乾杯
「ああ……その通りだ。一ってのはニレン以外長く続かない仕事だ、つまりおれに向いている仕事は無い。これこそが真理」
いつもお前たちのこころ無い発言を楽しませてもらっている、しかしそろそろ未経験歓迎の求人への応募を考えている者たちにおれの仕事を紹介してやりたい。おれは大歓迎するぞ、おれとふたりで交代制の十二時間勤務だ、やっと二十四時間年中無休から解放されるぜ――と、そんなことは夢のまた夢のお話なのだろう。
「ということで、おれが式典に来ないことくらい予想していただろ」
「ああ、お前が来ないのは誰もが予想していたから賭けにもならなかった」
「じゃあ、ここの店の代金はおれが払うとしよう。それで今回の事はチャラだ」
「ははっ、万年金欠のくせに何言ってんだよ」
「そうそう。それに代金はニレンが払ってくれている、来ないヒトの分も含めて」
またかよ、ニレンは金だけ払って何をしたいんだ。猿山の大将だから交尾で忙しいのか? それとも餌をくれる人間様がいるから金は要らないってか? 余裕があってうらやましいぜ。
「金を払っているのに、同期会はしらばっくれかよ」(式典をしらばっくれたおれより質悪いね)
「ニレンは目立つから仕方ないだろ。それに来ない奴の分の食材もおれたちの腹の中に入れられるんだ。昔のように遠慮することも品出しの回転が悪くなることもない」
とそこで丁度よく結晶女店員が酒や料理をテーブルに並べてきた。並べる並べる次々並べる、客席はガラガラだが、テーブルは見る見るうちに料理で一杯になってしまった。
生きるために食うなら不味くても構わないのだが、現代の食事というのは嗜好品の類であり、美味くなければゴミと同然。生き物もゴミ同然なのは昔から変わっていないらしい。
四人で完食できるのが嬉しいぜ、お前らの分まで食ってあの世に届けてやるよ。
「準備が整ったようなので、恒例の挨拶といこうか。な、アザミ」
ああ、おれの出番だろうな。職を失った上に式典すら行かなかったおれだよな。罰ゲームにしては重大な役割を任せてくれるじゃねぇか。まあ、やってやろう。
「『おれたちは生きている、生きているだけで十分だ。そして、先に逝った同志たちの生き様は菊の花のようにおれたちの中で美しく咲き続けている。ヒトである以上は癒える痛みや癒えない痛みがカラダにもこころにも刻み付けられるだろう。激動の時代に生まれ落ち、共に育ち、共に学び、別れを告げることなく旅立つ。忘れないように己に刻み付けろ、おれたちは思い出を忘れず、何が何でも生き続ける』それじゃあ――」
『――乾杯!』




