29話
皇宮を2人が去った後ルビアは椅子に座りながら考えていた。
確かに商業ギルド長であるデイニーが疑わしいというのは考えつく。
だが、デイニーでは無いと言うのも確信を持って言える。
「ふむ……。」
しかし、何者かが革命軍のバックに着いていることは確かでもあった。
『種族戦争』では7人の英雄と1人の存在が戦い、人間は勝利を手にした。
その軌跡は血にまみれており、莫大な犠牲を払っての勝利だった。
その中にはもちろん人間側の犠牲もあったが、魔族の犠牲もある。
しかし、ルビアはその当時のことが少し霧に隠れていて……少しだけだが記憶に穴がある様な気もしている。
それに気がついているのはルビアと……例外的な存在であるセンスのみ。
ルビアがセリ一家に託したリアという少年。
あの少年の事はルビアは何も知らない。
知っているのは冒険者ギルドのホルテと学園長センスのみ。
しかし2人は何も話そうともしなかった。
だが尊敬する2人の事だ……何か言えない理由でもあるのだろうと大雑把に考えていたツケが回ってきたらしい。
ルビアは立ち上がると豪華の服から質素な服へと着替える。
そしてルビアは冒険者ギルドへと足を運んだ。
「珍しいな。お前が来るとは。」
「互いに忙しい中だからな。ホルテ、お前も余も。」
「はははっ!一丁前に皇帝らしくなったな。」
「世辞は良い。こうあっても余よりもお前の方が余の中では地位が高い。」
「そうかい。」
2人に少し沈黙が訪れるが、ルビアが話を切り出す。
「今になってだが……『種族戦争』の事を聞きに来た。」
「ほう?」
「余の記憶は曖昧だ。だがそれを自覚していない者が多い。お前は……どうなのだ?」
「俺は……確かに欠落があるな。センスは知ってそうだが……アイツが話すとも思えん。」
「その通りだ。まずは記憶の欠落を互いに補おうか。」
ホルテは頷く。
「俺たちは7人……いや、厳密には8人いた。」
「ああ、しかしその8人目が思い出せん。顔も……性別も体格も。」
「それは俺も同じだ。」
「………今思えばその8人目が居ないことが重要なキーとなっている気がするのだ。」
「俺は……確かにその通りだ。綺麗さっぱりとな。だが8人目がいた事実は知っている。」
「確認するが……魔王との戦闘時には7人だった。間違いないな?」
「ああ。センスを抜いて7人だ。」
「ならば……魔王を倒した時、覚えているか?」
ホルテは目を閉じて思い出す。
戦闘後に両足で立っていたものは少なかった。
ルビアに関しては頭部を強打して意識が無かった気もする。
「ルビア……お前は覚えてないだろうが、俺は確かに意識はあった。」
「…………その最後はどうだった?」
「白い光が辺りを照らし、何も見えなくなった時魔王はいなくなっていた……気がする。」
「ふむ。なるほど。詳細には覚えていない……と。」
「ああ。」
ルビアは外へと目を向ける。
「お前の紹介で余がセリ一家に託したあの少年。リアは……どうして余に託した?」
「…………あの少年は最初路地にいたんだ。それを拾った。拾わなければならないと本能が叫んだ。」
「直感か……お前の直感はほぼ当たっている事が多い。ならば何か意味があったのだろう。」
「……多分な。」
「今日リアが皇宮に来た。センスも心を許している素振りに見えた。ならば……。」
「その少年が8人目……と言いたいのか?」
ルビアは大きく頷く。
「しかし少年に戦闘能力は無い……。スキルはあるはずだが使用しているところを見たこともない。」
「それに関してだが……思い出した事がある。」
「なんだ?」
「『種族戦争』を終結に持っていったあの光。学園祭で俺が戦った相手……コルだったか?アイツのスキルに似ていた。」
「…………。」
2人は考えが纏まらないまま項垂れていた。




