39話
「イフ!援護頼む!」
イフは黙って頷くと近くの森へ入り、姿と気配を消した。
エストは緊張した面持ちで剣を構える。
その顔には英雄が1人で戦う事の安心感と少しばかりの自信が浮かんでいた。
「いい顔だ。俺も真面目にやらなきゃデイニーに殺されるんでな。」
ホルテはそれだけ言うと鞘から剣を抜きはなって地面へと刺した。
すると剣が少しばかり発光する。
再び剣を手に取り、練習だと言わんばかりにから打ちすると空気が切り裂かれる音がする。
エストは嫌な汗をかきながら改めてホルテを観察していた。
ホルテは右腕にだらりと剣を持ち、自然な形で構えている。
通常であればそれが構えだと気が付かないだろう。
しかしホルテの威圧感と殺気はそれが正規の構えであると示してくる。
ホルテはイフの事を信じながらホルテへと詰め寄り、左から縦に振り下げる。
すると右体スレスレの場所を矢が通過し、ホルテの肩を射抜こうとするが、ホルテは左足を下げ、体だけで矢を避け、エストの剣も受け流した。
エストも受け流されることは承知の上であったのでそのまま右下から切り上げる。
しかしこの攻撃もホルテが1歩下がる事で空振りに終わる。
エストは剣の重さに少し重心を崩し、次の攻撃に行けない所をホルテは再び1歩踏み込み、横切りをしようとするがイフが援護をする事でなんとか攻撃を貰わずにすむ。
「…………。」
エストは少しの攻防で汗をかいていたが、ホルテは汗1つも流さずに涼し気な顔をしていた。
イフの援護が無ければもう既に勝負は着いていたと言ってもいい。
ホルテが少し笑うと明後日の方向を突然見つめる。
「いい気配の消し方と援護だ。」
どうやらそちらにイフがいるらしい。
イフのスキルは《隠密》
絶対にいる場所はわからないはずなのに見つけていた。
しかしながらこの英雄は真面目にはやっていると思うが、本気ではやっていない。
その証明にスキルを使っていない……。
いや?剣が発光していた、あれがスキルなのか?
どんな効果のスキルをホルテが持っているのかわからないがろくでもないスキルなのは間違いなさそうだと考える。
「これなら少しはもつかもな。」
ホルテはそれだけ言うと再び剣をだらりと下げる。
すると驚くべき事にホルテがそこに存在している、見えているはずなのに……脳がそこにはいないと勘違いをしていた。
「これは……魔物のスキル……?イフ!?気をつけろ!こいつは!」
ホルテの影が消えると遠くに移動し、剣はイフの体を貫通していた。




