「第一話」銃弾よりもコワイもの
始めまして、よろしくお願いします!
週に1・2回投稿できればいいかな~くらいの緩いテンションで書いていきます
平均寿命五秒の戦場で生まれた男は失望していた。
三秒前まで話していた男は魔法弾に撃たれて、死んだ。気づけば男は一目散に戦場を後にして走り続けていた。
そう、俺は生まれ変わったんだ、このクソみたいな世界から解き放たれたただ一人きりの、ニンゲンだ。
気が付けばかなりの距離を進んできた。半日ほど歩いただろうか、息が切れていることには腰を下ろしてから気が付いた。あたりを見渡してみると、祠のような、古めかしい、されど荘厳な建物と対面していた。苔むした匂いが鼻をつく。嫌な臭いであったが、それ以上に男には死体の腐ったゴミカスな臭いが頭に残って、ならない。
「———誰だ?」
奥の暗がりから人がのそりと現れた。よくは見えないが、腰が曲がっていることから老体であることが推察される。
「あ、あの、この近くに住んでいる者なのですが、道に迷ってしまって————」
「この近くに住んでいる?ハッ!笑わせる。お前はここがどこだかわかっているのか?」
自分の言っていることの矛盾に発言してから気づいた。この近くに住んでいる奴が迷うわけないか、バカが。
「いや、わかるぞ、お前がどこから来たのか。」
「この拭えない血液のにおい。お前、逃亡兵だろう?ボロッボロの顔を見ても、わかる」
わかられては仕方がない。ここはどうやって切り抜けるのが正解なのだろうか?
「いや、何も言わなくていい。戦場なんてこの世の地獄だ。死者の数を競って、何が楽しいのか。知っているか?魔法弾に当たって死ぬことは、溺死することの八倍、苦しい。」
男は驚くとともに、少しほっとした。このご老人は彼に理解を示してくれている。男は戦場で死ぬことを美学として叩き込まれた。その「美学」をこのご老人は「地獄」と揶揄したのだ。それは男にとって初めての経験であった。
「だが、これも知っているか?」
いうが先か、遠くの方から何やら自然のものではない音が聞こえる。人間のものではない。
————魔獣のものだ。
何度聞いてもなれることができない魔獣のうめき声。たとえるなら、殺しにかかる人間を前にしたゴキブリがカサカサとこちらにはいずり寄ってくるときのような、不快な音。
何が言いたいかって、音とリンクするその「姿」に恐怖を覚えずにはいられないのだ。
「逃亡兵が持つその歪んだ精神と、腐った死臭が、魔物を引き寄せ、そいつは想像を絶する死に方をする」
はっと気づいて目線を上げると、老人の目が自分の顔の真ん前にあった。ぎょっとしてのけぞると、全身を見ることができたが、かなり大きい。俺のことを横目に通り過ぎると、杖を携えて祠の入り口に立った。
「だが、運がよかったな。私はお前を理解することができる。それに久方ぶりに人と会えて、うれしいのでな。」
気が付けば日は沈み、先ほどまで太陽に温められていた不気味な静寂が二人を包み込んだ。刹那、ぎらついた目が一つ、二つ・・・。
「それでは、ボロッボロの弱き男よ。見ておけよ、これが戦場で鍛えられてきた男の魔術だ。」
杖の先端を、光が包み込んだ・・・!
「ファントム・ブレイク」
取り囲む魔獣たちを一匹余さず、ご老人の魔法で包み込んだ!よし!これで助かった・・・!
・・・何も起こらない。本当に何も起こらない。一つ目で、ゴキブリのような六本の不規則に動く細長い足はさらに過敏に反応し始めた。
「・・・」
「・・・」
クルッ。クソ老人はこっちを振り返って一言。
「効かないんだけど・・・」
背後から、よだれだらだらの魔物が老人の顔の二倍はあるデッカイデッカイ口をパッカーーーンと開けて、老人の胸から上を飲み込んだ。食いちぎった「半分」から腸がビローンと飛び出した。
「オッサーーーーーーン!!!!」
と、言いながら俺は祠の奥へ、奥へと走り出していた。なんだあいつは、いや、考えている暇はない。今は生きることを考えないとヤバイ、ヤバイ、ヤバイ——。
祠の中を見る余裕などなかったが、あたりは夜の割には明るかったので転ばずに進むことができた。
———あ、ゴキブリがいる・・・
かわいいな!おい!もう!あんなの見せられたら全然かわいく見える!!
そして、最悪の事態に直面した・・・
行き止まり!終わり!死亡!!
後ろを見たくはないんだけど・・・振り返るとそこには
「@@@@@@@@@」
なんてうか、キモイ姿、キモイ目。距離にして70メートルといったところか。
「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
必死に周りから解決策を探す。生きているものはいない。後ろには高貴そうな身分の石像が一つ。こいつを使って戦うか?いや、無謀が過ぎる。
とりあえず石像に上ろう!ちょっとでも上へ!上へ!
そう思って、石像が差し伸べる右腕にしっかりとつかまった。石のひんやりとした感覚が俺の焦ってびしょびしょになった手のひらとがっしりとかみ合った!
「ヌメッケェェェ!!!!!!!」
バリィィィィンンンンン!!!
という超デカい音と共に石像が砕け、中からは、二重幅の大きい赤い目をした可愛らしい女の子が、キレイな赤い髪をさらりとなびかせて抜け出てきた。眉間の上あたりに小さな角が生えており、凛とした姿がこの汚らしい祠には全く似合わない。
「ヌメリがある!その手汗!お前、死にかけてるんけ????」
「死にかけてるんですけどどおおおおお!!!」
コイツにすがるしか俺の生きる道はない!
何でかって?俺の使うことのできる魔法は世界で最弱だからだ!
To be continued...
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永久機関ノーベル賞!!!