1話
「この子を引き取って欲しい。命令だ。」
「……分かりました。」
僕は……解らない。
自分が解らない。
その少年はカラッポだった。
解るのは隣にいるおじいちゃんが真剣な顔をしていることだけ。
おじいちゃんは僕を少し見る。
「では……頼む。」
「仰せのままに。」
隣にいるおじいちゃんが変わった。
その目は青色で……?
なにか考えたけどわからなくなった。
「ここが住む家だよ。」
気がついたら目の前に家と言うものがあった。
「少し汚いけど我慢しとくれ。私は裕福じゃないからね。」
「その子が依頼の子かしら?」
「ああ。どうやら記憶喪失らしい。エーテル。お前が色々教えてやってくれ。」
「わかったわ。ノティス。私の愛する人。」
色々と教わった。
今いる所は「家」と言うらしい。
これは「机」、これは「食器」。
でも分からない事がまだあった。
時々エーテルが見せる表情。
あれは……何だろう?
「それは『愛情』と言うのよ。リア。上手く説明が出来ないけど……。とても大事なもの。」
「……うん。わかった。大事なものなんだね。」
僕は頷くとあの表情を「愛情」と名付けた。
また色々分かってきた。
この家はセリ家と言うらしい。
苗字とか名前とかがあると言う話だ。
だから僕は「セリ=リア」。
お父さんは「セリ=ノティス」で、お母さんは「セリ=エーテル」。
みんな大事な人。
どうやらお仕事があるって最近お父さんは出かけてる。
何のお仕事かは分からないけど頑張って欲しい。
お父さんのお仕事が少し落ち着いたらしい。
家に居ることが増えた気がする。
僕はそれが嬉しい。
「リア?少しお散歩に行こうか。」
「うん。」
エーテルは僕と手を繋ぎ、街を歩く。
色々な人が色々な活動を行っている。
「あっ……。」
僕は小さな断罪に躓き、転ぶ。
「大丈夫?気をつけなさいよ?《回復》。」
エーテルは手をかざすと手のひらから暖かい光が漏れだし、膝の擦り傷が治っていく。
「ありがとう。お母さん。」
「ううん、いいのよ。さ、行きましょう。」
今度は手をちゃんと握って転ばないようにしないと。
スキルと言うものがあるらしい。
お母さんが使っていた《回復》もその1つだと聞いた。
でも神様は意地悪だ。
人に2つしかスキルを与えないなんて。
お父さんは《高潔》という一族が引き継ぐスキルを持っているらしい。
だから皇帝様にあんなに気に入られてたのかな?
お母さんの髪は桃色で暖かい。
でもあんなに優しい人が教会の人に成れないなんて意味あるのかな?教会。
僕は純粋に疑問に思った。
「この物語は読んだか?」
「うん、読んだよ。面白かった!」
ノティスが持っているのは7人の英雄の物語。
実際にその7人はいて、今も生きてる。
皇帝様、教皇様、警備隊隊長、軍隊長、冒険者ギルド長、学園長、商業ギルド長の7人。
どうやらお父さんの憧れらしい。
「私も皇帝様の様に輝かしい存在になりたいな。勿論エーテルにとって、リアにとっても。」
そうお父さんはお母さんがよく見せる「愛情」という表情で言った。




