竹取
やはりこの変女はニレンのファンというよりストーカーさんだったか。まさかとは思うが、自称大英雄の兄のおれを知って話しかけてきたのか。悪いがニレンについての情報料は高額なうえに、特に面白い情報なんて持っていないぞ。それに誰からおれのことを聴いた? 黄金期のメンバーの誰だ? あの野郎か、それともあの女郎か。
「欲しい? はっ、面白いことを言う女だな」
「面白い……何が面白いのよ」
「お前の言う彼はニレン・ユーサー・ペンドラゴン殿だぞ。リヴァイアサンを討伐した功績で結晶人初のサードネームとラストネームを与えられた、あのニレンだぞ? 分かっているのでしょうか。分かりますか? ニレンのストーカーさん」
「分かっているわよ。わたしは本気なんだからね」
分かっていたら諦めるのが普通なのだが、諦めが悪いようなので感心するよ。
「止めておいた方が傷つかずにすむぞ。ニレンを取り合う争いは良い顔や良いカラダだけじゃなく、高いIQやらEIやら経済力やら権力やらが必要になってくる。つまり、ニレンという男はお伽噺に出てくるお姫様みたいな奴なんだ」
「まるで《竹取物語》だね」
「ほう、今の時代で知っているとは驚きだ」
「女子は無理難題な貢物をせがんだ。その結果、上流の人間は偽物を作ったりクソだったりした、そんなことをしてでも男たちはひとりの女子をものにしたかった。女を求める男ならそうだけど、この時代の姫は男子。つまりニレンでさえXとYから出来ているのだから、XとXを見る時は顔と体しか見ないよ。女を見るときは顔と体が一番重要で、中身なんて物はこどもを作れる器官さえ正常なら他は空っぽでもいいんだよ。内臓はそれがないとダメだけど、性格とかの中身は全人類総じてゴミだから特に考えなくてもいいのよ。それが男子と女子ってものでしょ。〝きれいはきたない、きたないはきれい〟、あなたは違うの? わたしは現生人類から嫌われているけど、あなたは現生人類から嫌われない汚いだけの人類なの?」
おいおい、結晶人のくせにおれより過激な発言はやめてほしいな、おれのアイデンティティが完全燃焼してどこかの空に消えてしまうだろ。うむ、だがしかし現実は現実、ヒトという生き物の性格は満場一致で最悪だ。神の性格が悪いのだからヒトもまた最低最悪。この女の言ったことは必ずしも間違っているとは言えない――だが、
「どうでもいいがニレンを攻略するのは無理難題なんだよ。あいつの竹を取り合うなら、大都市のお姫様クラスと競争しなくちゃならないんだ、それも結晶人を超えるような美しい肉体と精神的な美を兼ね備えた女神みたいな処女じゃないとまず相手にされない」
「じゃあわたしの他にそんなヒトいないね。他の一族の子なら分からないでもないけど、このセカイには少し似ている魂だけしかないからね。弱者は弱者同士、強者は強者同士、中古は中古同士、新品は新品同士、女の子は女の子同士、男の子は男の子同士、アダムはイヴと、イヴはアダムと、ってね。つまりは彼の一族だね」
おぉなるほど、おれは頭を掻き毟っていいということだな。イライラを和らげるために頭をハゲ散らかしてストレス発散しろってことだな? そなたは天才であるな。確かにおれは無駄に歳を取ったからな、結晶人始まって以来の不毛地帯にして、ニレンの次に有名人扱いされるのも悪くないだろうな。よし! 明日から脱毛サロンに通うか。




