栗が入った粒あんどら焼きと、生クリームと信玄餅を挟んだどら焼きと、抹茶クリームどら焼きの3種盛り。飲み物は抹茶。

 夕夏は、ティラミス風ココアと抹茶のマスカルポーネチーズケーキ。とコーヒー。

 八乙女さんが、生チョコレートたっぷりいちご大福と、王道豆大福。と抹茶。

 秋人は、抹茶とバニラアイスが乗った白玉きな粉あんみつ。と抹茶。

 出島は、ごま豆乳プリンと大学芋。

 有馬が、スイートポテト仕立てのクレームブリュレ。

 そしてミヅキちゃんが、ふわふわチーズスフレと、こしあん、抹茶、チョコの3種の八ツ橋と、白玉ぜんざい。と玉露。スフレはホールケーキ程の大きさだった。


「スフレでかっ!?ミヅキちゃすごっ!全部食べれる?」


「はい!問題無いです。というかこのスフレ?はみんなでシェアしませんか?」


「おぅ……。それ考えてなかった。ミヅキちゃん大人」


「?」


 夕夏の反応にコクリと首を傾げるミヅキちゃん。


「いただきまーす!」


「はい。召し上がれ」


 普段はあまり食べないようなちょっとお洒落なスイーツと抹茶を堪能した芽吹たち。抹茶と玉露のおかわりで一息ついていた頃。


「ただいま〜。おっ?加奈ちゃんいらっしゃい。今日だったか。バイト候補の件」


「店長おかえりなさい」


 店長が帰って来たようだ。


「この人がウチの店長の、(かえで)さんだよ」


「どうも。店長の楓です。ごめんね〜。丁度用事で出払ってて」


 店長の楓さんは、特に男装らしい男装ではないが、その中性さがまるで『るろうに剣心』の日村抜刀斎にも似たような人だった。


「店長、この子たちが新しいバイト候補なんだけど。この子が前にも話した子の芽吹ちゃん」


「えっ、えっ……?前にもって!?何喋ったの?」


「いきなり面接!?」


「あ、えっと、あの……は、春風芽吹です!」


 いきなり園田さんが芽吹たちを紹介し始めてしまったので、少し狼狽える芽吹たち。


「まあまあ。せっかくウチの美味しいスイーツで和んでたんだから、堅苦しい挨拶はあとあと。まだゆっくりしてね」


 店長にそう言ってもらえた芽吹たちはもう少しだけお店の雰囲気を楽しんだ。





 美味しい和のスイーツとお茶を堪能し終えると、店長の楓さん直々の面接が始まった。


「一応説明するけど、ウチのコンセプトは男装と和装が基本。口調の男らしさとかは別に強制とかはしてないかな」


「でも男装するとなんか自然と男の気分になりますよね」


「まあ、そうだね」


 蓮さんが補足を入れると、楓店長は少しだけ恥ずかしそうにした。

 そこから簡単なマニュアルやお店のシステム、シフトと賃金内容などを説明された後、男装メイクの話になったところで、芽吹は思い切って思っていたことを正直に聞いてみることにした。


「あの、すいません。聞きたいことが……」


「お、いいよ!えっと……、芽吹さんだったね。なんでも聞いて」


「えっと……、僕、実は……そんなにバイトしたいわけでもなかったんですけど……園田さんに押されてというか……」


 今更だが、芽吹たちは園田さんの勢いに流される形で今ここにいるわけで。正直なところ芽吹たちはその気で来たわけではなかった。

 芽吹の正直な証言に、園田さんがあたふたした末に店長と芽吹たちに謝った。


「ごめんなさい!でも、人手不足は確かだし、芽吹ちゃんたちがいたらお客さんもっと増えるかなって思って!」


「う〜ん……」


 園田さんがそう言うと、楓店長は急に険しい表情で園田さんと芽吹たちを睨み回した。

 不穏な空気に芽吹たちはおどおどし始めた。すると、


「……いやぁ〜、実はそうなんだよねぇ〜!」


「ほぇ……?」


 急にペカァーっと間の抜けたような明るさで言い始めた。


「今のバイトメンバー、今日ここにいるので全員でさ。定休日はあるんだけど、それ以外で休みのシフト組めなくて実は困ってたんだよねぇ〜!」


「店長と私は定休日だけでも十分なんだけど、受付と配膳をやってくれてる(まこと)ちゃんが大変でね」


 蓮さんがそう言って入口にいるあの小柄な店員さんに視線を向けると、(まこと)という店員さんは恥ずかしそうにパタパタと手を振って謙遜のジェスチャーだけで返してきた。


「あの通りあの子謙虚でね。文句一つ言わない子だから」


「正直こっちもそれに甘えちゃって……」


 気不味そうに苦笑いをする店長と蓮さん。


「やって……みよう……かな?」


 ポツリと、芽吹が呟いた。


「アタシも、やってみたい。秋奈っちは?」


「えっ……!?わ、私は……あ……う、う〜ん……男装、似合うだろうか」


 八乙女さんが不安そうにそう呟くと、夕夏と園田さんと出島が静かにグッと親指を立てた。


「ボクはどうですか?ボクは男装出来ますか?」


「ぼ、僕も、男装出来るかな?」


 芽吹は自分の身体を見てから、秋人の方を見た。


 女体化しても幸い?胸はペッタンコだし。顔はどうかな……?


「ハルは普通に似合うと思うぞ?男装。蓮さんと店長だって、見て普通に男装した女性だってすぐに分かるくらいだし。ゴリゴリに男っぽく見せる必要はなさそうだし」


 秋人にそう言われて、夕夏と八乙女さんとミヅキちゃん、園田さんを見る。すると園田さんは、


「どう、お試しでいいから一日だけ……いや3日間だけ。どうかな。ダメ?」


 申し訳なさそうに拝みのポーズをして来た。


「いやぁ、言っちゃなんだけど、『可愛い』って素材はそれに比例してカッコよくもなるよ?蓮、どう?この子たちイケるよね?」


「当たり前に化けますよ。この子たち」


 楓店長と蓮さんが確信を持ったニヤけ顔で芽吹たちを見回すと、


「ヒィッ……!」


 芽吹は肩をすくめて固まった。


「男装が似合うどうかは分からないけど、和装は良いですね。男物の着物は着てみたいです」


 ミヅキちゃんもやる気らしい。


 

「あ、あの……、男の俺でもバイト雇ってもらえますか?」


「あっ、俺もそれ聞きたかったんだ」


 有馬と秋人が質問すると、店長と蓮さんは、


「おっ、やる気だねぇ。実は男手も欲しかったんだよ。裏方だけど」


「食材の運び入れとか力仕事も結構あってね。正直いたらかなり助かるんだ」


「マジっすか!?じゃあ……」


「うん。是非お願いしたい」


「ありがとうございます!出島はどうする?」


 有馬に問われた出島は、


「愚問だぜ京弥。この俺が、美女だらけの職場を断ると思ってんのか?『男装』だぞ!?『美女の男装』!これほど萌えるギャップが他にあるか!?しかも、芽吹ちゃん、ミヅキちゃん、八乙女さんの男装した姿を、客としてではなく、関係者として合法的に拝めるんだ!」


「いや、合法的って……。つまりお前もバイトやりたいで良いんだよな?」


「やるっ!!」


「ちょっと出島くん、アタシ抜けてない!?」



 ハルの男装……。あまり想像出来ねぇけど、ヤバい。めっちゃ興奮して来た。楽しみすぎる。


 隣に座る芽吹を見詰めながら、内心で鼻息が荒くなる秋人だった。


「秋人?どうかした?なんでガン見?」



 女体化して『元男の子』となった芽吹が、まさか"男装"する日が来ようとは。秋人目線でも元から可愛い系だった芽吹が、メイクを施されて男装した姿はいったいどんな風になるのだろうか。その変貌ぶりに果たして秋人は耐えられるのだろうか……?




 続く……

 店長・楓 シンプルにポニーテールに結った、天海祐希さんを若くしたイメージ。

 蓮さん るろうに剣心の佐藤健さんを少し女顔にしたイメージ。

入口の店員・真 声優の久野美咲さんが男装したイメージ。

 

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