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蜘蛛の糸

「アザミは、人々の期待が集まるってどんな気持ちか分からないだろ。一度偉業を成した事で見ず知らずの女性から持て囃されたり、『もっと偉業を成してもらわなければならない』って声にも出さない男性からは、『あなたしか出来ない事だった』とか『一生あなたに付いて行きます』とか言われる。大したことをしたつもりはないのに持て囃し、己の意識を捨てたように慕ってくる。だがその気持ちに応えねば愚か、君の言う通りぼくはいいように操作される人形だ」


 なんだ、今度は自慢か。持つ者は応えるのが当たり前だろ、期待に応えないで英雄になれるなら誰もが英雄だ。そして大英雄は常識を覆す者だろ。


「結晶人はみんな操り人形でもあるだろ。その中でもお前は糸なんか引きちぎれる結晶人だろ」


「《蜘蛛の糸》だよ。引きちぎりたければ引きちぎれるが、引きちぎればどうなる……」


 総崩れするだろうな。カライスクロスの血でおれとお前以外は狂っておしまいだ、だから総崩れさせればいいじゃねぇか。人間社会の群れ長が消えれば外から新たな群れ長が来る。そろそろ神様に土地を返す時だ。


「お前が引きちぎれないならおれが引きちぎってやるよ」


 おれが言えば、もう話にならないというようなため息がニレンの方からした。


「その文法は及第点だ。しかし殺すことしかできないアザミは命の重みを知った方がいいよ」


 と、ニレンは己の結晶で出来た剣を引き抜いた。何万という命を切り捨ててきたニレンの剣がなぜこんなにも美しいのか、奪った命の数だけ輝くというなら、おれの作り出す剣はもっと濁っていてもいいはずだ。


「おれたちはもうガキじゃねぇんだ。喧嘩じゃすまねぇ、殺し合いだ」


「今のアザミが一番大切にしているものは闘争で、その次にリジーだ。闘争と生命の狭間のセカイで大切なものすら見失う君には、結晶人(ぼくたち)が獅子と呼ばれるにあたる一番大切なものを失ってもらう――一度罰を受けろ」


 失うものがおれにあると思うのか。とんだ大英雄様だ、頭のネジが締められないところはおれと似ているらしいな。


「罰でも何でも受けてやるよ」


「ならば選択肢をあげよう。<ひとつ:ぼくと戦って死ぬか>、<ふたつ:立ち去るか>……今のアザミには二つに一つしか選べないけど、どっちを取る」


「決まってんだろ」(戦って死んでやろうじゃねぇか)


「考えて選択しろ敗残者。戦いが大切か、黒山羊が大切か、女子が大切か。考えろ敗残者、この帝都は管理下にあるが、抜け穴もあるのだ」


 人間に完全管理された帝都で好き勝手出来るのはお前くらいだ。人間たちが開発した代物に捉えられないのも、結晶因子の匂いに気付かれず暗躍するのも、バカなことばかり考えているのもお前くらいだ。


「なぁニレン、お前が帝都の支配者なんだろ……」


 目の前の怪物がどれだけの光と闇を背負っているのかおれには見えない。何も教えてくれないから、おれは自分しか信じられないんだ。おれはおれが正しいと信じて剣を引き抜かなくてはならないんだ。


「そのようなちっぽけなモノに興味はない」


「――なら、そのちっぽけないのちでいのち奪ってんじゃねぇよ!」


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