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「第八話」世界樹

魔法が使えない勇者の血縁と、同じく魔法がスカンピンの元・魔神がタッグを組んだ。旅の目的は「世界樹」と語る魔神・リュブリナであったが、一体世界樹に何があるというのか?

「ワシ等の旅の目標はズバリ、世界樹に行くこと。それができれば、ワシの願いはかなう。」


「世界樹?世界樹ってあの———」


「知っとるのか?世界樹とはマナの根源。すべての魔力は世界樹から生み出され、大地へと供給された後にワシらのもとに分配される。」


世界樹。この世界にいるならだれもが教科書の一ページ目で習うその単語は、ただ世界一デカい木、というわけではない。すべてのマナの根源。リュブリナが言ったことに間違いはない。だが、ここで一つ疑問が浮かんだ。


「世界樹まで行って、何になるんだ?そもそも世界樹ってのは場所が公表されていない、禁忌の土地にあるらしいじゃないか。場所がわからない以上、俺たちはどうしようもできない。そうだろう?」


「いいや、場所ならわかる。なんてったって、世界樹は300年以上前にワシのご先祖様が植えた木だからな。」


???こいつの先祖が植えた木?確かに、コイツは魔神で、人類との戦争をつい300年前まで繰り広げてきた人類にとっての厄災に違いない。魔神が植えた、魔力の成る木。確かに違和感はないかもしれないな。


「そうなのか・・・世界樹を植えたのがお前の先祖なら、確かに魔力を供給する不思議な木というのも納得がいくような気がする。だが、世界樹に行く理由がいまいちわからん。世界樹に行ったところで俺たちに何か利益がもたらされるのか?」


その問いに答える前に、リュブリナは少し驚いたような顔をして、軽くため息をついた。この時代のモンは・・・と言ったか言わないか、あきれたような顔をして言った。


「この時代のモンは・・・何も知らんようじゃのォ?」


いうんかい!そしてうぜぇ!絶妙に歪めた顎がうぜぇ!思わず暴力に訴える前にリュブリナが発言した。


「世界樹にはな、特別な力がある。ワシ等が世界樹による、''能力''を独占したために、人類との戦争が勃発した、そういう見方もできるだろうな。」


300年前に人類の時代を開いた戦争。その原因が世界樹にあったっていうのか。それに、そんな重大な能力のことに関して、少なくとも俺は学んでいない。


「一体、どんな能力なんだ?」


「———死者をよみがえらせる能力さ。どうせ人類の一部がその力を使って悪行三昧している。だから、それを止めに行くのさ。それがこの旅の目的ってわけだ。」


頭の中が真っ白になった。死者蘇生なんて、禁忌中の禁忌ではないのか。世界樹の力を人類が悪用している?どうしてリュブリナはそう思ったのだろう。


「死者をよみがえらせて、無限に戦わせる。生き返らせたニンゲンは思い通りに動かすことができるからな。これが300年前の戦争における神々が使った戦術なんだよ。今考えてみると、とんでもないことしてたな。ワシ等。」


リュブリナは俺の考えていることが分かったかのように話をしてくれた。過去に神々が犯した失敗を、人類が再び繰り返してもおかしくない。しかし、少しだけ驚いたのは、神々の立場にいたリュブリナの語り口が、過去の武勇伝を語るかのような威勢のいい語り口ではなく、そこにあったのはただただ、''反省''の念であったことだ。あまり多くは話さなかったが、その短い説明からいかに300年前の戦争が血で血を洗い続けるものであったのか、想像もつかない。


「でも、それでお前たちは負けたんだろう?結局お前たちのその戦術は間違っていた。———って、なんか、すまん。」


「謝ることじゃない。ワシ等、と言っても一部の過激派がそのような''人海戦術''に出たのは、穏健派の反感を買って、結局神々内部でも分裂の要因となってしまったわけだしな。そして、その地獄のような戦術を止めるために立ち上がったのが、勇者一行だった。」


「ほう。俺のご先祖様か。」


そうだ、と言って軽く頷いたリュブリナは、どこかほほ笑んでいるように見えた。彼女にとって勇者との戦いの記憶は、実は苦々しいものでもないのかもしれない。


「そう。勇者一行が世界樹を管理していたやつらをぶちのめして、世界樹を人類のものとした。これで実質戦争は終結、勇者はその時に''勇者''となった。———ま、お前がすごいわけじゃないから、その照れた顔をやめろ!!!」


デレデレしていたレンの顔をひっぱたいて、リュブリナの話は終わった。世界樹に行く意味、それがわかった以上はもうとどまる気はない。リュブリナの表情もどこかすがすがしかった。


「じゃ、行くか!」


リュブリナは座っていた切り株から腰を上げると、先だってスタスタと歩き始めた。


「そもそも、世界樹までどうやって行く気なんだ?場所がわかってもここがどこかもわからない上に、300年前と今じゃ、道路だって変わっているはずだ。」


「しるか!とりあえず、仲間を探すぞ!町が見えるまで歩く!」


仲間を探すといわれても・・・って感じではあるが、リュブリナの歩き方に迷いは感じられない。彼女は自分の信じたことに対して、迷いの感情を持たないのだろう。




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