「第三話」とりあえず、服を脱げ!
前回
石像から突然現れた少女の魔法によって一難を逃れた主人公、レン。
なぜかその少女に突然みぐるみをはがされて————?
「とりあえず、服を脱げ!!」
目の前の痴女に言われるがままに俺はみぐるみをはがされようとしていた。こうなったいきさつも知らぬまま、半裸となった俺は目頭が熱くなって、何もできないでいた。
「おい!とりあえず説明が先だろう!!何を以て俺の裸が見たいんだよ!!」
コイツの言葉で生きる希望のようなものを取り戻した俺であったのだが、コイツのせいでまた、男として大切な何かを失おうとしている。
「ああ、そんなことか、それはな、お前がワシの封印を解いたことに問題がある。」
「フウイン?お前が石像の状態で封印されていたことか。そういえば、えらく丁重に祀られていたな。一体、お前は何者なんだ?」
ちょうど祠の出口に差し掛かろうとしていた時、少女が足を止めた。くるりとこちらを振り返る。
「お前、じゃない。ワシの名前はリュブリナだ。そして、ワシが石像の状態で封印されたのが、かなり前のことになる。そして、ワシの封印が解けた原因がお前の血筋にあるはずなんだ。」
「リュブリナ?なんかどっかで聞いたことあるような・・・?」
リュブリナと名乗る少女の瞳が鈍く輝いた。はたして、目の前の少女が封印されていたというが、そんなことがあり得るのか?少なくとも俺の頭の中には人間を石像にしてしまうような封印魔法は存在しない。
「俺の血筋?俺の名前はレン、そして母親は俺を生んだ時に死んだし、父親は冒険者で、俺が幼い時から家にいないんだ。だから俺にどんな血筋が通っているかも知らない。それに、悪いけど俺みたいな魔法の不適合者に封印を解くことができるとも思わない。」
「ハッ!そんなことはどうだっていい。原因がお前の血筋にあるかどうかなど、服を脱げばすぐにわかる!!脱げ!!」
スッポンポンにされてしまった。女の子に服を脱がされるという新感覚の体験にレンの新境地が切り開かれてしまいかねなかったが、さすがに理性のブレーキが働いてくれた。
「そして、見たいのはココだ。」
リュブリナが見たのは、上腕のあたり。
いや、スッポンポンにする意味ないだろうが!!
「あれ・・・おかしいな、ワシが探している奴らは全員ココに独自の模様がついていたんだが・・・すまん、もう服着ていいぞ」
「おいおいおい!ちょっと待て!俺の新境地を開発しようとしているのか知らんが、スッポンポンにされて勝手に勘違いしないでもらってもいいか???」
「シンキョーチ?何を言ってるんだお前は?」
一人で顎に手を当てて考え始めようとしていたリュブリナを全裸で止めにかかる。絵面が地獄だが、それも元々こいつのせいだし仕方がない。それに脱がせた当の本人が全く顔を赤らめることもなくしら~っとしているのがちょっと腹立つ。
「魔法の不適合者、か。お前みたいな者が、か?」
ふてくされながら服をしぶしぶ着ていると、こちらをじろじろと見つめながらリュブリナが話しかけてきた。
「ああ・・・そうだよ。冒険者の父の息子だったけど、魔法は人並み以下だった。だから一般兵として兵士に志願したんだけど・・・このざまだ。」
血だらけの服を見ながら、リュブリナは話を黙って聞いていた。凛とした横顔を月明りが照らしている。
「ふむ・・・それでは困るな。ワシが。」
腰かけていた岩から立ち上がると、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
「魔法、いや、この世界は時を経て大きく変わったように思われる。」
こちらの目をじっと覗き込み、丁寧な口調で話し始めた。
「例えば先ほどのゴキブリ———あの魔物は昔と見た目は何も変わっていない。しかし、内部のコアの構造が微妙に変わっていた。それに爪の長さほど、コアが大きくなっていた。当時なら有効な魔法も、コアの構造が変わっては全く通用しなくなってしまう。」
だからあの爺さんは、それを見抜けずに死んだのか。いや、そもそも人間にそれを見抜けるものなのか?
「・・・おい、神代が終わって何年になる?」
「シンダイ?神の時代の話か?今は革命歴303年だから・・・300年ってところか?」
それを聞いてリュブリナの顔は何とも言えないような、悲しそうな顔をした。理由を聞くようなことはする必要も感じないのでしなかったが、彼女の中には何か思うところがあるのだろう。
「300年・・・ワシが封印されて300年ということか。そりゃあ世界も変わる。人の世で魔獣も変化も迫られたのか。」
「ちょっと待て、封印されて300年?それじゃあ、お前は———」
リュブリナ。学校の授業で誰もが一度は耳にする名前の一人。
「ああ、リュブリナというのは、300年前、お前たち人類に立ちふさがった最後の魔神の一人———」
これまでのすべてが繋がった気がした。300年の封印から解き放たれてすぐに、変異していた魔物に対応し、的確な魔法で撃退する機転の利かせ方や、違和感を覚えるほど人間のカラダに興味を示さない態度など———。
あれ、ひょっとして俺に魅力がないだけ?