談笑
「お前らは何も分かっちゃいないな。皇帝様はバベルの塔建設再開を許可していないどころか、会議にも出席していないんだぞ。つまり、バベルの塔建設再開は金集めのための理由作りだ」
『出どこ不明情報だろ』
「これは信用していい情報だぞ。なんたっておれが皇帝様の寝室を覗き見た時の情報でな――皇帝様は寝室に引きこもって壁に何かを書き続けていたんだよ。あの状態じゃあ会議に出席できないどころか帝国民にも曝せない」
「信用ゼロだな。お前の情報はいつも噂話で面白話だ」とケント。
うんうん、と頷くアランとクルーもケントに同意らしい。少しはおれを信用した方がいいぞ?詐欺行為をして信用を奪う奴らとおれは違うんだよ、おれは不正アクセスをして信用できる情報を得て、それから信用を得るんだ。詐欺をして他人の信用を奪う方が良いって言うのか? なら好きにすればいいさ――極論、どちらの行為も信用されない未来が待っているのだから。
「そりゃあ面白いだろ、ニレンと神々の王の決闘だぞ? 死ぬ前に観戦できる可能性を掲示した今、人間共がバベルの塔の建設に投資しない理由は一つもない。結晶人も第一世代や第二世代やニレン以外はタダ働きなんてしないだろうからな」
「アザミ、大昔になぜ塔計画が凍結されたか忘れたのか……」
おれを誰だと思っている? おれはスパルタの結晶神と崇められるリジーさんに塔計画を覚えるまで刷り込まされた結晶人だぞ、忘れるはずないだろ。
「予てより塔計画は理論的に可能だった、しかしあの時代で神々の王に勝てるはずもないし、試しに挑んで負けたら帝国の存命に保証もない。悪魔や天使にすら勝てない大昔は結晶の土地に護られているしかなかった。来るべき日のために耐え忍ばなくてはならなかった」
「その来るべき日が近い。今は広大な結晶の土地に加えて大英雄ニレンがいる、敗北の文字は存在しない。建設再開は合理的だ、昔のように理由付けて金集めしなくていいからな」
これだから機械殺しのケントは機械よりも頭が固いんだよ。頭の自由度と機転を機械並みにしてどうする? どうせなら結晶人並みの自由度と機転にしろ。いや、それでは機械と同じだな。
「もっとよく考えてみろ。皇帝様は平和と幸福の象徴だった、なのに今の側近共の仕業でやらなくてもいい戦争が増えているだろ。帝国民に聖戦を観戦させて戦争をビジネスにしていやがる、それも現在進行形だ、二週間後に侵攻も再開するだろ。今の皇帝様の役割は傀儡であって、席があってもないような立場なんだよ。これはバベルの塔建設に裏があるね」
塔計画には裏の首謀者がいる! とでも発言したいことを本当に発言したら、おれは今以上に異常者扱いされるのでやめておこう。
「まあ、皇帝様の下にいる現在のファシストのバカ殿連中だったら、文字通りな考えをしているだろうな。そいつらが勝手に建設再開を発表したなら何かありそうな話だ」
ありそうだと? あるに決まっているだろ、人間が健気な生き物だとでも思っているのか? 今の上の連中――特にクリティアス帝国の首都エーテル在住の連中は、銃で撃たれたこともなけりゃあ、自分の力を信じて戦おうと思ったこともない腰抜けだぞ。そういう連中がのさばっているのに聖戦記が閉じられるはずねぇだろ。
「結晶人は戦うために生まれてきたが、現皇帝アトラス・レムリア・クリティアスはこう述べた――『わたしが生きている時代に何としても神の王を討ち、飽くなき聖戦を終わらせる。聖戦終結のためとはいえ、今も結晶人を利用しているわたしは信用できないだろう、もちろんこれからも信用しなくていい、侵攻作戦の参加に強制もしない。しかし未来のためにそなたたちの力がどうしても必要だ、だから力を貸してほしい』。歴史の転換点だ、分かるか? 結晶人の創造主である人間様が頭を下げて頼み込んだんだ。しかしこのままだと現クリティアスの血は失墜へ至り、聖戦終結を望むアトラス皇帝は存在しなかったことにされる。そうなれば聖戦は終わらないんだよ」
戦場を大舞台とする結晶人は戦争に利用されても構わない、だから結晶人一同はアトラス皇帝の頼みに意志表示しようと、各々が生み出した結晶の武器を天へと向けた。<天=神>へ挑むという意志を人間たちに見せた。




