不満な誕生日
<memory>//不満な誕生日
あれは二十になった日だ。
「やあアザミ、誕生日おめでとう」とニレン。暇なおれが会いに行ってやらないとお祝いすらしてくれないし誕生日プレゼントもくれない冷たいニレン君だ。
「おうおう、お誕生日おめでとうさん。んじゃ金くれ」
「いくら必要なんだ……」
はぁ、つまらねぇ。このおれが金目当てで来たと思っているのか――いやいや、貰えるんだったらありがたく、そしてもしよかったら力をくれ。
「お前は変わらず変人だ、そしてお前の施しを受けないおれも変人だ。なんださっきの『いくら必要なんだ』って、それでもアルブレヒトを率いたニレンか? おれはお前の仕事を邪魔しに来たんだぞ、責任を背負う者は怒りっぽくなるはずなのにお前はどうしてそこまでフラットなんだよ。おれが邪魔じゃないか? ん? 少しは休憩もいいぞ」
「そこまでフラットに見えるかい」
ほら見ろ、見え見えだぞ。パンティがチラリじゃなくてモロに見えているくらい品のないものだ。とてもじゃないが見るに堪えないし、失礼さをも感じてしまう。
下らないヒトは歳を取っても下らない。ニレン、お前は人間様の奴隷同然だ。
「ああ、よく見える。他人の失敗を怒ったこともなければ、腹から声を出したこともない。平坦すぎて洗濯板が凹凸の無いまな板みたいだ。その戦場だかアトリエだかで人間の赤を染みつかせた服を洗うんじゃなく捨てろ、それか台所で野菜や畜肉を料理してみてはどうかな」
「服は捨てているよ……あぁそっか、ぼくはアザミのように他のヒトと接することができないから台所で食材と接しろってことか。いい提案だけど、ぼくは寂しいかな」
心にも無いことを言うなよニレン、『他人に興味ない』って本心を言えばいいだけだろ。他人なんてそんなもんだ、自分には気を遣うだけ遣って他人は気にしなくていいぞ。おれを見てみろ、他人に気を遣っても気にもされない素晴らしい雨模様が広がっている。フラットだろ。
「気付けよ、お前は人間様に人間扱いされていないんだ。と言うか結晶人はヒトだが、人間様が定義する人間じゃないんだ。少しは考えてみろ、結晶人をカテゴリーで調べると<武器>は第一世代と第二世代、<兵器>は第三世代と第四世代、それで第五世代はカテゴリーエラーと<その他>の検索にもヒットしない。つまり、結晶人に生まれた以上は人間として扱われないんだよ。道具だ、その道具に『仕事しなくていい』って言うのはアトラス皇帝くらいだ」
「人間扱いされなくてもヒト扱いされるならどうでもいいよ。事実ぼくは人間が定義する人間じゃない――ヒトなんだよ。何より人間の営みを奪ったのは結晶人だ、能力が神々や神生国の神憑き人に負けず劣らずとなれば人間扱いされない理由にも頷ける」
ニレン、お前は何も分かってないな。結晶人はヒトだから苦労して勉強して仕事して資源にされているだろ。人間共は保健体育の勉強だけを熱心にやればいい、と言うよりそれだけを勉強していれば人生を楽できる、その他に人間が勉強しているんだったら気持ちよくなる薬の勉強くらいだぞ。おれが<ヒト>ではなく<人間>にカテゴリライズされていれば、現代人は穀潰しの取り扱いに苦労してないんだよ。




