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アヤカシの正体

<子獅子の剣>//おれは、引き抜いた剣に何を願ったのだろう。


 匂いだ。忘れられない結晶の匂い。そうだ、あの時から不思議だったんだ。なぜ贈り物に己の結晶を混ぜ込むのか、なぜ興味もないことに栞を挟むのか……あいつは何を考えていやがる。


 おれが向かったのは約束の地――結晶の序丘だった。隆起した結晶が美しい音を奏でているはずなのに、いつもの和音と異なる不協和音に包まれていたことははっきりと憶えている。


百鬼夜行の魂(アヤカシ)。お前だったとは思いもしなかったぜ――ニレン・ユーサー・ペンドラゴン。それとも大虐殺の大英雄ニレンって呼んだ方が分かりやすいか」


「遅すぎるぞ獅子王の子よ。あれだけお膳立てして置いたにも関わらず、目も鼻も耳も、何一つとして先を行かぬとは……強くなりたいと叫んだのを忘れたのか」


 流行語大賞は間違っていなかった。ただ、アヤカシによる隠し事ではなく化け物による化け隠し。いいや、神を超えたニレンは神隠しをしているつもりだったのだろう。神を殺してその神の皮を被り、神の死体を弔うのではなく隠す、罰当たりにもほどがあるぜ。


「昔の大元帥たちの失踪も結晶人の失踪もお前が暗躍していたんだな。何を考えていやがる」


「命を無駄にしてほしくない」


 答えになってねぇな。無駄に命奪っているお前は人殺しを許す教祖様みたいだぞ。


「リジーへのプレゼント、あのブレスレットを使って犬みたいにマーキングしていやがっただろ――リジーはどこにいるんだ」


「裏切り者は帝国に存在しないこととする。ぼくの方針だ」


 殺したのか……帝国ではお前の一存で命が消されるのか。大元帥どもに報告もせず、カライスクロスの血でリジーを制御せず、お前の意思でヒトが死ぬのかよ。


「どうしてだ……」どうしてお前は殺すことしかできねぇんだ。


「どうもこうも、裏切り者ならば仕方ないだろ。クリティアスの旗に傷はつけさせない」


「だから殺したって言うのか! あいつは帝国から逃げたかっただけだぞ! 戦ばかりでこころに余裕がなくなったから旅をしたかった、リジーは戦のない生活をしたかったんだ!」


 旅はツラいものだとしても、リジーは旅をしたかったんだ。旅に有って戦には無い感情を溢れさせたかったんだ。普通の結晶人はお前に無い感情を持っているんだよ。

戦のない生活を夢見れば、朝は戦のことを考えないで布団から起き朝食の準備をする、外に出れば澄んだ空気と美しい景色、好きなことに挑戦できる好きなことが山ほどある、昼食後も好きなことをして、夜はゆったりと明日のことを考える。そうやって一日の終わりに今日の出来事を整理して眠りにつく。その次の日もその次の日も、戦争で同志が死ぬことや誰かを殺すことを一切考えなくていいんだ。


 選ぶ自由があるのに、大英雄のお前が何やってんだよ。いい加減結晶人の夢を叶えろよ。


「鼻の利かぬそなたには真偽の判断すらままならないか…………いいだろう。ふざけた話をすると、リジーは第四世代製法だ。第四世代のカラダには高純度の結晶因子が張り巡らせてある、つまりリジーが神生国に逃げて万が一赤子ができたらその赤子は結晶因子を持っているにも関わらず生き続けるかもしれないんだ」


 なんてふざけた話だ。神生国は神々に守護された領土であって、そこで生まれる赤子は神に愛され結晶に憎まれる、それが意味するのは――神の支配する領土で結晶人は産まれないということ。産まれない……いや、産まれはするが、結晶因子を持った赤子は神の領土で数日しか生きられない。しかし、結晶因子を取り除く技術を神生国が持っていれば話は変わってくる。


 そこまでしても話は変わらないんだ。結晶因子を取り除いたら結晶人族(シシ)は死ぬんだよ。


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