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故人曰く

(故人曰く、生物は生から逃れられるが死からは逃れられない)


「結論を言うとだ、おれは負け犬だから一生を通して無職を謳歌するしかないんだよ」


「そっか、アザミも頑張っているんだね。君が強制されたボランティアに参加するなんて思わなかったよ」


 よく言うだろ、『奴隷には優しくしろ、そうしないと働いてやらないぞ』って、そういうことでおれは金銭目的、それと黄金期の奴と街でばったり会うこともなさそうだから強制参加に乗ったまでだ。宮殿内に爆弾を仕掛けたりはしていないから安心してくれ。


「今の結晶人が何事も一生懸命でいられるのはお前の教育の賜物だろうよ」


「教育なんてしていない。ぼくは生き残る(すべ)を見せてあげただけだよ」


 その生き残る術はある程度真似できることではあるが真似したくないのも事実だ。教育という名の有能な奴隷製造技術は生き残る術ではあるが今を全力で生きる術ではないぞ。


「『何事も逃げずに生きていれば何とかなる』とでも言うのかよ。おれたちのカラダは百年以上生きられるように設計されているんだぞ。なのに、戦場に八十年以上持っていかれるとか堪ったものじゃない」


「帝国兵士も元は人間の精子と卵子だよ。人間と違うところは人工子宮から産まれたこととか、結晶因子やら遺伝形質全般のリプログラミングをされていること。百年以上生きられるか生きられないかはその者の生きる技術次第だよ」


「だったら帝国の人間を強化してエンルル人のように戦ってもらおうではないか。それが対等な関係と言うものだ」


「いまごろ無駄さ。弱い人間たちを結晶で強化して戦場に向かわせるよりも、結晶人を造って使うほうが安上がりだよ。だから結晶人は今も造られている」


 ほほーん、論理的だねぇ。昔のお前なら、『知らなくてもいいことだ』とか言う冷たい奴だったのに。ほんと……お前は昔よりも冷たくなったよ。死んじゃったのかな? ん? いやいやお前はもともと死んだような奴だよな、こころが。


 と、おれは後頭部をかきむしりたい衝動を抑えて汚れた雑巾を握りしめた。


「おれもお前も高く造られた方だ、しかし割に合ってないだろ。おれは不良品だったがお前は予想を遥かに超える出来栄えだったからな。人間共が予想した成果以上の成果をもたらした今のお前はバカ殿どもの搾取対象だ」


 お前はこのボロ雑巾と同じだよ、という内なるおれの言葉は結晶に包んで置くとして。ニレンの成果と言うのは、<歴史の転換点>を第五世代が創ったというもの。そう転換点、戦争のために造られた結晶人が生みだせる転換点というのは、聖戦で神を殺すこと。どんな理由で神殺しを結晶人にさせるのか分からないが、聖戦や神殺しをすれば人間共の利益になるということは頭の弱い第一世代でも分かっている。


 うむ、搾士、搾取に溺れ、搾り取られているのが己の血と分からず策士に弄ばれる。なあニレン、お前の考えている事をおれに教えてくれよ。


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