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リジーは旅に出たい

「安定しないっていうのは帝国民が不安になるんだよ。お前からもニレンに何か言ってくれ」


百鬼夜行の魂(アヤカシ)の対策? 討伐? 無理だよ」


「百鬼夜行の魂は人間だけじゃなく結晶人も消すって言ったろ。お前も消されるかもしれないんだぞ。もし正体が帝国の裏切り者だったら危険極まりない、元アルブレヒトのメンバーは両国で有名人なんだから恨みや妬みが渦巻くセカイで安心なんかできないぞ。お前の言った感情はそういうものだろ」


 狙われるのはおれ以外のメンバーの話になるけど、おれは不安なんだ……おや? なるほど、だからおれは昨夜襲われなかったのか。赤字の結晶人はある意味最強だな。


「そういう不安な世の中だから、わたしは帝国から出て行きたいの」


「戦争以外では入国出国厳禁だ。もしも出られたとして何をする?」


「さあ、まだ考えていないよ。でもね、この戦の世から遠く離れられたら楽しいことが山ほどあると思わない? わたしは旅をしてみたいの」


 残念だがそうは思わない。強い者が生き残り弱い者は淘汰される、侵略行為をした血族こそ繁栄の言葉を歴史に刻んでいる。この帝国領土では危険指定された生物のほとんどが死に絶えるようになっている。結晶人に生まれたからには戦いこそが生き甲斐だ。


「戦から離れて旅に出たとしても旅には苦痛しかない」


「旅にはもっといろいろな感情が宿っているの、昼の旅と夜の旅とじゃ見えるものが違うでしょ。旅の感情は夜行の英雄のように目に見えないだけ、昼行の英雄は目に見えても滅多なことがない限り見えない。感情ってそういうものでしょ」


 旅に感情と言っても、旅人の主観でしかないだろ。かつての旅は足を使っていたんだぞ、大人が百キロ離れた場所へ商売しに行くにも苦痛しかないうえに、山賊に襲われたら殺されるか特産品が奪われちまうんだ。そんな時代があったのだから、おれたちは楽観してられないだろ。


「ははっ、スパルタ教師殿は難しいことをおっしゃいますな。ヒントをご所望したい気分だ」


「じゃあニレンならなんて言うと思う?」


 あの野郎ならヒントなんざ与えないだろ。ただ、あいつはこう言うはずだ。


「『木の枝のような旅をする者よ、挫折を知り、また旅をして挫折を学び、いつの日か一本の枝を見つけ、その断てぬ枝へ挑戦し続けろ』」


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