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【第十四話】戦闘開始

ウェスが''家族''といった魔物たちを虐殺した人間たちを倒そうと、俺たちは敵の拠点までたどり着いた。しかし、要塞は武装化されており、昼間近づけばハチの巣にされてしまう。ウェスの「何とかする」という言葉に頼って要塞への攻撃を開始するものの、コイツの魔法自体が謎に包まれているんだよなぁ・・・。

「しかし・・・要塞に近づいたところでワシ等が中の奴ら全員ぶっ殺すことができる保証なんてどこにもないような気もするが・・・」


「黙ってろ。あんな奴らボク一人でも片づけられる。」


「おー・・・格好いいこって。レン、ワシ等はなんもすることないんだってさ。」


リュブリナが両手の掌を上にあげて軽くため息をついた。


「いや、やることならあるぞ。」


俺の方をぎょっとして振り向いたリュブリナ。俺が何を言い出すのか怪訝にうかがっている。


「要塞ってのは一つ一つに連絡装置が付いている。攻撃をすぐに本部に伝えるための、スイッチみたいなもんだ。それが押されたらここに大増援部隊が来て復讐どころじゃなくなっちまうし、捕まったら、良くて一生牢屋の中、悪くて絞首刑だ。それだけは避けないとな。」


軍隊にいたころに聞いただけの知識だが、全滅という最悪の事態だけは避けなければいけない。


「だから、そのスイッチが押されないようにスイッチがある指令室を抑える必要がある。手分けしてそのスイッチを探すことが必要だ。」


「お、おおー・・・。貴様、初めてまともなことを言ったな、レンよ。」


リュブリナが感心したようにこちらをじろじろ見てくる。ウェスはそのことを知らなかったのか、小さく咳払いしてから、


「・・・ならば、そのスイッチを探す。もし杞憂ならばそれはそれで構わない。———1つ聞くが、敵のリーダーのような、年配の身長の高い男を見たか?」


あいつだ!瞬時に分かった。俺とリュブリナを部下を使って取り押さえ、気絶させた男。正直強さ自体は未知数だったが、魔物に対して慈悲も何も見せずに償却魔法をかけ続けていたことから、冷酷残忍であることは簡単に想像がついた。


「ああ、見たことあるぞ。」


先に答えたのはリュブリナであった。彼女も苦い過去を思い出したのか、軽く下唇をかんだ。


「・・・そうか。なら話は早い。あいつは、あいつだけは、俺がこの手で殺す。どのみち、火属性の魔法の達人と聞いている。お前らにかなうような相手じゃない。」


なるほど。そういうことなら仕方がない。俺たちはそのほかの雑魚を相手にしよう———。


「ふざけるな!あいつにいいようにされておいてこのまま引き下がれるかァ!!」


ですよねぇ・・・リュブリナの中での闘争心は一つも消えていなかった。それも仕方のないことなのかもしれないが。


「家族同然のあいつらを燃やし殺した奴のことは、ボクが絶対に仕留める。お前たちはそのスイッチとやらを探せ。———よろしく頼む。」


グッと差し出した拳を俺とリュブリナの胸に当てた。下を向いていたので表情自体はつかめなかったものの、ウェスが自分から感情を行動に表すのが初めてのことだったので、驚いた。


「お、おう!ウェス!ワシたちに任せておけ!!」


これにはリュブリナも幾分か戸惑ったようにウェスに返事を返した。彼女にとっては負けっぱなしも嫌なのであろうが、それ以上に''仲間''だと思っている人間に頼られたことがうれしいのかもしれない。


ウェスが次に顔をあげた瞬間、表情を切り替えた。それは、俺たちが初めて彼と出会った時のような残忍で、暗い表情だった。夜はもうすっかり更けていたことにようやく気が付いた。スポットライトの明かりで全く分からなかったのだ。


ウェスもそのことに気が付いたのか、俺たちに最後の覚悟を決めろ、そう言ったのちに、


「次にあのスポットライトが向こうを向いた瞬間に要塞に向かって走るぞ・・・いまだ!!」


しばらくの静寂を切り裂いてウェスが小さく叫んだ。茂みから飛び出した俺たちは、要塞に向かって木が一本も生えていない丘を必死で走って上った。ウェスは信じられないくらい早かった。


「はぁ・・・はぁ・・・何とか追いついたけど、これは・・・」


目の前の城壁は見上げるほどの高さで、これを人間がのぼることができるのかどうかは疑問が残るところだ。周りを見渡してみると、人が一列になってようやく入れる大きさの裏口があることが何とか分かった。とりあえずそこから入ろうと試みるものの、こちらにスポットが当たるほうが向こうにたどり着くよりも早いだろう。


「ウェスゥゥゥ!!これまずいよなぁ、なァ?」


ウェスの胸倉をリュブリナがつかんでは振り回している。


「———黙れ、状況がわかっていないのかバカが。三秒以内にその手を離さなかったらその手を斬る。」


光の速さで手をのけたリュブリナを横目に、ウェスが刀を抜こうとしている右手に、魔力の蓄積を始めた。そして、刀を抜くと同時にウェスが魔力を解き放った!


絶界マジック・パルス


次の瞬間、要塞を囲むすべての照明が消えた。そうなったことを確認すると、ウェスは扉に向かう———そう思った次の瞬間。


「どけ、斬る。」


そういい放って要塞の分厚い壁に一太刀浴びせた。石壁は、まるで弾丸をぶち込まれて飛び出した脳天のように柔らかく、そしてもろく崩れ落ち、要塞への進入路が確保された。


「あー・・・そういう感じなのか。俺、もうちょっとお前は理性的なタイプだと思ってたわ。」


「面白くなってきたな!レン!とっとと侵入して奴らをブッ殺す!」


リュブリナは先ほどの光景に度肝を抜かれることさえもなく、逆に戦闘本能を刺激されてしまったようだ。もちろん、俺たちがやるべきことなど忘れてしまっている。


要塞の周りにある、物見やぐらのようなところから兵士がぞろぞろ駆けつけてきている。しかし、明りがないので人数を把握することができない。


月明りでようやく薄暗い要塞の中身が把握できるようになってきた。中は30メートル四方の正方形になっており、四方に兵士が上って魔導砲をブッ放すための台座がある。それと、状況に対して対処を始めた兵士が目の前に30人ほど群がっていた。


「・・・ボクから君たちクソ野郎に忠告しておこう。」


暗すぎて、ウェスの表情は上手く読み取ることができなかった。しかし、これだけはわかる。

———こいつ、ブチギレている。


「刃物を持ったケダモノには、近づかない方がいい。」

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