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愛の結晶

「帝国三大都市の一つ、瑠璃の歴史か……そういえば戦国時代があったのは瑠璃だったか。ま、帝国の一部となってしまえば戦国時代は終わりだ。そんな感じで完新世紀も終わっただろ」


「では問題です――瑠璃は終わったのに終わっていない今があるということは、瑠璃に何があったのでしょうか?」


 おれは非行少年じゃなかったから瑠璃の歴史くらい知っているぞ。瑠璃は島国、しかし帝国の一部となった今は国ではなく大都市に数えられている。帝国の三大都市というのは、かつて国だった都市よりも広い大都市、それがどうして国ではなく大都市になったのか。つまり――


「――遥か昔、瑠璃国はクリティアス帝国に戦争で負けた。だから今、刀を持った騎士は……騎士じゃなくて『武士』とか『侍』とか呼ばれていたっけな。それでそいつは落武者語となり、落武者は前に進むかのように刀を捨てて結晶を取ったんだ。侍と共に刀鍛冶は消え、瑠璃国の伝統も文化も薄れていった。それが今の第一先進都市瑠璃だ」


「そう、必然だったのよ。日のない国は何をしても勝てないからね」


 あぁ? 突然何を申しておるのだこの小娘は、切れ味最低なおれの結晶刀で叩き切ってくれようか。まあしかし、本物と言える刀無き今、刀打ちは継承できぬのであろう。


「それはいいとして、ここは綺麗なところだよね。結晶の都――まさに結晶から造られるは愛の結晶、愛の結晶から造られるは結晶の都だね」


「『愛の結晶』だと? いつの時代の流行語大賞だよ……古すぎて死語と言うより創世代冥王紀語だ。かなり有名な化石言葉らしいけどな」


「へー、そうなんだ。じゃあわたしの生まれたところは遅れているってことか……うーん、確かに今考えれば遅れていたり発展していたりするかも。言語的にもけものの共通の言語を破壊しようとするから最低な国だったのかもしれないね」


 と訳の分からないことを言う女。その女は続けて、


「じゃあさ、今の時代で、この国の、今年の流行語大賞は何なの?」とおれに訊いてくる。


 知らないとは驚きだ。この娘は情報弱者か……それにしては今時の女って感じだな、情報に興味ない系の今時系女子か。うむ、それにしても美人、しかしおれの好みじゃないし生理的に合わなそうから言葉を選ぶ理由はないな。


「んなこと決まってんだろ――流行語は今年も『ファック』だの『ファッキン』だの『ビッチ』だの『バカ』だの『死ね』だの『殺す』だの、そういう世間的に言われる汚い言葉が上位に入っている。その中でも大賞を飾ったのは『大英雄ニレン』って言葉だ」


 十六歳で神を殺して『英雄』という言葉が流行り、二十一歳で帝国領土を半分にまで広げて『大英雄』が流行る。次の流行語大賞は何年後のどんな言葉になるのやら……まあ、何百年先でも汚い言葉が上位を占めるのは確実だろう。


「大英雄ニレンか。彼も汚い言葉同様に死語にはならなそうだよね。おとなたちが次の世代へと汚い言葉を継承していくように、彼もまた継承されていく」


 おやおや、分かっているじゃねぇか。この女が言ったように、ニレンはクリティアス帝国だけでなく神生国の歴史にも名を刻み付けてしまった。それ故に大英雄ニレンは死なない。


「そういうことで、愛の結晶なんて言葉はニレンに使い方を聞いてくれ」


「うん、わたしには彼がいないとだめだからね。欲しくてたまらないの」


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