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また心の声漏れてんぞ?

『コンカフェ』なるもの。僕はまだ行ったことがございません。YouTube動画だけが頼りで描いています。



 園田加奈からの誘いで秋葉原のコンセプトカフェに連れて来られた芽吹たち。去年はメイド喫茶だったが、今回はそれとは少し違うらしい。


「『コンセプトカフェ』?」


「メイド喫茶とどう違うんだ?」


「メイド服来てるスタッフもいるみたいだけど?」


 芽吹、有馬、夕夏が疑問を口にした。

 それに対して園田さんは即座に答えた。


「端的に言うと、メイド喫茶は『コンセプト』っていう設定ジャンルの中の一つってだけで、メイドっていう接客スタイルに特化したのが『メイド喫茶』なわけっす。で、コンセプトカフェっていうのは総称で、メイドに限らず、アイドル系だったり、学園系だったり、ケモミミだったり、時代劇風だったり。純和風みたいなお店もあったかな。コンセプトが多種多様なんで、総称で『コンセプトカフェ』通称『コンカフェ』って呼ばれてるっす。んで因みにここは、単純なメイドだけに限定してないんっす。執事もいるし、そのワンランク下のボーイもいるんす」


「なるほど」


 みんな納得に頷いた。


「あ、あと因みに、ペット、番犬が今募集中なんすけど?」


「は?」


「番犬!?」


「ケモミミ要素を追加したいらしいんすよね」


「たぶん洋館とかのイメージなんだろう」


「あ〜……。なるほど」


 秋人のおかげでまた納得。




「今回はとりあえず普通にゲストとして入店ってことで。えーっと……芽吹ちゃん、鳴海さん、八乙女さんと……」


 秋人、出島、有馬は何故か声には出さずにカウントされた。


「6名様ご来店でーっす!」


 園田さんは人数を確認すると、一旦お店の奥に消えた。その間、僕はすぐそばに立っていたイケメンスタッフと目が合い、カワイイ仕草で手を振られた。僕も手を振り返すと今度はウィンクされた。イケメンなのにカワイイ。カワイイのにイケメン。男装コンセプトカフェ……!好きかも……。


「ハル、お前赤くなってるぞ。大丈夫か?」


「ほぇ……?ぼ、僕顔赤い!?」


「うん」


「男装イケメン。始めてだけどBLキャラみたいでなんかテンション上がるね?」


「ん……?う、う〜ん」


 夕夏のテンションが高くなってる。BLって言われると僕としてはちょっと複雑な気分なんだけど……。でも普通の女の子が男装してるだけだから、つまりは女の子なんだよね。だから厳密にはBLではないよね。


「……でもカッコいい」


「ハル、心の声漏れてるぞ」


「ぁぅ……!?」




 スタッフは全員普通に女の子で、お店のコンセプトとして男装しているだけ。ジェンダーレスとかTS(トランスセクシャル)とかじゃなくて、女の子の格好になれば普通に女の子らしい。男装が趣味でそれを仕事としてやっているのだと。

 秋人と夕夏がスタッフさんと積極的に会話をしてくれて、いろいろ聞かせてもらえた。僕はスタッフさんたちに雨あられのように可愛い可愛いと褒め殺しにされて、恥ずかしいやらなんやらで全く会話が出来なかった。

 ここのスタッフさんたちの話を聞いて気付いたことがあった。

 僕は元は男の子で、ある日突然女の子になってしまった。性別が女子だから学校の制服も女子で、私服も気付けば今では女の子らしい服で過ごしている。でもこれはあくまで僕の意思だった。誰かに"女の子らしく"を強要されたわけじゃない。普段の僕の言動も、別に女の子らしくを意識して過ごしてはいない。僕は僕のまま。それすらも、今の今まで意識なんてしてなかった。でも、ここのスタッフさんたちの日常を聞いて思った。身体が女の子になってしまってても、男の子みたいに過ごしても良いんだと。思い切ってというか、改めて今の僕として、『男装してみたい』!男の子になりたい!

 そう思ったけど、今はまだ口に出す勇気が出なかった。



 時刻は夜6時を過ぎ今回解散することに。バイトの話は保留で、次は土曜日に別のお店を紹介したいと、帰りに園田さんからLINEが届いた。


 帰りの電車の中、僕はさっき考えていた気持ちを秋人にどう話そうか、話すべきかどうかを悩んでいた。そもそも、バイトをしたいかどうかという問題もあった。男装はしてみたい。この想いは強い。ただ、バイトがしたいかという点では正直弱い。自分で言うのもなんだけど、人前は緊張するし、話下手だし。接客に向いているとは自分でも思えない。紹介してくれる園田さんにも迷惑がかかる。


「バイト……バイト……バイト……」


「……?」


「男装……男装……男……装……」


「ハル?」


「可愛いスタッフさんたちに可愛いって言われた……」


「ハル?おーい、ハルぅー?」


「ふぇっ……!?」


「また心の声漏れてんぞ?」


「えっ、ウソ!?」


「何ひとりで悩んでんだ?」


「あ……う……う〜ん……」


 思ってる言葉が口から出てこない。秋人が心配してる。伝えたい事は分かってるのに……。


 そうこうしている間に電車は最寄り駅に到着。芽吹と秋人は特に会話をするでもなく、住宅街の道を歩いて家へと向かうだけ。

 何も喋れないまま、先に芽吹の家に着いてしまった。


「何で悩んでんのか。何に悩んでのか分かんねぇけど、言えるその気になったらちゃんと俺に言え。電話でもLINEでもいいからさ」


 別れ際、秋人は落ち着いた口調でそう言ってくれた。別に変な話でも、恥ずかしいような話でもないのに、何故かこの時は言える勇気が出なかった。


「……うん。ありがと」


「……おう。じゃあまた明日な!」


「うん。また明日!」


 ちょっと無理して笑顔を作って別れた。

 何がそんなに複雑なんだろう?なんで簡単に言えないんだろう?

 その夜は、頭がその疑問で満たされてあまり寝付けなかった。




 続く……

 


次回はロリエルフのミヅキちゃんを登場させたいと思っているのですが、果たして、情報量が多くなりがちなコンカフェで芽吹ちゃんとミヅキちゃんのキャラを上手く映えさせられるだろうか?

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