建国記念祭最終日
なぜ今になって思い出すのか分からない。分からないから分からないままにしておくのがおれということで、挑戦はするだけ無駄ということが分かっている。
時刻は二十一時半。時間が経つのは早いようで早過ぎる。このまま歳だけ食うとおれの時間の流れは《浦島太郎》も驚かせるほどの進み具合になりそうだ。
と、おれはアッシリア大広場の特等席に座って、ドローン投影機が垂れ流しにしているニレンと神の闘争を鑑賞していた。他の結晶人なら戦場での立ち回りの勉強になるのだろうけど、おれは人間様と同じように楽しませてもらったよ。
そうそう、おれが受ける試験の話をさせてもらうけど、もう終わったかまだ始まっていないかも分かっていない状況だ。まぁニレンのことだから零時までが期限だろうと予想している。違うなら失格だ、違わなくても失格だろうな。
(どれ、少しくらい宝探しという名の試験会場探しをしてみるか)と、おれは立ち上がる前に、
「おじさん、こんなところで寝ると嫁さんに風邪をうつす未来が待っているぞ」そう忠告してみたが、返ってきたのはうるさい鼾だ。
おれの隣に座ってきたと思ったら突然嫁の自慢をしてきた酔っ払いのおっさん、そのおっさんも今やすやすやと夢の中、エーテルだからいろいろな人がいるし、建国記念祭だからいろいろな人が集まるのは仕方ないと言えば仕方ない。祭りの最終日となれば二徹三徹した奴が睡魔に勝てず路上に転がっていたり、昼夜逆転した子供が親の疲れを気に留めず振り回したり、結晶人ともあろう者が戦場よりも疲れた顔をしていたりと、人間も結晶人もそういうアホなところは変わらないようだ。
まったく、最終日はこれからが大どんでん返しなのに、よもや睡魔に身を委ねるなんてかわいそうな奴らだぜ。
と、おれはアッシリア大広場を後にし、今は竹に囲まれた細道へなんとなく来ていた。ここに来れば何かしら試験のヒントが得られると思ったのだ。ヒントがあると思っていたからか、やはりヒントは無い。代わりに待ち構えるように立っていたのは変女だけだ。
「おやおや、生涯寝太郎君ではありませんか。ここで会ったが百年目、獅子の子は剣を引き抜けるのか――彼の一族は見ものして御座いますぞ」
おうおう、御大層な挨拶をかましてくれるそちは、まさかとは思いますが<愛の結晶>などと口走ってしまったが故に、竹取の翁殿をショック死させたカグヤ姫様ではありませんか。
「誰が生涯寝太郎だ。それに何を言いたいのか全く分からん」
「《兎追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川》、『獅子の剣見極めし彼の一族』って、帝国の諸人は歌うんでしょ?」
歌わねぇよ。ほんと頭のおかしい女だ。ネジも締められない結晶人なんておれくらいだが、この女の場合はおれの頭のネジを無理やり締めてくる異常者で間違いないな。




