はじまりはじまり
/*変わらない日常は突然始まって突然終わる。いまの日常は日常ではなくなり、運命付けられた平穏は結晶と共に砕け散る。おれの物語の開幕には少しばかり時間を取らせてしまったようだが、漸く己の道を歩く理由が出来た。
さて、では語ってゆこうではないか。*/
と、こうして朝を迎えるおれには現実が似合う。おかしな夢から覚めて、冷めた朝の挨拶をして、深い深いため息を夢と共に口からはきだす。
祭りも最終日、今年の祭りは歴代で一番派手で寝る暇さえなかっただろうけど、おれは良い子ちゃんだから規則正しく昼前まで寝させてもらった。この祭りで何百万人の人間様が風邪を引いたのだろうかなんぞ結晶人のおれには関係ない。体は大事にしなくてはな。
そんじゃまあ病原菌だらけのお外に出ようかな。と、おれが古びた扉を開けた時、床に一枚の紙っぺらが地面を舐めたそうにひらひら落ちたのだ。
拾いたくない拾いたくない、と思いつつも拾ってしまうのがヒトの心理。この時代に紙なんぞあいつ以外の誰が使う。いや、おれを恨んでいる奴の仕業かもしれん、紙が珍しい物とうこともあり毒に浸した紙を拾わせて毒殺する気なのだろう。拾うなよ絶対に拾うなよおれ、そして裏返して何が書いてあるか確認するんじゃないぞ。
そういう感じでおれは紙を拾い両面を丁寧に確認してしまった。
〝試験の挑戦日だ。剣を引き抜いてもらう〟と、丁寧に今日の日付も記してあった。
「はぁ」どうやら試験を受けさせられるようだ。どんなことをやらされるのかと考えると、自信喪失天変地異の地震雷火事嵐大野次親父と何よりも怖い考えに至る。
「はぁ」おれのため息は朝っぱらから最高潮、なので飯でも食って不安を紛らわせよう。
<こうして外出するアクティブニートの今日の予定は、月の姫様と偶然なのか必然なのか再会して、百鬼夜行の魂との再会を果たすことになっている>
その話の前に一つ、百鬼夜行の魂という存在について話しておこう。
<memory>//最近でもなく、それほど昔でもない。聖戦カオスより前の話。
百鬼夜行の魂を昨夜目にしてしまった……いや見たと言ってよいのかわからないが、百鬼夜行の魂をちろっと見たような気がするおれは、柄にもなく頭を使っていた。
(百鬼夜行の魂。うむ、あの匂いは完全に結晶人、ふたつの影にひとつだけの結晶因子の匂い。行方不明になった奴が結晶人なのか分からないが、百鬼夜行の魂と遭遇したあの場所には結晶人の匂いしかなかった……しかし結晶因子の匂いはひとつだけ、となると百鬼夜行の魂の正体は人間、もしくは結晶人の突然変異というあり得ない空想上の生物。なぜヒトが消えるのか、なぜ正体不明の物体が出現したのか、なぜおれは生きているのか。ふむ、分かったことは、命が関わるとおれの運が良くなるということだけか。死んでもかまわないとはいえ、生存率高くて自分でも驚きだ)
とまあ、おれは知恵熱が出てしまうくらい若いので少し頭を冷やそう。特大氷菓子を二つ買って、夏の日差したっぷり浴びるアッシリア大広場の灼熱の最低な特等席へ座り、欲張りにひとりで二つの氷菓子を頬張るとしよう。
火神が消えたら逆だろうに、なぜこんなにも暑いのか。いや日神の仕業か? それとも神を殺し過ぎて寒暖の差が激しくなってしまったのか。どうでもいいがニレンよ、このセカイの神を全て殺して、最後におれたちの創造主も殺してくれ。




