35話
「私たち英雄は全員罪人です。」
アリアは半分崩壊している魔王城を見ながら語る。
「私は『種族戦争』に間に合いませんでした。それどころか個人的な感情で罪を被った。」
「何を言ってやがる。……お前『種族戦争』ではもう英雄だっただろう?」
「いいえ。私はあの頃『至って普通』の人間でした。バケモノだったのは私と教皇フィーデ様以外。」
アリアはヴィノを真っ直ぐに見ると剣を構える。
「おしゃべりは終わりましょう。」
それだけ言うとアリアの姿が掻き消える。
ヴィノは直感的に首筋が危ないと判断し、その場から動くとアリアの剣がギリギリ空を切る。
今までは馬鹿正直にまっ正面から来てくれたから対処出来ていたが横からの攻撃が追加されるとヴィノに勝ち目はない。
ヴィノは目を閉じ、音を探りながら次の攻撃を感じ取る。
「ここだっ!」
大斧を振ったところにアリアの剣がちょうどぶつかる。
しかしアリアの剣は大斧を切り裂くが如く押し込まれた。
「くそっ!」
一旦大斧を引き戻すがアリアの蹴りが腹に直撃し、壁にめり込んだ。
「先程のクイズの前言撤回です。私は罪人ですからどうでも良い約束など破ります。」
アリアは有無を言わさずにヴィノとの距離を詰めると剣をわざと大斧でガードしやすい場所へ叩き込む。
するとヴィノは予想通り大斧でガードをしたので今度は剣をちゃんと引いた。
「…………俺の負けかな。」
「そう言わずに、戦いなさい。」
ヴィノの大斧は使い物にならないぐらい刃を斬られ、残っているのは自身の腕と足だけ。
それでもアリアは戦えと言った。
「その程度でしたか……本気にした私が間違っていました。」
アリアはヴィノに近寄り、息の根を止めるべく剣を振りかぶる。
「では良い戦いでした。」
アリアの剣が当たる瞬間ヴィノは咄嗟に腕で首筋を守る。
「………ほう。」
ヴィノの顔は涙に濡れていたがその目には闘志が残っている。
「英雄に……そこまで言わせたら俺は本望だな。」
左腕は切り裂かれ、足は言う事を聞かない。
それでも立ち上がったヴィノに賞賛の拍手をアリアは送る。
「その心意気……買いましょうか。」
アリアは剣を投げ捨て、拳を構えた。
ヴィノも右腕だけを構えると捨て身の覚悟でアリアへ突撃する。
絶対に勝てないと解っていても突撃するヴィノにアリアは少し微笑むとヴィノの死ぬ気ではなった拳を顔面で受け止める。
骨が軋み、意識が飛びそうになるがどうにか踏みとどまる。
アリアがヴィノの頭に蹴りを入れようとした瞬間ヴィノは笑っていた。
壁にたたきつけられ、原型を留めていないヴィノに近寄ると花を供える。
上で破壊音がする。
だれが戦っているのかアリアにはわからないが、それよりも国に残してきたセンスが少し心配であった。




