<裏1章 魔王誕生編 第2話>
「君は?」
尋ねられると魔導師は、
「魔導師でラビと申し、魔王様に忠誠を誓う者でございます。これからお休みになる場所を家臣がご案内しますのでこちらへお進みください。」
と先に待ち同じく頭を垂れている家臣の方を指差した。
人間の子供程の大きさの魔王はゆっくりと歩き、魔導師が指を刺した方向へ歩いていった。
それを見ながら魔導師は震えていた。
「今世の魔王様の魔力はなんと脆弱なのだ。最弱のモンスターよりも弱く、まるで弱き人間の様ではないか……歴代の中でも最弱だろう。これでは、人間を滅ぼす事など夢のまた夢……なんとかせねば。」
モンスターは魔王の強さに関わらず、魔王に逆らう事が出来ない。
先代の魔王が勇者に倒され、人類の勢力が強まっている現代、モンスターの勢力を復活させる為に魔王の力が弱いのは死活問題だった。
魔導師のラビはブツブツと独り言を呟きながら霧がはれ枯れ果てた沼に目をやると、1人の人間が倒れ込んでいた。
「これは……どういう事だ?何故人間が?贄は魔王様の復活と共に消滅する筈……」
魔導師ラビが人間に近づくと、銀色の髪の毛の女性が気を失っており、微かに息があった。
「魔王様と何か関係があるやも知れぬな……」
魔導師ラビが人間に向かって持っていた杖を振りかざすと、女性は宙に浮いた。
そして、魔導師と女性は深い森の奥に消えていった。