5/17
兎は残る 2
何が、起こった?
何も、わからない。
身体が、熱い。
腕が、足が、動かない。
あの瞬間、何が起こった?
車が、突っ込んできた?
信号は、青だった。
そんなことは、ありえない。
ありえるはずがない。
事故なんていう不吉な文字が頭に過ぎる。
小説とか、漫画とかの話で。
自分には、無縁なもののはずだ。
そうである、はずだった。
母さんは?
父さんは?
舞は?
「みん な?」
信じられないほどかすれた声が俺の喉から出る。
かろうじて、目を開けると。
目の前にあったのは、炎と鉄に押しつぶされた、家族だったものだけだった。