38話
2人の英雄が一切の容赦無く剣を振るっていた。
1号うち合えば地面が抉れ、2号うち合えば剣圧だけで木が折れた。
最早デイニーとホルテはエストとイフを敵として認識していない。
しかしながら英雄同士の戦いは2人に甚大な被害を及ぼしていた。
「逃げるのはどうだ!?」
「何処に逃げるのよ!?そもそもアレから目を離した瞬間に私たちがミンチになっておしまいよ!?」
今でも必死に逃げ回っているエストとイフだがそのうち運悪く当たったら死ぬことは目に見えていた。
この時に取れる行動は2つしかなかった。
逃げるか、戦うか。
戦うと言ってもスキをついて攻撃するだけだ。
しかも一撃で殺さなければヘイトがこちらへ向く。
そうなれば殺される。
「やるしかねぇよ!いくぞイフ!」
「………わかった!」
デイニーが思いっきりホルテへと攻撃した一瞬を狙う為、出来るだけ近づく。
幸いな事にイフは弓を使う為、援護は一流だった。
「イフ!」
待ち望んだ瞬間、エストはイフへと声がけをする。
しかし、ホルテと一瞬目が合い、足が竦むがここで行かなければ勝ちはない。
「う、ぉぉぉおおお!」
イフが牽制として少し右へ打つことを確認したエストは左に避けることを想定して少し左へと剣を走らせる。
盛大な金属音が鳴り響き、エストの手から剣が吹き飛んだ。
「だれも助けてくれなんてお願いしてないんだけど?」
デイニーは吹き飛んだエストに目もくれずにホルテへ悪態を吐いた。
「そう言うな。どうだ?ここは邪魔者を排除してから白黒ハッキリさせるってのは。」
「こんなモノが邪魔者?」
「ああ、俺の気が散ってしょうがねぇ。」
「そうかしら?ならいいわよ。」
エストとイフはやっと己の立場を理解した。
想定しうる最悪の方向へ歩んでいた事を後悔する。
「でもこんなのにワタクシ達が2人戦ったらイジメよ?貴方が戦いなさい。」
「ああ?めんどくせぇな……。」
デイニーはホルテを睨む。
「………わかったよ。」
デイニーは魔王城の入口に近づき、腰掛ける。
「あら、デイニー様。どうしたのですか?」
奥からアリアが歩み寄ってくる。
「ええ、あの2人をワタクシ達が戦うとフェアじゃないからワタクシは休んでいるのよ。」
「あぁ、なるほど。確かにお2人では可愛そうですものね。」
「それより貴方、言葉遣いが丁寧になったのね?ワタクシに。」
「………スキルのせいでしょうね。」
「………あぁ、そうでしたね。」
アリアの眼には底知れぬ愛情が浮かんでいた。
「その感情はワタクシには理解できないわ。」




