やる気のない朝の挨拶
おれが生まれたセカイに失敗はなかった。そして、唯一失敗したおれが生まれてから今日で二十二年。正直、自殺した方が楽なのだろう。
「クソみたいなセカイでも生き続けなくちゃいけないな。死ねればクソ楽だけど」
いつものことながらおれの朝の挨拶はアホらしいくらい素敵でエレガントだ。
まぁ生きているのも悪くないぞ、おれが失敗したところで悪いのはおれではないからな。全てはおれを造るのに失敗した奴らが悪いし、失敗した奴らが失敗を許容できる人間共だったわけで、おれは失敗作として生まれた。なぁ、おれは何も悪くないだろ?
一度失敗したら何もかも初めからやり直すのが鉄則だろうに。そう、例えば――今までの生活とは二転三転するくらいの惨めな生活をするとか、仕事を辞めて新しい職場に移るとか、そうしてくれなきゃ困るのだ。そうでなきゃ意識高いとは言えない、意識高い系の群れになってしまうだろう。ヒトの人生を滅茶苦茶にしておきながら、『欠陥品どころか放射性廃棄物を間違えて市場に並べてしまいました――けれど次は間違えないように努力します!』それで許されたらそいつの人生を滅茶苦茶にしてやりたくもなるだろう。
第五世代は結晶原石を精子と卵子に結合して調和させるまでは簡単らしいが、人工子宮で何事もなく成長して何事もなく生まれてくるのは奇跡、さらにそこから結晶化せずに成長するとなると神も知らない領域になる。
おれは成功作といえばそうだが、成長した現在は失敗作のレッテルを貼られて市場に並べられている。
(誕生日か……また一歩クソジジイに近づいたのに、頑固で柔軟な頭蓋の中は脂肪で変わらないのかよ。これではいつになっても農業を上手くならないな)
「刀鍛冶でもやるか」
と、やる気のない朝の挨拶はこれくらいにしておくとしよう。




