40話
イフは手足がだらりと力無く落ち、致命傷である事が明白だった。
「ふむ、こんなものか。」
ホルテはイフに刺した剣を振ると、イフが飛んでいく。
イフの顔は髪の毛が邪魔をして見ることは叶わないがピクリとも動かない。
「………。」
エストは冷静になれと自身を言い聞かせる。
ここで冷静にならなければイフと同じように一瞬で死ぬ。
エストは深呼吸をすると頭の中がクリアになっていき、ホルテの分析をする。
先程のスキルは1回しか見た事が無いが確かに魔物のスキルだった。
認識を阻害するスキル。
使っていた魔物はそのスキルを生存に特化していた為に危険性は無かった。
しかし、英雄がそのスキルをひとたび使えば気がついた頃には斬られていてもおかしくは無い。
現にイフはそうして殺された。
そして問題は……。
「問題は俺が何個のスキルを持っているか?だろう。」
頭の中を覗かれているようで気味が悪い。
これもスキルなのかはわからない。
「俺は冒険者ギルドのマスターだ。なんでそのポジションに就いたのか……これが答えだ。」
冒険者はダンジョンに潜って人類に有益なモノを探す職業である。
その役割は人間にとって貴重な役割だ。
ホルテは剣を地面に刺し、手を握ったり開いたりする。
すると突然ホルテの姿が消え、とてつもない威圧感がエストを襲う。
なんとかエストは後ろに飛び、回避を試みるとエストがいた場所には巨大な穴が出来ていた。
「………避けたか。」
その巨大な穴の中心には火が燃え盛り、ホルテの足にはエスト自身がよく使っている《加速》のスキルが見て取れる。
どうやら複数のスキルを同時に使う事が出来るらしい。それは絶望と言う名の虚無感である。
火炎が使えると言うことはその他の雷や氷、水までも使えると見て間違いないだろう。
そんな相手にどう勝てと言うのか。
ホルテは急に森の方へ振り向く。
「………デイニー、アリア。警戒しろ。」
もう既にホルテの眼にエストはいない。
その警戒の全ては1つの場所へと注がれていた。
やがてその場所から1人の少女が出てくる。
眼が赤色の宝石の様で、髪色はシルクの様に輝いている。
「私のお家で何をしているの?」




