表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/83

乾杯

「ああ……その通りだ。一ってのはニレン以外長く続かない仕事だ、つまりおれに向いている仕事は無い。これこそが真理」


 いつもお前たちのこころ無い発言を楽しませてもらっている、しかしそろそろ未経験歓迎の求人への応募を考えている者たちにおれの仕事を紹介してやりたい。おれは大歓迎するぞ、おれとふたりで交代制の十二時間勤務だ、やっと二十四時間年中無休から解放されるぜ――と、そんなことは夢のまた夢のお話なのだろう。


「ということで、おれが式典に来ないことくらい予想していただろ」


「ああ、お前が来ないのは誰もが予想していたから賭けにもならなかった」


「じゃあ、ここの店の代金はおれが払うとしよう。それで今回の事はチャラだ」


「ははっ、万年金欠のくせに何言ってんだよ」


「そうそう。それに代金はニレンが払ってくれている、来ないヒトの分も含めて」


 またかよ、ニレンは金だけ払って何をしたいんだ。猿山の大将だから交尾で忙しいのか? それとも餌をくれる人間様がいるから金は要らないってか? 余裕があってうらやましいぜ。


「金を払っているのに、同期会はしらばっくれかよ」(式典をしらばっくれたおれより(たち)悪いね)


「ニレンは目立つから仕方ないだろ。それに来ない奴の分の食材もおれたちの腹の中に入れられるんだ。昔のように遠慮することも品出しの回転が悪くなることもない」

とそこで丁度よく結晶女店員が酒や料理をテーブルに並べてきた。並べる並べる次々並べる、客席はガラガラだが、テーブルは見る見るうちに料理で一杯になってしまった。


 生きるために食うなら不味くても構わないのだが、現代の食事というのは嗜好品の類であり、美味くなければゴミと同然。生き物もゴミ同然なのは昔から変わっていないらしい。


 四人で完食できるのが嬉しいぜ、お前らの分まで食ってあの世に届けてやるよ。


「準備が整ったようなので、恒例の挨拶といこうか。な、アザミ」


 ああ、おれの出番だろうな。職を失った上に式典すら行かなかったおれだよな。罰ゲームにしては重大な役割を任せてくれるじゃねぇか。まあ、やってやろう。


「『おれたちは生きている、生きているだけで十分だ。そして、先に逝った同志たちの生き様は菊の花のようにおれたちの中で美しく咲き続けている。ヒトである以上は癒える痛みや癒えない痛みがカラダにもこころにも刻み付けられるだろう。激動の時代に生まれ落ち、共に育ち、共に学び、別れを告げることなく旅立つ。忘れないように己に刻み付けろ、おれたちは思い出を忘れず、何が何でも生き続ける』それじゃあ――」


『――乾杯!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ