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結晶人は人間の夢を見るのか……2

「こんなところで墓守をしていては、神を超えるのも神狩りを超えるのも夢のまた夢のお話だよ。バベルの塔の頂上に立てる者が、こんなにも盲目的な意識を持っていては結晶人の恥曝しだ――アザミには何度も谷に落ちてもらって、その度に這い上がってもらわなくちゃ困る」


「そうそう、困った困った、鼻の利く犬のお巡りさんは困ってしまってガルルルル」


「ひとりで出来ることも出来ないならお手伝いしてあげようか? 子猫ちゃん」


 これ以上反撃を試みればニレンの思う壺なのは分かっている、しかし大嫌いなニレンに煽られてしまった以上は、おれの頭にカチンと鳴り響く音を無視するわけにはいかない。


「なんだと? 何にも聞こえねぇなぁ感情崩壊結晶人のニレン君よぉ」


「そうかい、じゃあ君は狩られてしまったんだよ。バベルの塔へ辿り着く前に自然淘汰されるなんて情けないにも程がある。龍虎で言うなら、アザミはまだまだ子猫ちゃんだね」


「あぁ? 女々しい奴がバベルの塔とか言うなよ、お前のバベルの塔に毛でも蓄えておけ!」


 感情を抑えられないおれはニレンの胸ぐらを掴んだ。ニレンに喧嘩で勝てるのかって? もちろん、万が一にでもニレンに勝てていたら、おれが土の上を転げていないだろう。


 と、ニレンに投げ飛ばされたおれは農地を転げまわった。ついでに口の中を転がりまわる土を吐き出すことに一生懸命になった。


「アザミにはその死んだ土の上がお似合いだね」


「このっ! ちっとは手加減しやがれ! 死んだらどうしてくれるんだよ!」


 そう騒げばニレンとおれ以外の登場人物も騒ぎたくなるらしく、


「――こらガキアザミ、もうやめなさい」とリジー。この頃のリジーはすでに手遅れなくらいのスパルタ教師だったし、今よりは可愛くないがかなり可愛かった。


「そうだぞ、ニレンに喧嘩を売るな。どうせ泣くことになるんだから」それからケント。こいつは昔から特徴のない美男だった。ああ、ムカつくぜ。


『アザミが泣くぞ! ほら泣くぞ! すぐ泣くぞ! 泣けや泣け!』と脇役たち。こいつらは特になしだ。背景役にしてやってもいいが、美しい背景が台無しになってしまうので忘れてくれ。


 さて、登場人物の紹介はここまでにしておいて。


 おれたちの喧嘩を止めるのは構わないが、こいつらはどうしていつもおれにだけ注意するんだよ。この結晶人のクソガキどもは喧嘩両成敗って言葉を知らねぇのか。それにおれが泣くのはニレンに負けた時だけだぞ。と大声で発言したいおれは涙目になりながら、精一杯の眼力でニレン陣営を睨みつけていた。


(『この時からおれの陣営はおれひとり、噛んだら離さない子猫一匹の躾にしては理不尽極まりない躾ではないかな』と、今のおれは思う)


「おれは泣かねぇし負けねぇよ!」


「うん、わかったよ。今回は引き分けにしておこう」


「……おう、わかればいいんだよ。この勝負はいずれおれの勝利で幕を閉じるんだからな」


 そんな感じでニレンの提案におれがあっさり乗れば、先ほどの熱気は冷気へと変わり、みんなからの冷たい視線がおれに注がれていた。それでも気にしないのがおれさ。『お前は負けただろ』だと? ニレンが『引き分け』って言うんだからおれは負けていない。


「勝つか負けるか分からないけど、いずれは勝利してもらわないとね」


「今のうちに沢山の夢を見ておけよ、ニレン君」勝った気でいるおれは鼻が高そうな喋り方だ。


「残念だけど、ぼくは人間の夢も結晶人の夢も見ないさ」


 と、ニレンは訳の分からないことを言って、手に取った種芋を死した土地へと植えていったとさ…………そこから先のお話は、芋の芽が土から出るまで静かなお話だ。


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