欲張りリジー
「最後の同期会になるかもしれないのにみんな冷たいよね」
冷たさもヒトのこころさ。誰もニレンのような冷たさを持っていないだけまだ良い方だ。
「最後かもしれないのに集まったのはおれとケントとアランとクルーの四人だ。ひとりで露店巡りしていた方が有意義な時間だったぞ」
「ガーデンオブギルガメシュに集まったんでしょ? わたしあそこの新作食べたかったのに」
そうだったのか。なら安心しろ、お前の分まで食っといたからな。新作メニューを食べた感想を述べよ? そりゃあ、いつも通り英雄になりきれる味だったぜ。
「悪い事をしたから埋め合わせはするつもりだったが……ニレンから貰った物で喜んでいるからおれからのプレゼントは必要ないだろ?」
「ええー、やだ。アザミからもプレゼント貰う」
この欲張りさんめ。金欠のおれから物を強請るとはどういうことだ、もっと甘えてくれなきゃプレゼントはやれないぞ。と、甘えているのは今も昔もおれの方だったな。
「金と相談しておくから待っていてくれ」
相談する相手がいないから銭に相談する、そうすれば解決も早いどころか一番信頼できる。ただ、プレゼントを約束してしまった以上は贈り物を考えないといけないし、相手が喜ぶ贈り物じゃないと埋め合わせにはならない。(いっそのことニレンに相談して解決しようか……)、とそんなおれの悩むこころも知らずにリジーはニコッと花のような笑顔で頷いた。
「じゃあ約束。ずっと待っているからね」
「約束しなくていいし、そんなに待たなくていいぞ。この場所に来ないニレンは約束をすぐに破る奴で、おれに至っては甲斐無しの結晶人で、約束守るお前は生真面目なお嬢ちゃんだ。な? 約束するだけの価値はないだろ」
待たせるのは悪いことだからな。戦場で死ぬ前に、こころが枯れる前に、おれは何かしらの答えを出すよ。それでおれは、今よりも惨めな負け犬になるのだろう。
「何でもいいけど、約束だから待つよ」
「ここでずっと待っていてもニレンは来ねぇだろ」
「もう、ニレンニレンって。わたしがいま話しているのはアザミだよ」
「そうだったな。ま、約束をできるだけ守るおれなわけだが」
おれが言うと、リジーは言い返すでもなくムスッと可愛い顔をした、そして次に夜空に大きな花火が打ち上れば、先ほどの可愛らしい表情はさらに可愛らしく輝いた。
彼女の多彩な表情を見られた今日のおれは、暴飲暴食で吐瀉物を撒き散らそうとも思わなくなり、彼女の視線の先にある花火の音と色と匂いを深く味わった。
かつての戦場の音を思い出しては自らを呪い、今は打ちあがる花火の音で自らを呪う。そしておれの発声こそが不協和音の呪いそのものだ。もっと上手く奏でられていたら、おれは今も昔もヒトを傷つけずにすむのにな。




