猿猿合戦
「すもう、なるほどね。わたしの生まれたところは田舎だったからなのか、そういう細かいことは教えてくれなかったなぁ。ま、そんな細かい設定関係ないよ――あなたは正当な評価を受ける、これは結晶質の話で決まるようなものじゃないんだよ」
は? 訳分からんけど理解力あって助かるぞ田舎娘よ。しかしこのエーテルで悪い人の話を真に受けるようなことはするなよ、田舎よりも大都会には悪い人がオラオラ跋扈しているんだ。そういうことでカグヤ姫様、そろそろ田舎よりも自然のない場所へ帰る時ではありませんかな。
「評価するには実力テストだろ。結晶因子に勝った遺伝子と負けた遺伝子、それを選別する必要がある。おれの結晶質は他よりも脆く弱い、そして大英雄ニレン殿は型に嵌らない準結晶体、細かい設定に準ずるのが結晶人の評価ってことだ」
「あなたってよくニレンと自分を比べるよね。神すら帰せない若造のくせに、寝たら寝言ばかりで起きたら愚図る。いい加減自分と向き合って、自分を認めなよ」
準ずるって言っただろ。ニレンを見ないで無能な己を見るなんてバカでもやらねぇよ。もしかして自分を認めたら戦場で一輪咲かせられるとでも? おれのカラダは帝国の武器や爆弾や己の結晶でも傷すら付かないんだぞ、自爆も出来ないのにどうやって一輪咲かせるんだ。
「ニレンと比べられるのがおれだ。結晶人はニレンを見ることでしか成長できないんだ」
「そっか。このセカイの残酷に残酷を加えたような争いが国だけじゃなくヒトの内側も豊かにするんだね。だからニレンはいつもつまらなそうにしているんだね」
ん? まあ、あいつは昔からつまらなそうにしているぞ、と言うより感情が死んでいるね。
「そりゃあ、あいつのやった事は残酷だが、その残酷な事があったおかげで帝国はセカイの半分を手に入れられた。豊かさの条件に自然権は有っても無くてもどうでもいい、ニレンがついていれば豊かになる、それが現代の鉄板の定型だ」
神生国側の貧しかった国や島国は帝国の恩恵を受けて豊かになった。『クリティアス帝国に支配されて良かった』って言う帝国に流れる人間がいるくらいだから、何が正しいのか分からない。自然権が解き放たれている時代は争いや略奪がごく自然な物事として機能しており、個人と個人または集団と集団が物事を互いに打ち消し合っていた。自然権は自由な表現として個人や集団を形成して、そこまで大きくない村や町で伝統のように受け継いでいた。そこで伝統に会わない異端の者は他の村や町に流れて行った。そうやってかつての時代はヒトにも自由があった、しかし今は帝国というモノに自然権を補完している。
それもこれも、リヴァイアサンを殺したニレンという怪物に帰結する。
「竹を取ってりゃよかったのに、これじゃあ国取物語だぜ」
と、おれはこの聖戦の例えをした。国を奪うために無理難題に挑んで、解決したと思ったらまた無理難題へと直面する。そして結局は逃げられちまうんだ。
「それもいいけど、猿猿合戦の方が面白い物語かもよ」
この変女はなんて酷いことを言うんだ――本物のお猿さんに失礼だろう、天下統一サルモドキ合戦にでもしておこう。それか戦国時代の有名な戦の名前をそれに変更しておいてくれ、そうすれば試験に落ちないはずだ。汚い言葉は記憶に残るものだから、おれみたいなバカにならないように今のうち口汚く脳内汚染しておいた方がいいと思う。




